
Technique 1
◆小さな依頼を承諾してもらうと、次も承諾されやすい
初歩的なセールステクニック「foot in the door」をご存じでしょうか。これは「最初から大きな依頼をするよりも、小さな依頼の承諾を得れば、次は最初よりも大きな依頼であっても承諾されやすい」という心理をうまく使ったものです。
「foot in the door」は文字通り、「足先」をドアに入れること。訪問した際、少しでもドアを開けてくれたなら、サッとその隙間に足先を入れる。いわゆる足掛かりを得たということです。
お店の店頭に割引商品や特価商品など、安価な小物が並べられているのもこれです。安い商品で惹き付けて、店内の奥の高額商品のコーナーまで誘導することになります。
逆に言えば、予め小さな承諾を得られそうな商品やサービスを用意し、段階的に提案していく。つまり、小→中→大と勧めていくテクニックです。
Technique 2
◆簡単な要求を承諾すると、次の要求は断りにくくなる
前述のテクニックと似ている「low‒ball technique」という承諾を得やすくする説得法も紹介しましょう。これは、最初に相手が受け入れやすい条件で承諾を得れば、その後はネガティブな条件でも受け入れやすいというもの。社会心理学者のロバート・B・チャルディーニの有名な実験で、「朝7時から心理学の実験に協力してください」と大学生に伝えると、承諾したのは31%でした。次に「心理学の実験に協力してください」と伝えて承諾してもらった後、「実験は朝7時からスタートします」とお願いしても、早朝なのに56%の学生が承諾したのです。
例えばこれをPOP広告に生かすなら、
A「デジタルカメラ50%オフ! ただし、展示品につ きキズあり」
B「キズありデジタルカメラ50%オフ!」
であれば、Aのほうが注目されるでしょう。
人の心理を考慮すると最初に投げるのは好条件なロー・ボールのほうが効果的なのです。
Technique 3
◆選択肢を3つにすると人は真ん中を選ぶ
次は簡単な客単価アップ法です。例えばランチメニュー。
A…日替わり 680円
B…日替わり+コーヒー+デザート 1000円
とあれば、比較が簡単なのでAを「安い」と感じて選ぶ人が多いでしょう。お店としてはBを選んでほしい。そんな場合は、もう一つ選択肢を増やせばいいのです。
A…日替わり 680円
B…日替わり+コーヒー+デザート 1000円
C…日替わり+サラダ+コーヒー+デザート
1300円
こうすれば、Bの1000円が相対的に安く感じ、三者択一にすると真ん中が選ばれがちになるのでBをオーダーする人も出てくるでしょう。
また、人は基準価格より2割以上の高低があると「高い」「安い」と感じるものです。そこでBの1000円で売りたいなら、Aを850円ぐらいにして、割安なことによるお得感を感じさせない価格にするというテクニックもあります。
Technique 4
◆買うと決めた瞬間こそ、財布のヒモが緩むとき
次も客単価アップ法の一つです。特急電車に乗ったときです。私はコーヒーが飲みたくなり、ワゴン販売の女性に声をかけると、「ありがとうございます。ホットコーヒーですね」とその女性は笑顔で答え、「お得な大きいサイズと普通のサイズがございますが、どちらがよろしいですか?」と目の前に2つのカップを出してきました。
私は「お得な」というトークに惹かれて「大きいサイズ」を注文しました。このように、求めていたものより上位のものを勧めるテクニックを「up‒sell」といい、客単価を上げる方法の一つです。
そして、支払いをしようとしたとき、「ご一緒に出来立てのおいしいパウンドケーキはいかがですか?」と絶妙のタイミングで勧めるのです。私はそのパウンドケーキも買いました。
人は買い物を決めるまでは、財布のヒモは固いものですが、買うと決めた瞬間こそ、財布のヒモが緩むのです。つまり、客単価を上げる最も効果的なタイミングは、購入するまさにその瞬間だといえます。
私がコーヒーを買ったその瞬間にパウンドケーキを勧めましたが、関連するものを組み合わせて勧めることを「cross‒sell」といいます。次に提案する商品やサービスを準備しておきましょう。
Technique 5
◆相手に望むことを告げると、そのことを意識した行動をとる
「君って、細かいことを気にしすぎだね」と言われると、その人は自分のことを神経質な人間だと感じるようになります。これを心理学では「labeling(ラベリング)」といい、ラベルを貼られると人は、そのラベルのとおりに行動をとるようになります。
これをビジネスの現場でも生かせばいいのです。例えば「御社のような人材育成に真剣な会社は初めてです」と。すると相手はそれらしく振る舞いをしなくてはいけないかも、と思います。そこへ、社員教育をサポートするような商品やサービスの提案を行うと交渉もスムーズに運ぶというわけです。
「お客様はお目が高い!」と定員に言われて、その商品を選んだ自分に自信をもつようになるのもラベリングです。相手に気持ちよく動いてもらう心理テクニックといえます。

Technique 6
◆魔法の言葉1「あなただけは特別です」
ある男性が3人の女性にデートを申し込むという心理学の実験があります。
A子さん「OK、いいわよ」
B子さん「予定があるの。でも、あなたとのデートなら何とかするわ」
C子さん「予定があるからダメです」
被験者が最も好感を抱いたのはB子さんです。最初は断られて男性はデートしたい欲求を抑えなくてはなりません。ところが次の瞬間に「OK」が出たことで溜まった欲求が一挙に放出。この瞬間に人は快感を覚えるのです。
この心理をビジネスに生かすと、
客「今週中に納品できないだろうか?」
私「それは厳しいですね。でも、山下さんの頼みとなれば、なんとかしましょう」
客「もう少し安くならない?」
私「これ以上、下げるのはしんどいですね。でも、吉田さんのお願いだから頑張ってみます」
このように、お客様からリクエストがあってもすぐに「はい」と言わずに一旦断ってから、一呼吸間を取りましょう。そして「あなただけは特別です」と承諾するのです。お客様はあなたに感謝の念さえ抱くかもしれません。
Technique 7
◆魔法の言葉2「あなたの自由です」
街なかで見知らぬ人への実験で「バスに乗る小銭を貸してくれませんか?」と言われたら、約10%の人が小銭を貸してくれたそうです。これにある言葉を加えたら、小銭を貸してくれた人の割合が47%に増えました。
「……貸してくれませんか? もちろん、あなたの自由です」
この「あなたの自由です」と付け足すだけで貸してくれた人は増え、しかも、金額自体も増えるという不思議なことが起こりました。
人は強制されたことには抵抗しようとしますが、自分で決めた事柄には積極的に関与しようとします。「あなたの自由です」=「自分で決めた事」なのです。これを営業トークに入れて「どちらがいいか、ご自由にお選びください」と。相手に自分の選択に積極的に関与してほしいという場面で試してみてください。
Technique 8
◆権威者の言葉を使うと、商品やサービスの説得力が増す
次の文章を読んでみてください。
決してうつむいてはいけない。
頭はいつも上げていなさい。
目でしっかりとまっすぐ世界を見るのです。
なかなかいい文章です。では、もう一度。
決してうつむいてはいけない。
頭はいつも上げていなさい。
目でしっかりとまっすぐ世界を見るのです。
ヘレン・ケラー
全く同じ文章なのに「ヘレン・ケラー」という文字が入っただけで印象は大きく変わってきます。人や事物の権威の後ろ盾を借りることを「権威効果」といいます。
提案する商品やサービスに、誰もが知る著名な人や組織の推薦、使用実績等を付加できれば、説得力は増します。他に、受賞歴、資格等がないかも考えて、POPやカタログ等の広報物に記載すればより効果的です。
Technique 9
◆人はナンバーワンや第1位に、惹かれる
Technique7と通ずる「限定条件下の事実」も紹介しておきましょう。
私は名刺に「出版書籍はアマゾン書店のマーケティング部門第1位を獲得」と書いています。それを見た人に「第1位ですか! 凄いですね」とよく言われます。第1位という言葉のもつインパクトは大きいものです。
これは、ある限られた条件のもとにおいてのみ当てはまる事実「限定条件下の事実」という考え方を応用した例です。
実はアマゾン第1位は私の1冊目のことなのですが、総合ランキングではなく、「マーケティングカテゴリー」という小分類での第1位。つまり「限定条件下の事実」になるわけです。
誇大広告や誇張はいけませんが、条件を限定すれば、あなたの会社やお店にも第1位はあるはず。日本一、県下一でなくても、創業年数、社員数、品揃え、平均年齢、入賞数等、条件や地域、期間を限定すれば必ず1位が見つかると思います。それを名刺や提案書類、webサイトに載せるのです。
Technique 10
◆BGMで購入額が変わる
昔、私が開催していたパソコン教室で、BGMを流すと受講生たちは大きな声で話し、BGMを止めると声が小さくなることに気付きました。そこで、講演では持参したiPodで会場に小さな音でBGMを流すようにすると、会場内の雰囲気が和むようになりました。
米国ロヨラ大学のロナルド・ミリマン教授の実験です。スーパーマーケットでアップテンポとスローテンポのBGMで来店客の購買行動がどのように変わるかを調べました。
するとアップテンポなら滞留時間は短くなり、購入額も低いものでした。一方、スローテンポだと滞留時間は長くなり、ゆっくり買い物をし、購入額も増えたのです。
これを応用して、飲食店ならランチタイムではアップテンポなBGMを流して回転率を上げ、ディナータイムではスローテンポなBGMを流してゆっくりと食事を楽しんでもらい、滞在時間を増やして売り上げ増を狙ってみるのです。
このように、自分の店にはどんなBGMがマッチするのかをいろいろ試してみて、来店客の行動変化を観察してみるのもいいでしょう。
参考:酒井とし夫著『心理マーケティング100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)
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【2018年6月号】事例で見る 成長企業への展望

