【2019年10月号】失敗しない人材採用計画を目指してミスマッチを防ぎ、「面接」を見極める!

現在の人材採用は、経営ビジョンや経営戦略を具現化する能力を持つ人材を確保する戦略性が求められている。それには何としても「ミスマッチ」を防ぎたいもの。今回は長年のコンサルティング経験から採用面接もアドバイスする鳥澤謙一郎氏に、最新の適性検査など、面接での見極め方についてうかがった。

鳥澤謙一郎氏オリジナルシート

◆ミスマッチを防ぎ、合否を見極めるチェックシート
現在、大卒新入社員の3割が、入社後3年以内に離職しているといいます。これでは採用コストや教育コストが無駄になるだけでなく、会社の将来にも大きな痛手となります。離職する理由はさまざまでしょう。「待遇が不満」「期待したようなやりがいを感じられない」「人間関係がうまくいかない」等々。これらは一言でいえば「ミスマッチ」に他なりません。採用段階で、企業と求職者のお互いの意思を確認し合っていれば、ミスマッチを防ぐことができたと思われます。でも、入社してみなくてはわからないというのが本音でしょうし、面接で採用する・しないの見極めは至難の技ともいえ、人事担当者の頭を悩ませています。そこで、私が面接時に役立ててほしくて作成した「仕事力・自己診断シート」(下図)をご紹介させてください。これは私がコンサルティングしてきた現場で蓄積してきたことと、これまで出会った多くのビジネス成功者から学んだことをもとに作成したものです。

◆自己肯定できる人かどうか
このシートは、「自己肯定力」をチェックするものとして作成しました。ビジネス現場では失敗することのほうが多く、例えば私がリクルートの営業マンだった頃の新規獲得率は5%でした。戦略的に計画を立て、リストを作成し、アポイントを取り、たくさん断られてやっとプレゼンできても、契約に至るのは僅か5%。つまり、100件にプレゼンして、契約はたった5件だけ。“心が折れる”とはいいますが、断られ続けていたら、自分を信じる力とか、こうなりたいという理想を持ち続けるには自己肯定力がないと、なかなか前に進めません。100のうちに95も失敗しても、「95のダメなやり方を知った」と思う失敗を学びに変えるポジティブさ、自己肯定力がビジネス現場では必要だからです。シートの設問に対する答えは◎が多いに越したことはないのですが、実はたった3つの設問の答えだけを見て判断できるように作っています。

◆この3つの設問の答えが◎であれば採用すべき人物
まず、[1]コミュニケーション力では、10の「自分のこれまでの人生は運がいいと思っているか」は◎であれば採用したい人材といえます。運がいいと思っている人は前を向いています。例えば“出会い”を偶然だとしても「これはいい出会いだ」と思う心持ち、肯定的な考え方は良い出来事を引き寄せます。また、「運がいい」という人は、自分のいたらなさを認める素直さもあるので伸びる可能性が高いと思います。それに対して「運が良くない」と思う人は、物事に対して否定的かつ批判的なので、周囲の応援も得にくいですよね。
[2]主体力では、20の「労働条件より成長できる環境を重視するか」も◎なら合格です。「労働条件」といえば給与や報酬ですが、それは結果の話です。結果はまだ出していないのに、お金を求めるのはどうでしょうか。お金が先にありきだと、キャリアを積んだ技術者は別にして、小さくまとまってしまい、すぐに不満を言うような気がします。それよりも、「こういうことがしたい」「この仕事を通して成長したい」と自己実現したい人、自己の能力や個性を生かしていきたいという人なら、結果としてのお金はついてくる環境がある。そんなスタンスで採用し、受け入れたいものです。
[3]達成力では、30の「両親を尊敬し、年長者・上司を立てることができるか」も◎であればOKです。生みの親、育ての親に尊敬せずして成功した人はいないのではないでしょうか。これまで出会ったビジネスで永続的に成功された方たちを見ていると、生みの親、育ての親には常に感謝の念を持ち、先輩や上司、周囲をさり気なく立てています。主観的な言い方になるかもしれませんが、10、20、30の設問が◎であれば、あとの設問が△や×ばかりでも、採用してもよい人物だと私は考えています。