超高齢化に対応する提案力
◆元気な企業は、こんなことをしている!
2018年は後期高齢者人口が前期高齢者を上回り始める年になる。戦後のベビーブーム世代が、2020年のオリンピック以降続々と後期高齢者の仲間入りをしてゆく。
日本人の平均寿命は80代だからまだ多くの人は生きてはいるが、これまでの経験則から見ると、後期高齢者になると旅行や外出が次第に減りがちとなる。
後期高齢者のおよそ10人に1人は老人施設などへの入所が必要になってくる。
いよいよ本格的な高齢社会だ。
今回はそれに対応する企業の取り組みを紹介する。
日本人に合う新しいコンセプトで“おかゆ”市場の創出となるか
おかゆと聞いてどんな連想をするだろうか?
お腹をこわして何も食べられないときに、母親に作ってもらったおかゆをようやく口にしたときの美味しさと、早く普通のご飯が食べたいという気持ちが重なる……。
「病中病後、あるいはこってりした中華コースを食べた翌朝の軽めの食事など、おかゆは体に優しいと感じている方が多いと思います。栄養バランスも考え、元気なときにでもおいしく簡単に食べていただけるようなおかゆを考えました」
こう語るのは豊味館の松尾あゆみ社長だ。
豊味館が「もち米おかゆセット」を発売して3年、静かだが少しずつ売り上げを伸ばしている。
「豚なんこつ、彩り野菜とベーコン、若鶏と栗の3種類あります。これまでのおかゆの概念を覆す『具だくさんのレトルトパック入り』のおかゆです。栄養価も高く、また歯の弱いお年寄りでも食べられると、まとめ買いで常備するお客様が増えています」(松尾さん)
豊味館は長崎県佐世保市にある。
グループ会社の丸協食産はホルモンなどの精肉メーカーだ。豊味館はスーパーなどを販路に日常必要な肉を販売する丸協食産とは一線を画し、土産や贈答など付加価値の高い商品提案をしようと10年ほど前に設立した。
「人の拳くらいの大きな牛テール肉の入ったレトルトカレーや黒豚ロールステーキなどこれまでヒット商品を出してきました。あるとき韓国料理サムゲタンの開発依頼があり商品化しましたが、あまり国内市場は広がりませんでした。その後教訓を生かし、お肉に主体を置き、薬膳の具材や野菜を加え『ライトな主食感覚のおかゆ』という、日本人に合った新しいコンセプトにたどり着きました」(松尾さん)
常温で保存ができ、ダイエットにも、お年寄りの日常食にも適した商品として提案したところ、通販や病院、調剤薬局の店頭などから注文が来るようになった。
「おかゆはもともとは家庭内で体の弱った家族のためにつくるものです。食の外注化の中で、家庭料理になりかわってご提供する新しい“おかゆ”市場を作りたいと思います」(松尾さん)
核家族化、高齢社会に新たな販路を拓けるか、松尾さんは手応えを感じている。

高齢者の癒し的存在のペット中でも活性化する“インコ”市場
続いてはペットショップの事例だ。
ペットを飼う家が増えてきたことは事実だが、ここにきて購入するペットにも変化が出ているようだ。
「実はここ数年ヒット商品が出ています。それは小鳥なんですよ」
こう話すのは、首都圏を中心にペットの総合専門店を展開する「ペットエコ」の米山由幸取締役だ。
「当社の売り上げを見てもここ数年小鳥の販売が伸びています。イヌよりもネコ、ネコよりも小鳥のほうが世話が楽だし、マンションなどでの飼育も許容されるということも背景にあります。動画サイトなどで可愛らしいしぐさを見て買いに来る若者、高齢の親にプレゼントしたいという娘さんなど客層も幅広いのが特徴です」(米山さん)
小鳥の中でも特に人気が出ているのがインコ類だという。
大型のインコだと30万円以上するが、知能もすぐれ言葉も覚えるなど人気があるという。インコはキビやヒエなど餌のにおいがすると言われるがそうした雑穀とバニラ味をブレンドした『インコアイス』が百貨店のイベント等で売り出されたり、インコをデザインした雑貨や文具なども若い女性に人気が出るなど“インコ”市場が活性化している。
実は生体の販売価格にも特徴がある。
「イヌやネコは生後51日以上で販売を開始しますが、月齢が経つと価格は下がる傾向にあります。ところが小鳥の場合仕入れてからある程度時間が経つと慣れてきて、手乗りなどができるようになります。当社では販売価格を上げていきますが、慣れた小鳥ほど人気がでます」(米山さん)
近年ペット業界は高齢者世帯の増加に伴い、右肩上がりの市場で推移してきた。
子育てが終わり生活に余裕のある人が増えたことは追い風だった。しかし更に高齢化が進むと、散歩の必要なイヌが敬遠されたり、飼い主が先に他界した後ペットがかわいそうだと、新たなペットを飼うことを敬遠したりという傾向も出始めている。
「その点、小鳥は気軽に飼えることと、話しかけることで認知症予防に効果があるなど今後のペット市場で大きな役割を果たすと思います。保険の整備、また飼い主不在時に利用できる鳥ホテルの展開とともに、当社独自の品質の良い小鳥の生体の新たな取り扱い先ルートの開拓を進めています」
米山さんはこう語り、小鳥市場が大きく羽ばたくことに期待を示した。

日本ではまだ利用者が少ない難聴用の“補聴器”市場を開拓
高齢化が進むと、市場拡大が期待されるものに補聴器がある。
平均寿命が延びたことは嬉しい限りだが、人生の後半に目や耳の能力が衰えてしまうことはどうしても避けられない。老眼鏡や補聴器のお世話になる人の数は増える傾向にある。
「当社では92年に軽度の難聴用の補聴器市場に参入し、これまで合わせて130万個を販売してきました。今後この市場はさらに伸びると思います」
こう語るのはオムロンヘルスケア国内事業部の高桑暢浩さんだ。
国内の補聴器の出荷個数は2015年度56万個で5年前と比べて20%程度増えているが、実は日本では難聴と自己申告している人のおよそ14%しか補聴器を使用していないという。これはイギリスの41%、ドイツの34%、アメリカの24%などと比べてかなり低い普及率にとどまっている。
これには私にも思い当たる節がある。
私の祖母も母も老境に入り会話が聞き取りにくく、補聴器をプレゼントするから装着してほしいと再三薦めたが「いやだよ、年寄りくさくみえるから」となかなか応じようとしなかった。
「たしかにシニアグラス(老眼鏡)ほどは普及していないのはそういう認識が障害になっているのかもしれません。PCや会議資料を見るために、ピンポイントでシニアグラスをかけるという方が多いように、会議や商談などで大事な要点を聞き漏らさないように補聴器を使うといったシーン提案をすることでイメージを変えていかなければなりません」(高桑さん)
オムロンヘルスケアでは、最近イヤメイトシリーズ3機種のうち2種をリニューアルした。耳穴に装着するタイプは本体の重さがおよそ1.8gと超小型で見た目も目立たない。
「軽度難聴用の補聴器は、これまであまり知られていませんでしたが、通販市場で販売したところ売り上げを伸ばしつつあります。今後はこれまで中度・重度の補聴器を主に販売してきたメガネ店やテレビ通販などでの販売にも力を入れ、補聴器をもっと気軽に使っていただけるように紹介していきたいと思います」
高桑さんはこう語る。
難聴は認知症につながる危険性も指摘されているだけに、今後軽度の“補聴器”市場はさらに拡大しそうだ。
人口減少に加え急速な高齢社会の進展で東京オリンピック以降の日本経済は、長いトンネルに入ることが予想される。
昭和39年のオリンピック以後も40年不況があり、政府は戦後初めて国債を発行するなどして景気対策に努めた。
比較的短期間で不況を脱することができたのは当時社会人になり、結婚適齢期に入りつつあった戦後のベビーブーム世代が3Cと呼ばれた「カー、クーラー、カラーテレビ」の購買層になり景気拡大をけん引したことが大きな要因だった。
その時の経済のエンジン役だったこの世代が今度のオリンピック以降は後期高齢者入りして消費のけん引役どころかブレーキになりかねない心配がある。
企業に求められるのは自社に合った高齢時代向けの提案力だ。
今回紹介した三社は、その共通の事例と言えそうだ。

【2018年5月号】仕事でいっぱいいっぱいな状況から抜け出す方法 Part2[解決編]

仕事の取り組み方を見直す
◆仕事にヒトをつける
社内にその人にしかできない業務がたくさん存在すると、個人も組織も仕事でいっぱいいっぱいな状況に陥ります。これを防止するために、「仕事にヒトをつける」という発想で、一つの仕事を複数の人間でこなすことができる状況を作るのです。
しかし、「うちのような少人数の会社では無理な話だ」という意見も多いでしょう。「仕事にヒトをつける」というのは、今いる人数にどのように業務を割り振りするかという視点だけで物事を考えるのではなく、業務の全体を今いる人数でこなしていくために、どのような仕組みがベストなのか、という視点で考えることでもあるのです。
◆仕事の整理整頓を行う
現在の業務が、今後の会社にとって必要なもの、最適なものであるとは限りません。環境が変化すれば、今後の会社にとって必要な業務、最適な業務も変化します。
ですから、現在組織内に存在する業務を体系的に洗い出したうえで仕事を整理整頓する必要があります。
・この業務は今後も必要な業務なのか?
・必要な業務だとしても捨てられる部分はないのか?
・捨てられない部分がない場合であっても、やり方を変えることで時間や労力を減らすことはできないのか?
という視点で内容を精査し、無駄な業務(不要となった業務)をカット。そうして役割分担の見直しを行えば、業務の絶対量を減らすことができ、仕事にヒトをつける状況を生み出すこともできるでしょう。

会議の無駄をなくすための6つの方法
会議は重要な業務ですが、現実は「いつも予定時間を超えてしまう」「何も決まらない」「決めても何も変化しない」が多く見られます。そのことにより、会議の存在が負担になり、仕事がいっぱいいっぱいになる原因を生み出しているのです。
そうなる会議の主な原因は、
・会議開始後に参加者が資料を読みふける
・会議中に話が脱線する
・会議中に議論が堂々巡りしてしまう
・会議中に沈黙する人が多く会議の雰囲気がだれてしまう
・決まったことが参加者たちに理解されていないまま会議が終了する
これらは「無駄な会議」を生む原因であり、どうすれば有意義な会議になるのか、その方法を見ていきましょう。
①司会役に徹する存在を設ける
進行役、いわゆるファシリテーターを設けます。役割は、会議開始後に参加者たちが資料を読みふける状況が生じた場合は議論に入ることを促します。議論の途中で話が脱線したのなら話の中身を本質的な部分に引き戻し、議論が堂々巡りすればそのことを指摘。会議中沈黙をしている人に対して発言を促し、会議終了後に参加者たちが決定事項を理解していることを確認する、といったことです。
②会議資料は事前に配布しておく
会議開始後に参加者たちが資料を読みふけることを防ぐため、会議の資料は事前に全参加者に配布し、内容を理解したうえで会議に参加することを徹底させます。
③議論の論点やポイントをホワイトボードなどに書き記す
会議の話が脱線することを防ぐために、議論の過程で明らかになった論点やポイントをホワイトボードなどに記録して”見える化”することが大切です。そうすることで参加者が、何についての結論が得られ、次に何についての結論を得なければならないのかが理解でき、的の外れた発言をすることが減るはずです。
④最初に参加者全員で、会議のゴールを確認し合う
会議中に議論が堂々巡りしてしまうことを防ぐために、会議を開始するときに参加者全員で今回の会議のゴール(=何について結論を出すのか)を確認し合いましょう。「新規顧客獲得についての会議」といったテーマだけの確認だと、発言が個人の主観に偏り、話が飛びまくります。ですから「新規顧客獲得について見込み客のリストアップに関する結論を得るための会議」というようにゴールを明確にすることが必要です。
⑤会議の時間は極力短く設定し、時間厳守を徹底すること
会議中に沈黙する人が多く会議の雰囲気がだれてしまうことを防ぐために、会議の時間を極力短く設定し時間厳守を徹底させましょう。会議の時間が長く設定されていると「そのうち発言すればいいか」という意識が生じ、口を開かなくなります。会議の時間が短く時間厳守が徹底されていれば、そのうちなどと考えることができなくなり、自ら発言しようとする人が増えるものです。
⑥議事録は、会議終了後すぐに配付する
決まったことが参加者たちに理解されていないまま会議が終了することを防ぐために、議事録を会議終了後すぐに参加者全員に配付しましょう。会議終了後は日常の業務に戻ることで、参加者の会議の決定事項に対する意識が薄れていきますから、議事録を簡潔にまとめたうえで、会議終了後直ちに配付することが重要です。