◆面接は先入観を抑え、過去の事実を深掘りしていく
「仕事力・自己診断シート」は私の経験から導き出されたものですが、客観的なデータを駆使したチェックシートをご紹介しておきましょう。株式会社ヒューマンキャピタル研究所の適性検査「HCi-AS(HumanCapital Institute-AdaptationSupport)」です。6千社、200万人以上の検査実績があるそうで、診断結果と受検者本人の性格特徴を照らし合わせたときの合致性・正確性は85%以上だといいます。その「HCi-AS」を紹介する前に、懇意にする同社の猪俣卓氏に面接のポイントを話してもらいましょう。猪俣氏「面接で気をつけたいのは、書類や第一印象などから抱く主観による“先入観”です。先入観があると客観的に見るのが難しくなるのですが、なかなか取り除くこともできません。そこはあえて先入観があることを認めてから臨むのもいいでしょう。例えば挨拶がハキハキして『好青年だ。』という先入観が生じても、一歩引いて『好青年だが、……』というように心がけるのです。また、面接では応募者がどういう人物なのか、過去の経験や実績などいろいろな角度から訊き出します。その訊き出した事を深掘りしていきましょう。どうしてそれをやろうと思ったのか、何がきっかけだったのか、その結果はどうなって、どのように感じたのか。深掘りして、その人の考え方や視点の置き方を掴むことです。過去の事実を徹底的に深掘りしていくのが面接官のスタンスだと思います。一方、新卒なら『御社ではこんなことをしたい』と未来の話になると思いますが、その場合は、なぜそれがしたいのか、あなたなら何ができそうか、といったような感じで深掘りをしていけばいいかと思います」

◆「見極め」のために、適性検査も活用してみる
採用面接は、かなり高度なスキルを必要とします。1度や2度会っただけで応募者がわが社にふさわしいのかどうかの「見極め」が求められるからです。それができていないから、早期退職が後を絶たないミスマッチが起こっているといえます。しかも、昨今は売り手市場と言われ、人手不足が深刻化しており、欲しい人材が来ないが故に採用を急ぐケースが、よりミスマッチを生み出しているように思えます。また、面接だけでわかることは限られていますし、面接だけで決めると面接官の主観が採用を左右することになり、それもまたリスクがあるといえます。そこで、先の適性検査「HCi-AS」を活用してみるといいかもしれません。猪俣氏「この適性検査HCi-ASは、面接では分からない応募者の本質的な性格特徴を、簡単なアンケートで明らかにします。実施がしやすいのもポイントで、アンケートを受けて、その診断結果が出るのに30分もかからないスピーディーな検査なのです」

◆受検者の個性まで確認できる診断結果
採用面接は、かなり高度なスキルを必要とします。1度や2度会っただけで応募者がわが社にふさわしいのかどうかの「見極め」が求められるからです。それができていないから、早期退職が後を絶たないミスマッチが起こっているといえます。しかも、昨今は売り手市場と言われ、人手不足が深刻化しており、欲しい人材が来ないが故に採用を急ぐケースが、よりミスマッチを生み出しているように思えます。また、面接だけでわかることは限られていますし、面接だけで決めると面接官の主観が採用を左右することになり、それもまたリスクがあるといえます。そこで、先の適性検査「HCi-AS」を活用してみるといいかもしれません。猪俣氏「この適性検査HCi-ASは、面接では分からない応募者の本質的な性格特徴を、簡単なアンケートで明らかにします。実施がしやすいのもポイントで、アンケートを受けて、その診断結果が出るのに30分もかからないスピーディーな検査なのです」

◆ストレス耐性に強いかどうかも大切
さらにHCi-ASには、受検者のメンタルヘルスについてもアドバイスしてあるので心強いと思いますよ。猪俣氏「最近では、仕事を任されるプレッシャー、クレーム、ミス、職場での人間関係など日々生じるさまざまなことからのストレスで早期退職する人が増えています。今やストレス耐性の強い人を選ぶことが採用の失敗を防ぐことにつながり、人材採用の大きなポイントになっているのです。診断結果にはその点も重視してメンタルヘルス、ストレス耐性についても明記し、採用の合否の判断材料として活用していただいております」このようなチェックシートや適性検査は、採用を迷ったときなどはもちろん、面接や試験と合わせて活用するととても役立つと思われます。ミスマッチの少ない採用計画こそまさに戦略的人事であり、企業の存亡にも関わってきますので、今回ご紹介させていただきました。

【2019年9月号】部下のやる気を高める!モチベーション・エンパワー Part2

前号では、自身や他者を動機づける「モチベーション・エンパワメント」の5つの要素を、JTBコミュニケーションデザインの野本明日香氏にうかがった。今回は、その5つの要素の生かした方を、さまざまなケースを通して実践的に解説してもらった。
※本稿では「エンパワメント」を従業員の本来の力を引き出し、成果と従業員の充実感を生み出すという意味とする