個人の意識を変える5つの方法
仕事の取り組み方の最適化を実現させるためには、組織上の仕組みを見直すことに加えて、個人の意識改革も必要です。
前回も述べましたが、仕事でいっぱいいっぱいな状況を生み出してしまう主な個人的な要因としては、
・仕事の進め方に計画性がない
・ダラダラと仕事をしてしまっている
・完璧を求めすぎている
ことが考えられます。そこで、個人の意識を変えさせるための方法を紹介しましょう。
①仕事の締切りを細かく設定することを習慣づける
部下に仕事を指示するときに、仕事全体の締切り期日は伝えますが、仕事を進める過程については何も指示をしないケースが多いようです。これでは仕事の効率を悪くし、仕事がいっぱいいっぱいになりかねません。「全体の終了が8月末まで。第一段階の顧客リスト化の終了は5月末までに、第二段階の顧客ごとの販売計画の提出は7月第一週末までに・・・」というように、仕事を進める過程ごとの締切りについても明確にすることを習慣づけましょう。そうすることで、仕事に計画性を持たなければならないという意識が芽生え、ダラダラと仕事を進める、完璧を求めすぎるといった行動も是正されていくはずです。
②仕事の優先順位を明確にすることを習慣づける
誰もが、いくつもの業務を抱えた状態で新しい仕事が割り込んできます。新しく入ってきた仕事に振り回され、中途半端な状態のままでやり残した仕事が山積みになり、いっぱいいっぱいになるわけです。
そこで、優先順位の高い仕事から処理することを習慣づければ、バタバタ感から解放されるはずです。優先順位を考えるうえで大事なキーワードは「タイミング」。「締切り」も大切ですが、特にタイミングは、「この仕事を早く片付けておけば、クライアントからの信頼を得られる」「この仕事を早く片付けておけば、周囲の人たちも助かる」というような”レスポンスを速めるべきことの理由”で優先順位を考えてみましょう。
③一日の仕事を終える時間を意識することを習慣づける
何時までに仕事を終わらせなければ(退社しなければ)ならないという縛りがないまま仕事をしていると、必然的にダラダラした働き方になってしまいます。
たとえば退社時間の縛りがあれば、決められた時間の中で終わらせなければならないため、仕事の締切りや優先順位を考えようとする意識も生まれてくるはず。退社時間を意識させる方法として、ノー残業デーを設けたり、各人の机やパソコンに今日の退社予定時間を書いた紙を張り付けたりするのも効果的です。
④長時間労働になっていることが後ろめたくなるような空気を作る
「夜遅くまで残っている人=頑張っている人、仕事ができる人」的な感覚に支配されている会社はいまだ多いことでしょう。それが、会社全体でのダラダラを生み出し、仕事でいっぱいいっぱいになることへとつながっていくのです。
そこで、毎晩のように遅くまで会社に残っていることが恥ずかしくなるような雰囲気を作れば、ダラダラ感も払拭されるはずです。それには経営者や管理職者自らが掲げた終業予定時刻に仕事を終え、堂々と退社する姿を見本として示すことが最も効果的だといえます。
⑤短い時間で結果を出した従業員を高く評価する
短い時間で結果を出した従業員が最も会社に貢献しているにもかかわらず、必ずしも高く評価されているわけではありません。
効率よく仕事を進めてきちんと結果を出している従業員を高く評価することで、組織全体で生産性の向上を追求していこうという雰囲気が生まれてきます。
さらに昇給や賞与などの評価基準の中に仕事の生産性の良し悪しを評価する項目を設けてもいいでしょう。インプット(=労働時間)とアウトプット(=仕事の成果)を数値化したうえで、生産性=アウトプット÷インプットで生産性の値を算出し、会社が予め設定した良し悪しの基準となる値を比較して評価するわけです。ぜひ試してみてください。
【2018年4月号】仕事でいっぱいいっぱいな 状況から抜け出す方法

仕事でいっぱいいっぱいがジリ貧経営を招く
私は経営コンサルタントの仕事に就いて25年になりますが、「仕事でいっぱいいっぱいで、改善、改革が進まない」という状況をたくさん見てきました。
私 「この間の打ち合わせで決まった○○に関する計画の取り組みは、進んでいますか?」
社長 「すみません。実は、まったく進んでいないのですよ」
私 「どうしてですか?」
社長 「忙しくて、時間が取れなかったもので……」
この会話を、私を社長に、社長を管理職者に置き換えてもいいでしょう。このように皆でやろうと決めたことが遅々として進まない現象が当たり前のように起きています。これが、企業の業績が振るわないことの根本的な要因の一つといえます。
一番重要なことは環境変化に対応すること
企業を取り巻く環境は常に変化をしています。日々の「経営活動」を、海を航海する船に例えると、次のようになるでしょう。
「世の中という大海原で、常に押し寄せてくる環境変化という波を上手にかわしながら、会社という船を前に進め、船の強度(=経営の安定性)を増しつつ、船の大きさ(=事業規模)を大きくしていく」
重要なのは「環境変化への対応」です。押し寄せてきた波(=環境変化)を上手にかわすことで、船(=会社)は順調に前に進んでいき、その先に新たに成長する仕組みが生まれてくるのです。
実行を伴わなければ業績は改善しない
環境変化への対応を図りながら業績を改善していくためには、実行し続けることが大切です。
つまり、「実行を重ねる」ことで、さまざまな結果が生まれ、それをヒントにして何がベストな選択なのかということを見極めることができるからです。
計画を立てる段階では見えない要素がたくさんあります。実行することが見えないものを“見える化”させることにつながり、それによって得た結果を検証していくのです。
そこで役立つのが皆さんもご存じの「PDCA」によるマネジメントです。
さまざまな経営活動の場面で活用できる「PDCA」。このプロセスを繰り返すことで、経営の安定性を
確保しつつ企業業績を高めていくという、経営の本質からブレない形での舵取りが行えるようになります。
ジリ貧経営の本質
ジリ貧経営にあえいでいる企業は、「PDCA」によるマネジメントのPlan〔計画〕とDo〔実行〕の間が分断されていることが多くあるようです。
業績を改善するためのPlan〔計画〕を考えたのにもかかわらず、Do〔実行〕を伴わないのは、考えただけの状況に甘んじてしまっていて、Planを考えることが目的になってしまっているのです。
実行を伴わないから当然結果は生まれてきません。ベストな選択を見極めるための材料が手に入らないのです。そのような状態で環境の変化が押し寄せてきて、経営は後退してしまう状況となるのです。
PlanとDoの間が分断されてしまう本質的な原因は、実行に係るべき人たちがスムーズに行動に移すことのできる環境にない。すなわち、溢れかえる仕事でいっぱいいっぱいになっていることにあるのです。

いっぱいいっぱいになってしまう原因
では、なぜ仕事でいっぱいいっぱいになってしまうのでしょうか。その原因には、組織的な問題と個人的な問題が考えられます。
組織的な問題
①ヒトに仕事をつけてしまっている
中小企業では、特定の人物だけが特定の業務全般を担当するという構図があります。つまり、その人にしかできない業務というものがたくさん存在してしまう状況です。そうなると、仕事の進行が他人の仕事の進み具合によって左右されてしまうことも起きます。
例えば、ある商品開発の仕事がA、B、Cの3つから成るとして、Aを大庭さんだけ、Bは奥村さんだけ、Cを小林さんだけが担当しているとしましょう。大庭さんも奥村さんもすでにAとBを終えているのに、Cの小林さんが遅れることで、その商品開発の仕事が終わらないわけです。
そのような結果が積み重なることで、皆が仕事でいっぱいいっぱいな状況を生み出してしまうというわけです。
ヒトに仕事をつけることは、従業員の働き方にも影響を及ぼします。自分以外に業務をこなせる人
がいないので、休みたくても休めなくなります。そのことが、従業員の士気低下やメンタル不全といった弊害を生み出していくことになるのです。
②一人一人が仕事を抱え込んでいる
中小企業には、一人一人が仕事を抱え込んでしまっている状況も多くみられます。臨機応変に仕事の見直しを行い、他人に仕事を振るといったことを行わない、または行えない人が多いのです。そのような中で新たな業務が生じることにより、仕事でいっぱいいっぱいになる状況が生まれてしまいます。
抱えている仕事量が個人のキャパシティを超えてしまうことが、長時間労働や残業コストの膨張、生産性の低下といった企業にとっての弊害を生み出すことをトップは認識しなければなりません。
③無駄な会議が多い
仕事でいっぱいいっぱいな状況に陥っている会社に共通する特徴として、無駄な会議が多いようです。
場当たり的な会議を行うことで、毎回のように予定時間を大幅に超えてしまうのです。加えて、「結局、何が決まったのかがわからない」、「会議をしたことによる変化が何も生まれてこない」、「だから再び会議をすることになる」、「それにより、会議に拘束される時間が増え続けてしまう」という悪循環が生じてしまい、仕事でいっぱいいっぱいになる状況づくりに拍車をかけているのです。
個人的な問題
①仕事の進め方に計画性がない
毎朝、仕事を始める前に今日一日の仕事のスケジュールを立てている人は、意外と少ないようです。出勤後、席について、思いついた仕事から手を付けたり、
朝一番に上司から指示された仕事から取り組んだりする人がほとんどではないでしょうか。そのような状況で新たな仕事が発生することにより、未処理の仕事が積み重なり、いつも仕事でいっぱいいっぱいに……。
計画なく仕事を進めると、中途半端な状態のままの仕事が増えていきます。中途半端な状態のまま放置した仕事を再開する場合、放置するまでの過程を頭の中で整理する時間が必要となるため、計画通りに始めから終わりまでを一気に仕上げたときと比べて、格段に時間がかかります。
また、誰もが計画性のないまま仕事を進めてしまうと、お互いに振り回されることになります。上司が思いついたように仕事を指示してくる。先輩がこちらの状況を考えずに仕事を振ってくる。すると効率も悪くなり、時間の無駄がたくさん生じてしまいます。
②ダラダラと仕事をしてしまっている
従業員の残業が減らない大きな理由の一つとして、ダラダラと仕事をしていることが挙げられるでしょう。
言い方を変えれば、残業することありきで仕事をしているのです。残業代は割増賃金なため、理屈の上では、従業員が残業をすればするほど会社は儲からなくなります。ダラダラ仕事は、従業員自身の首を絞めることにもつながります。
仕事のスピードが落ちることで、処理できない仕事が増えて、仕事でいっぱいいっぱいになる状況に追い込まれてしまうからです。
ダラダラ仕事に対して厳しい指摘を行っている会社は少ないようです。従業員や部下に対してクリエイティブな発想を求めている経営者や管理職者の姿をよく目にしますが、ダラダラ仕事をなくさない限
りは、クリエイティブな発想など生まれるわけがありません。
③完璧を求めすぎている
仕事でいっぱいいっぱいになっている人に共通する特徴として、一つ一つの仕事に対して完璧さを求めすぎていることも挙げられます。
例えば、資料を作るときにレイアウトにこだわって無駄な時間を費やしていたり、また、自分が納得できる状態でなければ後工程の人に仕事を回さなかったりとか。
会社にとって従業員が働く時間(=人件費)は最大のコストであり、個人の自己満足に影響されることは、あってはならないことです。それなのに、多くの会社が、できたかできなかったかの結果のみを評価し、出来上がるまでのプロセスや時間管理に関しての評価がおざなりになっています。
仕事の成果を従業員や部下がアピールしてきたときに、経営者や管理職者は、成果が生み出されたプロセスが適正であったのかどうかの判断も行う必要があります。
次回は、仕事でいっぱいいっぱいにならない対策を考えていきましょう。
【2018年3月号】部下との 信頼関係の 築き方
そのどちらもうまくいけば部下との確かな信頼関係を築くことができるだろう。
リーダー教育で数多くの実績を持つ経営コンサルタントの吉田幸弘氏に話を伺った。

褒め上手になるために
▲おだてるのではなく、事実を褒める
「褒めて育てる」ことは今や人材育成で大切なポイントのように言われています。しかし、「がんばっているね」「いいね」と言っても相手に届かない場合もあります。というのは事実に基づいた褒め言葉ではないからです。根拠がない褒め言葉は「おだてている」と受け取れます。
「今月は、前月と比べて新規契約が5件も増えたね。がんばったじゃない」
「昨日の報告書、顧客ニーズの変化がグラフ化されて、とても分かりやすかった。ああいうのがほしかったんだよ」
具体的な事実で褒められれば、部下もきっと素直に喜ぶでしょう。
▲部下の視点まで降りて、成長を褒める
リーダーと同じ視点で部下の仕事を見ないようにしましょう。新人でもこのぐらいならできるだろうと、部下の視点まで降りて見守ることが大切です。それで、過去と比べて少しでもよくなっている点、改善されているところがあれば、「成長したね」と褒めるのです。
「朝の会議での発言だけど、具体的な提案が盛り込まれていて前回よりも良くなっていたよ」
「電話でのお客様への商品説明が上手くできるようになったね」
上手くできるようになったことに本人は気付いていない場合もありますので、そこを気付かせてあげるのはまさにリーダーの務めです。
▲褒め言葉になる「相づち」
「相づち」は、褒めるのに大切なツールだと思います。「さすがだね」「すごいね」「その考え方は面白い」などの肯定的な相づちはうれしいものです。これにさらに具体的なひと言を付け加えれば相づちはより効果的な褒め言葉となります。
「さすがだね! 頼んだ報告書、もう作ってくれたんだね」
「すごいね! 今週もチームトップだよ」
「その考え方は面白い! もう少し詳しく聞かせてよ」
▲自分自身を褒めるようアドバイスしてみる
ネガティブな部下の場合、褒められても「いえ、自分なんてまだまだです」と肯定的にとらえることができない場合があります。そんなリアクションがあったら、「自分自身を褒めることも大切だよ」とアドバイスしてみましょう。「できないところではなく、できたところを見て、“できて良かった” “自分は結構がんばったんだ”と自分を褒めてみるんだよ」と。
そういう指導も「褒める」「褒められる」という意識を持つ上で効果的だと思います。
リフレーミングで褒める
褒めるよう心掛けてはいるものの、なかなか褒める長所が見つからないという部下もいるでしょう。実は短所と長所は表裏一体。短所だと思っていたことが、視点や言い回しを変えると長所に見えるのです。これを心理学では「リフレーミング」と言います。例えば、
・細かくて神経質→よく気がつく
・消極的な性格→慎重派
・飽きっぽい→好奇心旺盛
私はかつて消極的なタイプの部下には「君は慎重派だから、昔からの大切な顧客も任せられるよ」とプラスに変換して伝えるように心掛けていました。これは長所を褒めるよりも、はるかにインパクトがあったようです。部下の欠点や短所をいつでも褒め言葉に言い換えできるように考えておきましょう。
経験の浅い部下には当たり前のことを褒める
周囲も認める優れたスキルを持つ部下や成果を上げている部下は褒めやすいのですが、経験の浅い部下はなかなか褒めにくいもの。それでリフレーミングのテクニックを紹介しましたが、「できて当たり前のことを褒める」ことも効果的です。
指示されたことはできて当たり前で褒めるに値しないと思う方もいるかもしれません。しかし、経験が浅いわけですから、指示通りとはいえ、きちんとやり遂げる能力があり、真面目に取り組んだことによるもの、と褒めるに値することと言えます。
「細かいところまできちんとできていたね。会議で説明しやすかったよ」
「頼んだ期日までに仕上げてくれたね。スムーズに次の工程に移れたので助かったよ」
仕事以外で、遅刻しないことや、呼ばれたらきちんと返事をすることでもいいのです。
「いつも気持ちのいい返事をするよね。チームのみんなにも見習ってもらいたいよ」と褒めます。
叱るときの大事なポイント
▲叱ると怒るは違う
部下を叱る目的は、「行動改善」が大前提といえます。強く言えば部下に伝わるわけではなく、それは自分視点の感情的な「怒る」場合が多いのです。そうなるとリーダーは自分の感情をきちんとコントロールしなければなりません。
お客様からのクレームが多いのなら、どんな言葉遣いや対応をしているのかを探り、改善を図るために叱ります。怒っていてはなんの解決にもつながりません。
▲「なぜ」ではなく、「何」と聞く
「なぜ、期日に間に合わなかったんだ?」
このように「なぜ」と言われると責められている感じがして、言葉に詰まり、思考がストップしてしまいます。これを「何」で聞いてみるのです。
「期日に間に合わなかった要因は、何だと思うかな?」
これなら、反省と共に部下も自分の行動のどこに問題があったのかと、振り返ることができます。自分自身をそれほど責めずに客観視でき、話しやすくなるのはもちろん、「次からはこうします」と部下自身が対策を考えることにもなります。
▲1つに絞って「叱る」
私も経験があるのですが、営業のロールプレイング研修で上司からたくさんのダメ出しをもらったときです。何から直したらいいのか分からず、すべてスルーしてしまいました。
そこで教訓ですが、1回につき叱る内容は1つに絞りましょう。複数を指摘されても部下には優先順位がつけられません。しかも、叱る内容に関連して思い出し、「そういえば、この前も同じことをやったよな」と今の目の前のことではなく過去の話を持ち
▼リーダー行動学▲
出すのは避けましょう。部下は混乱するだけです。
▲叱るときは改善提案も示すことも
行動改善のために叱るわけで、部下が自分でその改善案を考えるのがベストです。しかし、できなかったわけですから、「どのようにすれば良くなるのか」の改善案をリーダーが示したり、一緒に考えたりすることも大切です。自転車の補助輪のように寄り添う気持ちが「叱る」中には含まれています。