ビジネス現場で生かす10のケース

モチベーションを高める5大要素
前回お話した「モチベーションを高める5大要素」について少しおさらいをしておきましょう。

①身体の状態
モチベーションは体の中で生まれますので、まずは「身体の状態」を整えることが大切です。食事・睡眠を充実させるとともに、筋肉を動かすなど運動をすることで脳内のモチベーションを高める物質がたくさん出やすくなります。失敗などで気分が塞ぎ込んだら、筋トレや運動は手早く元気になれる方法です。

②アウトカム
「アウトカム」とはゴールや目標、欲しいモノのこと。「私の理想の状態はこれだ」「これを手に入れたい」というイメージを明確に持つことが大切です。「今日一日しっかり働いて、美味しいビールが飲みたい」「自身が成長してこんな姿になりたい」というのもアウトカムといえます。

③ミッション
私たちの働くモチベーションの最も核にあるのが「ミッション」です。自分は仕事を通じてどのような使命を果たすのか、すなわち自身の命を使って果たすべき役割は何なのか、がミッションとなります。企業なら、自分たちの組織の存在意義、そして従業員は、何のために、誰の幸せのためにこの仕事をするのかがミッションになるのです。

④柔軟性
目の前の出来事にどういう意味づけをするのか、その事実をいかに生かすか、それが「柔軟性」です。例えばクレームに対して「もううんざり。この仕事は辞めよう」と思うか、「このクレームには何か意味がある。ここから何を学ぼう?」と思うか。どのように受け止めるかは自分の選択です。周囲の環境にしなやかに適応し、起こる出来事を全てチャンスに捉えるのが「柔軟性」です。

⑤刺激
「刺激」はモチベーションを高めるのに重要な要素といえます。もし仕事がマンネリ化しているのなら一緒に仕事をする人を変えたり、席替えや模様替えをしたり、通勤の経路を変えたりするのもいいでしょう。さらに、テンションが上がる音楽や映画、食べ物やアート、元気になるモノ、演劇やコンサートなど、全力でエネルギーを放出されているモノに触れるのも大きな刺激となるはずです。
これら5つの要素を、ビジネス現場でどのように生かしていけばいいのか。さまざまな職場での問題を通してアドバイスしたいと思います。(以下の質問内容は、野本氏のもとに寄せられた実際の質問や相談をベースに、エスカイヤニュース編集部が作成)

【身体の状態】

1. 自分の身体をよく観察し、クセを知ること

Q. 1日のうちでも、モチベーションが上がるときと下がるときがあるように思えます。下がるときは集中力が欠けているからなのでしょうか。

A. 1日の中でも生産性が上がる時間帯があります(左図参照)。食後しばらくしてから、午前なら11時ごろ、午後なら15時あたりにピークがきますので、脳が一番よく働くこの時間帯に大事な仕事をもってくるといいでしょう。また、集中力が続くのはおよそ45分、最大でも120分といわれています。集中力が下がる時間帯には、あまり集中力を必要としない仕事をするなど、人の身体の調子にはバイオリズムがあるので、その波をうまく利用するのです。ふだんから自分の身体をよく観察し、自身の癖をよく知ることが大切です。

2. 職場の環境を変えてみる

Q. あるカタログ冊子の制作を15年間担当し、仕事はルーチン的な作業となっています。だからか「新しい企画を」と言われてもアイデアが浮かんできません。どうしたらいいのでしょうか。

A. できるかぎり環境を変えてみましょう。手始めに、いつもディスカッションする相手、席、インテリア等、目に入ってくるモノを変えてみましょう。15年もやっているのなら日本のカタログ事情の大概のことはご存じでしょうから、海外のサイトを見るなど、インプットの幅を広げるのも一つです。海外だとカタログの作り方や使われ方も日本とは違うはず。そこからインスピレーションを得ることもできるのでは。

【アウトカム】

3. リーダーは明るく元気でいること!