怒らないための感情コントロール術
私はかつて「万年湯沸かし器」などと呼ばれ、部下がミスしたり、言ったとおりにしないと烈火のごとく怒っていました。すると部下には「怒られた」という悪い印象だけが残り、行動改善にまで頭がまわらなくなって、また同じミスを起こしてしまいます。こうなると部下が悪いのではなく、指導するリーダーに要因があるといえます。感情を抑制する簡単な方法を紹介しましょう。
▲怒った内容を紙に書く
紙に書くという行為は、鎮静作用があります。書いているうちにイライラが収まってくるのです。そして、怒った内容を紙に書きながら、今回の件は何が問題点で、どのように指導しようかと、整理できるメリットもあります。
▲一度席から離れる
部下から報告を聞き、カチンときてこれはやばいと自覚できれば「10分待ってくれるかな」と言い、いったん席を離れます。トイレに行ったり、自販機のコーヒーを飲みに行くのもいいでしょう。カッカした頭を、席を離れることでクールダウンするわけです。
▲怒りを点数化してみる
人生で一番腹が立ったことを10点にして、今回の件での怒り度の点数を付けてみるのです。「あのときに比べれば2点か、3点ぐらいか。大したことないな」と思えるはずです。
▲心を落ち着かせるグッズを用意する
お子さんの写真とか、美しい風景写真などをPCやスマホの待ち受け画面に設定しておくとか、心を癒すグッズを用意しておきます。カッカしてきたらそれらを見て心を落ち着かせるわけです。名言集をそばに置いて読むのもいいかもしれません。
遠慮した叱り方はダメ
部下を注意するのは気がひけるという人は、つい次のように言ってしまいがちです。
「大した話じゃないんだけど」
「忙しいときにこんな話をして悪いけど」
「僕もこんなことを言えた柄じゃないんだけど」
このような遠慮がちな言い方だと部下は「そうか、重要な話じゃないんだ」「まあ、形式的に聞いておけばいいか」と受け取ってしまい、真意は伝わりません。
ではどうすればいいのか。言いにくい気持ちは正直に話し、その後に大切な話だということをしっかりと伝えるのです。
「言いにくい話なんだけど、大事なことなのでちゃんと聞いてほしい」
「これから言うことは君にとって気分を害することかもしれない。でも、重要な話だと思うので伝えるね」
こういう言い回しだと、部下は「リーダーも言いづらいという気持ちを打ち明けてくれた」と好感を持ってくれることでしょう。
全否定はしない
部下が提出してきたものに、意図するものと違っていると「指示どおりになってないじゃないか。全然違うだろ」と叱りつけながらの全否定は避けましょう。部下は大きなショックを受けてしまい、モチベーションは下がってしまいます。
「よくやってくれたな」で始めるのです。すると全てができていないわけではなく、部分的にはできている箇所を見つけられるはずです。
それでもできている箇所が見出せないのなら、提出してきたという行動だけでも「がんばったね」と認めるのでもいいでしょう。
叱った後のフォローも忘れずに
部下は叱られると、当然、気持ちを引きずり、へこんでしまいます。ですから、いつまでも尾を引かないよう、リーダーはアフターフォローをするのも仕事のひとつといえます。
▲叱ったことを謝らない
へこんでいる様子を見て、「叱ったりして悪かったね」と謝るようなことは言ってはいけません。叱った意味がなくなってしまいます。
▲別の業務の話で切り替える
フォローとして大切なのは、スパッと切り替えることです。コツは別の業務の話を振るのです。
「あっ、そういえば、明日の社内報の打ち合わせで総務が来るのは10時だったかな?」
別の話といっても、「そういえばバイクに乗っているって言ってたよね?」とプライベートな話を振っても効果は少ないでしょう。仕事に対するモチベーションにはつながらないからです。
▲「一杯飲みに行こうか」はNG
叱った後に「一杯飲みに行こうか」は、やめておきましょう。リーダーにしてみれば、飲みながらざっくばらんにいろんな話をして心をほぐしてやろうと思うかもしれません。しかし、叱られた部下は、リーダーとこれ以上一緒にいたいなんて思わないですし、早く帰りたいもの。一緒に飲みに行けばよけいに引きずってしまいかねません。
▲次のアクションの手伝いをする
叱る目的は行動改善ですから、叱った後は「何から取り組もうか」と次のアクションを自分なりにどのように考えているのかを尋ねてみます。いい考えならそれでOKですし、だめなら「他にないだろうか」と部下が自ら方向性を導き出せるように一緒に考える。そういうフォローが必要だと思います。
※参考:吉田幸弘著『部下がきちんと動く リーダーの伝え方』(明日香出版社)
【2018年1・2月号】リーダー行動学 部下との信頼関係の築き方
いかにしてプロジェクトや販売促進などの方針を伝えればいいのか?
いや、その前にまずは部下との信頼関係を築くことが先決だと述べる、リーダー教育で数多くの実績を持つ経営コンサルタントの吉田幸弘氏に話を伺った。
コミュニケーションの基本は、「聞き上手」になること
部下との信頼関係を築きたいと思うとき、まずはコミュニケーションを図ろうとするでしょう。そこで今回はコミュニケーションという観点から信頼関係の築き方をお話させていただきます。
まず、リーダーは話し上手になる必要はありません。もちろん、簡潔にポイントをおさえて伝えることは、相手も理解しやすいでしょう。でも、部下はそれぞれ経験も、得意分野も違いますし、ましてや苦手な分野も各々あるはずです。そうしたことで大切になってくるのが「聞く力」です。
「聞く力」が身につけば、部下にリーダーの意図することが伝わるようになり、よりスムーズなコミュニケーションができるようになるでしょう。
そんな「聞く力」が身につくと、次のようないいメリットが生まれてきます。
◆部下が今、どのくらいの知識があり、何を知らないかがわかること
部下が持つ知識と技術がわかってくるので、どの部分を重点的に指導すればいいのか、任せればできるのか、また、補足すればいいのかが明確になります。
◆部下が質問しやすくなること
説明を受けた後など、リーダーにはなかなか質問しづらいものです。「さっき言ったじゃないか」とか、「何を聞いていたんだ」と叱られると思うからです。ですから、リーダーが聞き上手なら、部下も質問しやすくなるので、より正確に理解できることにつながります。
◆部下が主体的になること
「聞く力」で部下が考えていることや感じていることをうまく引き出し、理解してやれば、部下のほうから主体的に行動するようになります。「やらされる」よりも部下も「自分でやりたい」と思っているものなのです。
すべての部下と「平等」に接すること
上司と部下という関係は、どんな企業でも職種でも、部下は上司に対してプレッシャーを感じているものです。個人面談や会議などで時間をとって話し合っているから大丈夫というのはリーダーの勘違い。公式の場では感情部分の本音はなかなか出てきません。だからこそリーダーのほうから意識してコミュニケーションを図るようにしたいものです。
そのコミュニケーションの図り方ですが、すべての部下と「平等」に接することが大切です。実はこれがなかなか難しいのです。つい、話しやすい部下、よく報告や相談をしてくる部下とばかり話していませんか? 特定の部下ばかりとランチや飲みに行っていませんか?
これについては私にも苦い経験があります。部下の大量離脱です。
A君は売上トップで後輩の面倒もよくみてくれるチームではエース級の存在でした。そのチームは営業に不慣れな若手が多く、私は彼らにつきっきりで、A君とはほとんどコミュニケーションをとっていませんで
した。
できる部下だから大丈夫だと思っていたA君でしたが、実は悩みやストレスを抱えており、それに気付かずにいた結果、辞めてしまったのです。
するとA君を慕っていた部下たちが次々と後を追うように辞め、結果、大量離脱となってしまいました。後で人づてに聞いた話だと「自分の話も聞いてほしかった」と言うのでした。

部下への声かけは内容よりも「回数」がポイント
「平等」に接するということは、「内容=質」のことではなく物理的な「回数=量」のことなのです。いわば、何回話したかと言ったほうがわかりやすいかもしれません。
行動心理学で「ザイオンス効果」というのがあります。これは「同じ人や物に接する回数が増えるほど、その対象に対して好印象を持つようになる効果」のこと。例えば、最初は興味のなかった音楽を何度も聴いていると、いつの間にか好きになって口ずさんでいたという経験は、よくあるかと思います。あれです。
つまり、人は一度に2時間話すより、30分ずつ4回話した相手に親しみを持つのです。ですから、部下にはどんどん話しかけてみましょう。仕事以外のことでもいいのです。雑談も大いに結構です。「おはよう」「ご苦労さん」「お疲れさま」といった挨拶程度でも構いません。
ただし、「おい」はNGです。部下といっても、年上の場合もありますし、年上、年下関係なく「おい」呼ばわりするリーダーは信頼できないでしょう。部下が年上なら敬意を持って「○○さん、お疲れさまでした」と敬語で声をかけるのが常識的です。
また、声をかける部下が偏ってはいけません。「平等に」です。誰しも話しやすい相手とそうでない相手がいます。それを補うためにも例えば部下の一覧表を作成し、声をかけた回数を書き込んでみましょう。少ない部下には意識して声をかける。そこまでしなければならないほど、偏りはよくありません。
声かけをカウントしながらどんどん増やしていく。そんなコミュニケーション方法もあるのです。
世間話でいい雑談力を養う
さて、その声かけですが、コミュニケーションを促すようにするにはどのようなことを聞けばいいでしょうか。
「最近、どう?」「何か困っていることはある?」と聞けばいいかと思う人がいます。しかし、親切そうに思えるこの声かけは、実はあまりいい聞き方ではありません。もしあなた自身がそう聞かれたら、何て答えますか? すぐには答えられず、考える時
間がほしくなるでしょう。これは、とても答えづらい声かけの代表例なのです。
ではどのような声かけがいいのか。それは、あまり考えなくてもいい内容、つまり、世間話などの雑談を心がければいいのです。
ただ、その雑談が一往復ぐらいしか続かないという部下もいるでしょう。ですから、ある程度は部下の情報を知り、普段から話しやすい関係を意識してつくっておくことなのです。
また、うまく雑談する際のポイントとして、「目の前に見えているものの話をする」ことです。
例えば手に缶コーヒーを持っていたとします。
「この缶コーヒー、知っている?」
「いえ、知りません」
「結構、いけるよ。君は普段、何を飲んでいるの?」
「僕はA社の缶コーヒーをよく飲みますね」
「ああ、あの芸人が出てるコマーシャルのか」
という具合です。
このほかに、
「休みの日は何をしているの?」
「何線に乗っているの?」
「昨日のサッカー、観た?」
この他、時事ネタも用意しておいたほうがいいでしょう。こうした雑談を通して部下のことを知ることもできます。好きなスポーツが同じで話が盛り上がれば、それだけ距離が縮まり、人間関係も強化されることでしょう。しかも、雑談をするうちにビジネスチャンスや、いいアイデアが浮かんだりして思わぬ収穫があるかもしれません。
また、何気ない声かけや雑談の中にも「ねぎらいの言葉」を使うと好感を持ってくれます。単に「お疲れさまでした」よりも「寒い中お疲れさまでした」と言ってもらえるほうがうれしいものです。

部下の働く理由を知ること
コミュニケーションを図り、信頼関係を築いたその先の狙いは、成果につながるような動きを部下にしてもらうことです。
では、部下が積極的に動いてくれるようなコミュニケーションは、どのようにすればいいでしょうか。ひとつ有効なのは部下の将来の考えに応じたコミュニケーションです。そしてそれには「部下の働く理由」を知る必要があります。
「今の仕事を選んだきっかけは?」
「仕事を通して得たことは何か?」
「将来はどのようなことをしたいのか?」
といったことです。部下がどんな価値観や動機で今働いているのか。それを把握できれば、その部下にマッチした指導ができます。例えば、
・現在は営業だけれど、将来は新商品の開発をしたいと思っているのなら、顧客のニーズに合う新しい商品を考えるように指示します。
・家族との時間を大切にしたいと思っているのなら、定時には帰れるように一つひとつの業務時間を短縮する工夫を促します。
部下の仕事をする動機となっているものがわかっていると、仕事も頼みやすくなり、モチベーションもアップすることでしょう。
でも、中には動機も将来像もはっきりしない部下もいるはずです。そういう場合はリーダーがうまく誘導し、引き出してあげればいいのです。次のような問いかけを普段から意識して、部下に接します。
【価値観を見つける問いかけ例】
◆子どもの頃に時間のたつのも忘れて打ち込んだことは何かある?
【将来像を見つける問いかけ例】
◆あのような人になりたいと思う憧れの先輩はいる?
【やりたいことを見つける問いかけ例】
◆周りの人が苦労しているのに、自分は簡単にできたことはある?
◆(逆にやりたくないことも把握するため)やっていてストレスを感じることは何?
このようにして、部下のビジョンや価値観、動機を共に探し出し、そこを刺激するような仕事をさせていくことがポイントです。
※参考:吉田幸弘著『部下がきちんと動く リーダーの伝え方』(明日香出版社)
【2017年12月号】ドラッカー理論を活用!既存事業を儲かるビジネス・モデルに劇的に変える!
しかし、ドラッカー理論の専門家でもある経営コンサルタントの藤屋伸二氏が提案する「変えたらシート」を活用すると、素早く取り組むべき方向性が見えてくる。
その「変えたらシート」とは?
事例①「対象市場・顧客」を変えてみる
現在の事業が頭打ちだとか、伸び悩んでいるというのはどの企業もあることでしょう。それが本業なら深刻です。
そうした状況にあるのなら、「変えたらシート」を活用してみてはいかがでしょうか。これはドラッカー理論をベースに私が考案したもので、セミナーやワークショップで好評を得ているマネジメント・ツールの一つです。
まず、表①のオフィスグリコを例に見てみましょう。
このシートを活用する場合はまず、「現在の状況」を縦の列に書き込みます。グリコ商品の本来の対象市場・顧客は「子ども」がメインです。提供する価値は「夢、栄養補助」、商品・サービスは「自社のお菓子と飲み物」、提供方法は「流通業者経由」になるでしょう。
そして「変えたらシート」の一番重要な点は、アミ部分の項目を別のものに変えてみることなのです。
表①では対象市場・顧客の「子ども」を「ビジネスパーソン」に変えてみれば、他の項目もそれに伴って変わっていきます。
(提供する価値)夢、栄養補助⇒リフレッシュ
(商品・サービス)自社のお菓子と飲み物⇒他社商品も含む食べ物・飲み物
(提供方法)流通業者経由⇒直接
(流通チャネル)卸業者・大規模小売店⇒企業にボックスを設置
(時間・スピード)都度⇒定期的
(数量)大量⇒数個
(価格)商品ごと⇒100円均一
というように、商品を構成する状況の要素は全て変わってしまいました。
アイス、野菜ジュース、栄養ドリンクもラインナップにあり、お菓子や甘いモノというと女性が好みそうですが、職場で手軽に買えることもあり、実際のオフィスグリコの利用者の7割は男性といいます。単に小腹が空いたからとか、お菓子が好きだからというだけではなく、デスクワークや外から帰ってきた男性にとってのお菓子は「リフレッシュ」するツールとなり、それで大ヒットしたのです。

事例②「提供する価値」を変えてみる
「提供する価値」を変えてみる
次に表②のマンナンライフ・蒟蒻畑の成功をこのシートに当てはめてみると、2の「提供する価値」を変えたことになります。
(対象市場・顧客)食材⇒ダイエット
(提供する価値)料理の具材で脇役⇒ダイエットの主役
(商品・サービス)食材としての蒟蒻⇒ダイエット食品の蒟蒻
(提供方法)流通業者経由⇒流通業者経由
(流通チャネル)食材売り場⇒健康食品売り場
(時間・スピード)都度⇒常用
(数量)1個⇒1袋〜
(価格)70円⇒145円〜
従来は料理の具材の脇役だったものに、「ダイエットの主役」という新しい価値に変えることにより、価格も従来より高くなりましたが、消費者に大いに受け入れられたのです。

事例③成功した事業や製品をシートに当てはめてみると
前述の事例①②のように「現在の状況」の項目を変えるとどうなるのかを、実在の商品や事業を簡単に紹介したのが表③です。
事務用品を中心とした通信販売会社のアスクルの場合は、この業界では3番手、4番手の位置付けになります。ですから、「提供方法」は流通業者経由としていましたが、その業者にもなかなか相手にしてもらえませんでした。
そこで、零細企業を対象にインターネットを通じて直接売ることにしたのです。零細企業では事務用品を買いに行く人員もいませんから、インターネットで注文するのが一番効率的で手っ取り早いのです。そして、「流通チャネル」も卸業者だったのを、地域をよく知る文具店に営業代行してもらい、カタログ販売としたので多品種・小ロットとなり、薄利多売だったのが適正利益となって実績を上げることができています。
星野リゾートの場合は、商品・サービスの項目である宿泊を、「運営指導・運営代行」に変えたんですね。すると、対象としていた市場・顧客も、消費者から「同業他社」へと変わるビジネス・モデルを作り上げました。
エスエス製薬のハイチオールCは、流通チャネルの変更で大きく変わりました。マツモトキヨシの登場で薬局・薬店の販売力が一気に減退し、ドラッグストアでの販売へとチェンジしました。その一方で「美白ブーム」がおきます。それまで二日酔いや倦怠回復向けだったハイチオールCを、シミ・そばかす対策といった美容・美白という価値を付けて、対象顧客も中・高年の男女から「美しくなりたい女性」とします。さらに、飲み方も以前は朝昼晩に分けてたくさん服用していたのを、若い人は薬には抵抗があるので、1日数粒に減らしました。すると横ばいだった売り上げが3倍にもなったといいます。

商品名を変えるだけでも、劇的に変化する
こうして今売れている製品やサービスを見ると、「変えたらシート」に当てはまる事例は他にもたくさんあります。そうした事例を見ていけば、このシートの使い方もよりわかってくることでしょう。
例えばトランプは、ポーカーなどのギャンブルの道具でした。それを任天堂が、「子ども向けのおもちゃ」に変えて、あらゆる世代、世帯に広がる商品に育てました。
ホテルグリーンコアというホテルは、普通のビジネスホテルならベッドが当たり前ですが、ベッドではなく布団を敷いて寝てもらう家族向けに変えて話題となりました。するとそれまで30%の稼働率が、80%になったそうです。
高知県にある、ひだか和紙は、文化財の引っ越しや移動する際は、和紙で包んで運ぶのがもっとも適していることをアピールして、文化財保護という超ニッチ市場を開拓しています。
フランスでは世界遺産に登録されたブドウ畑に、多くの観光客が訪れ、醸造所見学ツアーなどワイン文化に親しめる取り組みが盛んに行われています。それを創造的模倣として宇治茶畑にも生かす試みが行われており、単なる農地から観光資源へと変わっています。
フィットネスクラブの「Curves(カーブス)」は、女性だけのフィットネスクラブ。年齢不問、1回わずか30分の健康体操教室というコンセプトは、「対象市場・顧客」から「提供する価値」、「商品・サービス」「提供方法」「流通チャネル」「時間・スピード」などすべての要素が、従来の男性の多いフィットネスクラブの常識を変えました。今や全国の店舗数は1800店以上、会員数は80万人という実績を上げています。
また、商品名を変えるだけで成功した例もあります。ティッシュペーパーの『鼻セレブ』(旧:モイスチャーティッシュ)、清涼飲料水の『お〜い お茶』(旧:缶煎茶)、靴下の『通勤快足』(旧:フレッシュライフ)などが好例でしょう。
他に、頑丈な構造にすることで持ち運びに気を遣わなくてもいい、出張に特化したノートパソコン、本機は無料にしてカウンター課金で消耗品費にしたコピー機、計算機という機能からぼけ防止の「考具」としても売れているそろばん等々。「変えたらシート」にある現在の状況を構成する要素を1つ変えるだけで、劇的に変化する場合があるのです。

5W3Hに置き換えて考えてみる
「変えたらシート」に書き込む際、「現在の状況」を下の5W3Hに置き換えると考えやすいと思います。
「儲かりそうか」と「できるか」から判断して小規模に始めてみましょう。そして①予想通り、②思いがけない成功、③思いがけない失敗の3つの視点から、市場のニーズをくみ取り、売れる仕組みになるまで、テストを繰り返します。やがて、売れるめどがついたら本格的に事業として取り組むというわけです。
このように「変えたらシート」を活用すれば、ゼロから商品開発・市場開拓するより、はるかに短期間・低コスト・低リスクで、商品開発も市場開拓もできます。現在の商品や事業を儲かるビジネス・モデルに変えることも難しくはないでしょう。
対象市場・顧客……………………Who
提供する価値………………………Why
商品・サービス……………………What
提供方法………………………………How
流通チャネル……………………Where
時間・スピード……………………When
数量…………………………How many
価格…………………………How much
【2017年11月号】できるビジネスマンにはこれも必要!もの忘れを防ぎ、記憶力をアップさせる方法
神経内科の医師であり、テレビや多数の著書で知られる米山公啓医学博士にアドバイスしていただいた。

「あれなんだっけ」などと、いつも使っている言葉でありながらすぐに出てこないことや、いま言おうとしたことを一瞬にして忘れてしまったり、日常生活の中で記憶力の低下は気になるものです。
年齢と共に記憶力の低下が起きてきますが、それを防ぐ方法を考えてみましょう。
記憶には3つの種類
記憶には新しいことを覚えていく「記銘力」、覚えたことを脳に記録しておく「保持」、記憶したことを思い出す「想起」の3種類があります。
いわゆるど忘れは「想起」がうまくできない状態です。昨日のことをなかなか思い出せないのは「保持」が低下している状態。新しいことが苦手と思うのは「記銘力」の低下です。日常の生活ではこれらの記憶力が関係しあって、「もの忘れが多い」ということになります。
記銘力をアップする方法
新しいことを覚える力は、記憶の法則から言えば、好奇心です。自分の好きなことは努力しないで覚えられるものです。しかし、仕事に関係することはなかなか記憶できません。つまり本気で仕事に興味を持っているかどうかということになります。
なんども繰り返すことで次第に記憶は強固なものになっていきますが、それでは効率が悪いのです。
新しいことを覚える力は、やはり、いかにいろいろなことに興味を持てるかどうかということです。営業であれば、仕事をする相手にどれほど興味があるかということになります。重要な人であればあるほど名前も顔も覚えてしまうものです。
新しいグッズ、新しいレストランなど自分がいかに新しい情報を持っているか見直してみれば、自分の記銘力の強さがわかります。
「保持」をアップする方法
記憶の「保持」とは、いわゆる長期記憶と呼ばれ、一度覚えたら消えない記憶なのです。いまさっきの記憶は海馬で処理されて、大脳皮質へ送られる、忘れない記憶に変化していきます。そうなれば、忘れることはありません。つまり大脳皮質へ記憶をいかに上手に送り込むかということです。
「保持」で重要なことは十分な睡眠です。前日の情報の中で重要なものを睡眠中に、選んで大脳皮質へ送り込んでいるのです。だから十分な睡眠が取れないと記憶は保持されないで消えていってしまいます。
試験の前日、徹夜で勉強をして試験会場へ臨むのと、ある程度勉強して寝てしまう場合では、寝てしまったほうが覚えている記憶の量は多いのです。つまりうまく「保持」ができるのです。睡眠中は脳へ行く血液が増えて、脳が活性化していますし、神経細胞を刺激する神経栄養因子が増えるのです。
記憶と睡眠は非常に重要な関係を持っています。睡眠によって脳を休ませるのではなく、記憶力をアップするのだと考えるべきです。
保持をアップするもうひとつの方法は感情につなげることです。記憶は驚いた、感動したなどの感情が動かされたときに、一瞬にして忘れない記憶になります。
仕事の記憶で感情を動かすというのは難しいかもしれませんが、それくらい打ち込むことで、無理せず、忘れない記憶にしていくことができるはずです。仕事に感動をいかに持ち込めるかということでしょう。
「想起」をアップする方法
「想起」がうまくいかない状態とは、いわゆるど
忘れです。一度記憶して忘れない記憶になっていても、どうしてもうまく思い出せない、途中まで出かかっているのに出てこないという状態です。
記憶というのは、コンピューターのハードディスクにそのまま書き込んでいる状態とは違います。リンゴという単語であれば、赤い、丸い、あまい、くだものというようにさまざまな要素にわけて記憶されています。思い出すときには、いろいろな要素を取り出して「リンゴ」という言葉になります。つまり思い出す手順があります。それを間違ってしまうと、「赤いあれ」という感覚はあっても、リンゴという言葉が出てこなくなってしまうのです。あることを覚える場合、できるだけいろいろな手がかりがあったほうがいいということです。関連するいろいろなこと、覚えた場所なども思い出すときには重要になってきます。ひとつのことを覚えるのではなく、関連することも覚えていくと、思い出しやすいのです。
またど忘れの状態はもうひとつ原因があります。周辺の記憶に気持ちがいってしまい、重要な肝心の単語が出てこなくなってしまうのです。あまい、丸い、赤いということはしっかり覚えていても、リンゴという言葉を思い出すことを抑制してしまうのです。
そんな場合はむしろそこで諦めてしまいましょう。時間と場所を変えてもう一度考えるとすっと出てくるものです。
こういったど忘れを心配するのではなく、うまく思い出せないからいいやくらいに考えて、また思い
出せるだろうと前向きに考えることも大切です。

「ワーキングメモリー」というもうひとつの記憶装置
ワーキングメモリーは、時間の長さで区別する短期記憶でも長期記憶でもありません。ワーキングメモリーとは、何か目的を持って作業するときに使う記憶です。例えば暗算でお金の計算をする、人と話をする、創造性のある思考をする、あるいは同時に物事をやるときなどに必要になる記憶です。脳の中の黒板と考えるとわかりやすいです。
ワーキングメモリーの機能がしっかりしていると、幅広く、創造性のある思考ができます。ワーキングメモリーの機能が低下していると、いわゆる頭のキレが悪くなったと思うようになります。ワーキングメモリーは脳の前頭葉にあるとされ、年齢とともに面積が狭くなってきます。
だから、脳のキレが悪くなったと思うときは、ワーキングメモリーを鍛えていく必要があります。ワーキングメモリーを鍛える方法にはいろいろあります。
⑴新聞の短い記事を読んで、内容を理解するので はなく、印象に残った単語を4つ挙げてみる。
⑵電車の中吊り広告を見て、視線をそらしたあ と、そこに書かれている文章の単語を思い出し てみる。
⑶人と話をするとき、やたらに自分の意見を言わ ないで、相手の話を記憶するように聞いてみる。
⑷カラオケで新曲を覚えて、歌詞を見ないで歌え るようにする。
⑸文章を読んだり、音楽を聴いたりするときにも、 頭の中でイメージを作るようにする。
記憶の原則として、いやだなとか苦手だなと思うと、記憶していくことが難しくなります。まずは苦手意識を持たず、楽しく記憶していく必要があります。
またストレスが多いと、脳をしっかり働かせることができずに間違いも増えます。記憶力をアップするには、ストレス回避を心がけることです。つまり脳の中に余裕を持たせることです。さらに覚えるときには「覚えられる」と宣言をすることです。口に出して言うだけでも記憶力が違ってきたりするのです。
逆に忘れてもまた覚えればいいというくらいの楽観的な考え方や、自分の苦手なことが覚えられないと悲観的にならないことです。
脳の基本は忘れるようにできています。だから何もしなければ多くを忘れていくのが普通です。好奇心を持ち、楽しく記憶するその姿勢が非常に重要なのです。
【2017年10月号】リーダーのための実践ワークPart2 チームを活性化させる運営術

第一段階:形成期
不安と期待の中で大切な4つのポイント
オハイオ州立大学のタックマン教授が提唱する「小グループ発展の段階再考」という理論をベースに、結成されたチームはどのような段階を経て成長していけば、成果を出せるチームになるのかを見ていきましょう。
例えば、あるプロジェクト遂行のためや、特定商品の販売目的のために、各部署から収集されたチームが結成されたとしましょう。
初めて顔を合わせるメンバーばかりなら、最初は「様子見」状態から始まります。心は開いていませんから、不安と期待が入り混じった探り合いというところでしょう。
そこで、リーダーの役目として、次の4つのポイントを念頭に置いてチームの運営に取り組みます。
1つ目は、このチームは何のため集められたのか(目的)、それをメンバーはきちんと理解しているのか(方向性)を一人ひとりに確認しておく必要があります。
意外とこれがわかっていなくて、「なんで自分はこのチームにいるのだろう?」と思っているメンバーがいるものです。いつまでに何をどうしなければいけないのか。ゴールを明確に伝えます。
2つ目は、チームはどんな役割を担っていて、どんな作業をしなければならないのかを明確にしておきましょう。
3つ目は、ゴールまでどのような過程、プロセスを通っていくのかを把握しておくことです。
4つ目は、プロセス上で起きた問題や予期せぬトラブルが、雑談レベルでも話せる状態にあること。これがとても重要です。不安に思っていたことを黙っていて、後で大ごとになることがないようにしなければなりません。
心を開くためにすることは
この4つのポイントをリーダーだけでなく、メンバーも理解し、各々の仕事に生かして取り組めば、成果は必ずついてくると思います。
でも、大事だとわかっていても「でもね」と思うこともあるでしょう。メンバー同士がわかりあえてないので、どんどん進めていこうにも心がついていけないのです。いわゆる心を開いていない状態では、チームワークを発揮することはできません。
例えば社歴ランクの高い人(リーダーや先輩社員)は、社歴ランクの低い人(若手社員)につい「こんなことがなんでわからないんだ」と言ってしまいます。社歴の浅い社員が知らないのは当たり前だと思って、ランクの高い人は、低い人のところまで降りていかなければ、社歴の浅い社員は心を開きません。
そうしてリーダーは、メンバーの個人的な背景も知っておき、その人らしさが今、このチームで生かされているのかを見ていくのです。
第二段階:混乱期
一番大切な段階で、とことんぶつかり合うこと
各メンバーの個性や特徴、らしさ、そして価値観がわかってきて、いろんな意見が出てくる状態になると、チームは第二段階に入ります。
「それはちょっと違うんじゃないの?」と仕事をめぐって主張し、衝突が起き始めます。実はこの状態がとても大切なのです。チーム内での対立やトラブルはよくないことのように思えますが、チームが成長するための発展段階では不可欠な要素なのです。
不思議に思うかもしれませんが、リーダーは衝突がない状態なら、「うちのチームはまだまだだな」と思わないといけません。逆に衝突が起きたなら、喜んでもいいのです。
どういうことかといいますと、チーム内での対立やトラブルが起きるのは、メンバーが本気を出してきた証拠です。本音を言い合えるのは「チームワークを発揮する」ための大前提といえます。
衝突が起きる状態はもちろん、パフォーマンスは落ちます。けれど、本音を徹底的にぶつけ合わず中途半端のままだと、後に残るのは憎しみだけです。リーダーなら、このぶつかり合う状態を決して止めてはいけません。本音で「それは違う。俺はこう思うんだ」となれば、解決策がメンバー間から出てくるものです。
本気スイッチを探すのもリーダーの役目
40代や50代の方なら「昔は本気でぶつかり合った」という経験をお持ちでしょう。本気で喧嘩した、本気で遊んだというこの世代の方はスイッチがすぐに入るからいいのですが、若い世代はトラブルは嫌だと逃げてしまいます。
ですから、リーダーはメンバーがどうすれば「本気スイッチ」が入るのかを探さなくてはなりません。何か楽しいことがあると入るのか、認めてあげると入るのか、ですね。
そして、パフォーマンスの良いチームでもよくあるのが、一番大切なことを話しだすと誰かが冗談を言って笑ってしまい、本筋からずれてしまうことです。本筋からずれると、同じところをぐるぐる回って、前に進みません。これは無意識でそうなるもので、なかなか抜け出せないのです。
そんな時こそリーダーが気づかなければなりません。何か同じパターンで繰り返しているなと自覚することです。「ハーフ イン・ハーフ アウト」という言葉がありますが、リーダーはあまりにも俯瞰しすぎると冷たいと思われますし、入り込みすぎると現状が読めなくなります。ほどよい俯瞰。まず、このことを心がけようという気持ちが大切です。
そして、リーダーはメンバーの本音に対しては「YES」をどんどん出していきましょう。受容することです。メンバーたちに「こういう意見を出してもいいんだ」という安心感を与えることです。
また、リーダーは、今自分はどんなリーダーなのかを客観視するのに役立つPM理論(図①)も参考にしておくといいでしょう。

【コラム】 過去をひも解く、「年表」を作ってみる
一番大切な第二段階では「会社も自分も過去をひも解く」ことを目的に「年表」を作ることをすすめています。
世界の出来事、日本の出来事、会社の出来事、個人の出来事の年表を作るのです。例えば金融危機が起きた時、日本もその影響を受け、会社も大変な状況になり、そんな時に自分や家族はどうだったのかを見ていくと、つながっているんです。世界の出来事が自分にもリンクしていることがわかります。特に面白いのは会社の年表です。あの時、苦しかったので、今の節約の取り組みがあるんだなと理解できます。その苦しかった時の当事者である先輩社員は、その時の苦労を理解してもらえ、若手はその出来事を知る。つまり、「会社の歴史」を通じてお互いが近づくのです。この「年表作り」は理解を深めるのに一役買うはずです。
第三段階:統一期
暗黙のルールが適材適所を生む

本音がとことん出て、課題に対してオープンな意見交換ができると、次の段階です。第三段階では、チーム内で暗黙のルールが生まれてきます。
こういう計算はAさんが早い、新規のアイデア出しはBさんがうまい、この分野はCさんの得意分野だ、というように、メンバーそれぞれが目標達成に向けての効果的なプロセスや、各人の役割分担を検討するようになるのです。メンバー同士がそれぞれの特性がわかってくると適材適所で動き始めます。
ある会社で3年計画のもと、チームの活性化に取り組んだ時に、2年目でこの第三段階の状態になりました。けれど、皆さん、自分たちがこの段階にまで成長していることに自覚がなく取り組んでいるのです。もちろん、生き生きと取り組み、当然、いいパフォーマンスで成果を上げていきました。
ここまで発達すると、適材適所だけでなく、「Dさんはこういう時に決まってミスをするから」と素早くメンバーがフォローします。こういうチームになるとリーダーは楽になりますね。
第四段階:達成・機能期
全員がリーダーシップを発揮
チーム一丸となって目標達成に向けて集中し始めると、第四段階です。この段階では、メンバーは共通の目的意識を持ち、効果的にコミュニケーションを取って、それぞれの仕事を最終目標に向けて順調に進めていきます。
全員がリーダーシップを発揮している状態ですから、課題に対しても自分たちで乗り越え、確実に成果を出すことでしょう。
塗装業を営む会社の事例です。ある時、お昼の休憩中に、「そうだ。この時間を利用して別件の現場の仕事をやっておこう」「それはいいね。何人か抜けてもここの現場なら、社長にやっておいてもらおう」と、さっさと自分たちで考え行動してしまったのですよと、その会社の社長が驚いていました。私は第四段階に入ったなと感じました。見ていて実に気持ち良く、動いていましたね。
こうして第四段階を経て成果を出せば、チームは解散です。また、別のプロジェクトのチームへと渡り歩いていくでしょうが、成功したチームを経験しておれば、リーダーもメンバーも次のチームでも活躍してくれることでしょう。
【2017年9月号】リーダーのための実践ワークPart1 チームが「活性化・一致団結・強くなる」コミュニケーション術
そんなチームの主な原因はコミュニケーションロス、ミスにあると、社長・幹部コーチング実績の豊富なチーム開発コンサルタントの鳥澤謙一郎氏は指摘する。
ではどうすればコミュニケーションはよくなるのか。そのノウハウを伺った。

信頼関係は明るさ、話しやすさ、接点の多さ、コミュニケーション量が質に変わる
例えば、組織に戦略、戦術があり、メンバーそれぞれは能力があり、ロジカルな思考で、効率良く仕事をこなすものの、雰囲気が暗く、会話は必要最低限のみ、そしていまいち士気が高まらない。そんなチームは、リーダーやメンバー間で言いたいことが言えない、リーダーが話を聞いてくれない等コミュニケーションロス、ミスが多いようです。しかも、メンバー間の心理的安心感が低く、信頼関係は希薄です。
このような状況に心当たりのあるリーダーは、先ずメンバーの話を聞き、情報量を増やすことが必要です。メンバーの情報が増えることで、タイムリーで的確な対応ができます。意識してメンバーに好奇心と肯定的な関わりを持ち、心理的な壁を低くすることがスタートです。そこで、私がコンサルティングの現場で導入している簡単に実践できる3つのワークを紹介しましょう。
心理的な壁を低くして、話しやすくするワーク
コミュニケーションを良くするということは、人間関係を良くすることです。前提として戦略、戦術はあるが結果が出ないのは、メンバーの能力に問題があるのでなく、人間関係が機能していないことがほとんどと考えています。
そこでおすすめしたいのが、3つのステップからなる「心理的距離を近づけるワーク」です。これはメンバー各人が自分の考えを開示し、相互理解して心理的距離を近づけ、話しやすくなることを目指します。このワークは、よく知られる「ジョハリの窓」(図①)や、チームの発達の段階を4段階に定義した理論「タックマンモデル」を参考にしています。週1回、朝礼の3分間を6ヵ月間実践してみましょう。

STEP1 グッド&ニュースを共有する
2人1組で、「24時間以内に起きた自分にとって良かった事柄」の話をします。「遅刻せずに出社することができた」「留守が多いユーザーにアポがとれた」といったレベルから始めてみましょう。
STEP1では「良い」ことに意識を向けるということがポイントになります。人は、どういうわけかネガティブな事柄は拾いやすいもの。特に日本人は、欧米との文化的な違いがあるのか、自虐的なことを美徳と受け取りがちです。褒める文化が日本にはあまり見られません。ですから、なおさら意識して「良い」ことを意識するのは、ポジティブな視点を養うのに有効といえます。
そして、その良かった事柄をポストイットに書き出し、相手に渡します。書くことは思考を整理する習慣にも役立ちます。
ここで大切なルールはポストイットを受け取った人はその内容について決して否定、批判したり、非難してはいけないことです。受け取り方、考え方は人それぞれですから、「そういう受け取り方はあるよね」「それは良かったですね」と受け答えするように始める前に伝えておきましょう。
このSTEP1の時間は1人1分弱で構いません。毎日行い、3ヵ月は続けます。
このワークを進めていくと、物事の「良いところを見る」習慣が身につきます。となると、例えば営業活動で新規受注率は通常3~5%と言われていますが、断られてばかりでへこむところを、「なぜお客様に断られたのか」「お客様から学ぶ(良いところを見る)」という習慣が身につけば、その断られた中からも何か得られる事を見つけようとします。それがキャリア、成長することにつながるのです。
STEP2 ポジティブに振り返る自分史作り
4ヵ月目はSTEP2に移り、「夢を語る自分史」というもので、これも2人1組で行います。
このワークの組み立てで参考になったのが「ジョハリの窓」です。人間関係を良くするには2つのポイントがあります。1つ目は、自分だけが知っている事柄を他人に知ってもらうことで、つまり自己開示です。この自己開示には「価値観の自己開示」「事実の自己開示」「感情の自己開示」の3つがあり、これらの情報を知ると相手は安心します。2つ目は、他人からのフィードバックを貰うこと。他人のフィードバックで自分の知らなかった自分に気づけるというわけです。
さて、STEP2ですが、自分史を「子供時代」「学生時代」「社会時代」の3つに分け、その時の夢をポストイットに書き出します。その中で1つだけ自分の事実を入れるのです。
「私は『子供時代』にオランダに旅行したことがあり、パンの美味しさに驚き、帰国後、将来はパン職人になろうと思っていました。『学生時代』には・・・。この中で夢はどれでしょうか。答えは子供時代です」といった感じで実施します。これはポジティブな謎解きのようで、なかなか楽しいもの。しかも3つの時代の話を聞けばその人の考え方、価値観を知り、その人への理解も深まるはずです。
それと同時に、夢を考えることは想像力を鍛え、伝えることでプレゼン力をも養います。週1回、毎回メンバーを替えて、もちろんリーダーも入って行うといいでしょう。
STEP3 自分らしさを探すワーク
5ヵ月目はSTEP3へと移ります。これも同様に2人1組で実施。「自分らしさ」を探すワークです。30秒でポストイットに自分らしさを書き出してみましょう。それを互いに見せ合い、相手らしさを一つ選び、選んだ理由を伝えます。
例えば、自分が「慎重」「計画的」「謙虚」「丁寧」と書いたとします。それらから相手は、「丁寧」を選び、その理由は「この前、ファイルを元に戻すのを頼むと、他のファイルまできちんと順番を揃えていたから」と伝えるのです。
コミュニケーションを良くするには相手に興味、関心を持つことが大切です。それが関係性を築く基本となります。
ワークショップでこのSTEP3を実施することがあるのですが、選んでくれた自分らしさを書いたポストイットは、ほとんどの人が大事に持って帰ります。「自分はそういうふうに見られているのか」は、普段は寡黙に仕事をしている人でも気になるもの。ましてや褒められたことは大事にとっておきたいのでしょう。
メンバーの魅力引き出しワーク

いよいよリーダーが大きな役目を果たすのが「メンバーの魅力引き出しワーク」です。
このワークでは、リーダーがメンバーに行動特徴(強み、弱み)をフィードバックします。メンバーの行動特徴は環境、目標に応じて変化します。ですから、弱みを否定的に捉えることはありません。自己理解を深め、変わり続けることが成果につながります。
このワークのフィードバックとは、メンバーの普段の実績や勤務態度から見つけた肯定的な事柄を伝えます。つまり、褒めるのです。メンバーに気づきを促し、魅力を引き出すのが目的で、「ジョハリの窓」や「タックマンモデル」のほかに、“良い人間関係があるチームは良い思考、良い行動、良い結果を出せる”という「成功の循環モデル」を参考に組み立ててみました。
やり方としては、リーダーは毎週メンバー全員の前で、1人を選び、選んだメンバーが成長した点を心(仕事の前向き姿勢)、技(お客様を喜ばした仕事)、体(勤怠・残業時間)の3つの観点から90秒でフィードバックします。フィードバックを受けたメンバーは感想を1分以内で話します。週1回、時間はわずか会議前の3分間ほどでいいでしょう。
このワークで成果を出すポイントは100%の本気です。メンバーのことを「本気で観ている」という感じが伝わることです。そうすれば、メンバーも心を開いて接しやすくなります。
実際、あるチーム開発先のオーナーは褒めるのは苦手なので、「ありがとう」なら言えそうだということで、それを実施してもらいました。すると1ヵ月後、あるメンバーが「社長はここまで拾い上げてくれるのかと驚いています」と喜んでいました。このオーナーはおそらく本気で、社員をよく観察し、見ていたのでしょう。トップやリーダーが率先することの大切さを感じました。
受け取り力アップワーク
3つ目は、仕事上でのマイナスな出来事を、前向きに受け取り、プラスに展開できる力を身につけるトレーニングとなる「受け取り力アップワーク」です。
「ジョハリの窓」、「成功の循環モデル」に加え、「ABC理論※」も参考にしたワークで、独りで問題を抱えがちな人であっても、リーダーやメンバーにすぐ相談できるような関係性を築き、コミュニケーションを図るものです。
やり方は、10人いれば、2人1組で3組と2組のチームに分け、それぞれリーダーを決めます。会議前の3分間、週1回、3カ月間実施してみましょう。
まず、2人1組で、①マイナスな出来事、②その事実をどう受け取り、③どんなプラスの行動をとったかを伝え合います。例えば、
①マイナスな出来事▼印刷物に間違った数字が載ってしまい、クライアントに迷惑をかけた。
②どう受け取ったか▼誰もが間違いやすいので、お陰でチェック体制を強化できたと受け取った。
③どんなプラスの行動▼誰もが使えるチェックマニュアルを作成し、同じミスが起きなくなった。
といった感じです。
終わったらリーダーにメールで報告。リーダーはパソコンなどで①出来事、②受け取り方、③どんなプラスに行動したかを管理し、各リーダーは良かった内容をメンバーにメール配信して共有するのです。
今回ご紹介したいずれのワークも決して複雑な内容ではありません。リーダーはワークの実施回数や間隔を臨機応変に変えていけばいいのです。コミュニケーションの接点を増やし、明るい話しやすい空気を作り、前向きな人間関係になったチームは必ず前向きな結果が伴います。まずは取り組んでみてください。
※ABC理論(心理学者アリバート・エリス)
困った状況、出来事(Adversity)に直面すると、それについて考え、思い込み(Belief)ができ、思い込みは結果(Consequence)を生む。結果を変えるにはどう受け取り方(思い込み)を変えるかがポイントとした理論。