Q. このところ顧客からのクレームやミスが続き、メンバーは自信を無くし、チームの雰囲気も陰鬱です。なんとかチームを盛り上げたいのですが、いい方法はないでしょうか。

A. まずはリーダー自身がご機嫌で仕事をすることです。「ミラーリング」と言って、私たちは無意識に目の前にいる人の言動や仕草など、鏡を見るかのように真似をします。これはモチベーションも同じこと。周囲に伝播していきますから、目の前の人は自身の鏡だと思うことです。自身がメンバーを元気付ければ、元気になったメンバーを見て自分も元気をもらえます。

4. 「これならできそう」と思わせる

Q. 当社も女性が活躍できる会社を目指そうと、複数の幹部候補を選びました。するとその一人が「なぜ私ですか?」と辞退したいと。優秀な人材なのでなんとか管理職に育てたいのですが。

A. 「女性管理職を増やしたい」という相談はよく受けますが、現場の女性たちはなりたくないというのが大半です。理由は2つに集約できます。1つは管理職に魅力を感じていないから。2つ目は自分にはできそうにないと思っているからです。一般的に男性は自己評価を高く見積もり、女性は自己評価を低く見積もりがちで、自分にはとても無理と思っていることも多いのです。
そこで「あなたのやってくれたこれが助かった」「あなたのここが強み」と、一つ一つ承認の言葉をかけて、「これならできそうだ」「こんな管理職ならなってみたい」と思えるよう承認するとともに、彼女にとって魅力的と思える管理職像を創っていけるようサポートをしていきましょう。

【ミッション】

5. 文句ばかり言う人には役割と責任を伝える

Q. どんな仕事にも文句を言う男性部下がいます。特に変更を嫌がり、きちんと理由を説明しても「最悪」と嘆き、チームの士気を下げてしまうのです。どのように指導すればいいのでしょうか。

A. まずは、変更も彼のすべき仕事であることをきちんと伝えるべきでしょう。文句や悪態をつくのが癖になっている可能性もあります。自分が周囲へ悪い影響を及ぼしていることに気づいていないのかもしれません。率直にチームの士気を下げていることを伝えるのもよいでしょう。文句には同調せず、彼の役割と責任をしっかりと認識させましょう。

6. 繰り返し問い掛けていく

Q. 20代後半の部下で、いわれた事、指示した事は完璧に仕上げるのですが、それ以上の事はしません。自らやってみる楽しさを感じてほしいのですが……。

A. 指示した以上のことを部下がやってくれることをあなたが期待しているのなら、それをまずはきちんと伝え、認識してもらうことです。例えば「ここまでの指示は出すけれど、そこから先は自分で何らかの方法を考えてほしい」と指示以上の事をやってほしいと最初にきちんと伝えます。それを言わないで、やってくれたらいいなと期待しても部下には伝わっていません。
そして、「これについてはどう思う?」「何の役に立っていると思う?」とさまざまな問い掛けを繰り返ししていけば、あなたがいなくてもその問いが頭をよぎり自ら考えるようになるでしょう。

【柔軟性】

7. 陰気臭い職場には「おしゃべり作戦」

Q. 異動で新しい職場に来て間もないのですが、とにかく陰気臭く、挨拶もなく、報告も目の前にいるのにメールで済ませようとします。皆のモチベーションを上げる方法はありませんか?

A. とにかくリーダー自らがよく喋り、明るい雰囲気を作ることです。何でもメールで済ませようという職場は動きが停滞しているもの。「話す」ことでそこにエネルギーが発生するので、いろんな人と対話してエネルギーの橋を架け合っていけば、澱んでいた空気も動き出すはず。一日中パソコンに向かってずっと黙っていると、極端ですが顔の筋肉が喋り方を忘れてしまいます。気軽に話しやすい環境を作ること。雑談のしやすい職場というのを目指してもいいかと思います。

8. 顧客の要求の理由を深く理解する

Q. 決済システムのプロジェクトリーダーを務めています。短期納品なのに2度も仕様変更があり、顧客に振り回されて皆うんざり。やる気を取り戻すにはどうすればいいでしょうか。

A. 振り回されているという捉え方を変える必要がありそうです。変更があるということは得意先もそれ以前に迷っていたのかもしれず、予測して別案を提案していれば迷わせることはなかったのかもしれません。顧客の要求の「なぜ」「何のために」といった理由や目的を深く理解できれば、顧客にとって最良の選択肢を提案できるはずです。

【刺激】

9. 自分をメンテナンスすることも大切

Q. 今のチームもようやく軌道に乗り、成果を上げているのでホッとしたのか、最近、やる気が出ません。新しいことにも億劫になってしまいます。どうしたらやる気が出てくるでしょうか。

A. 人は常に全力疾走する必要はありません。時に、エネルギーをたくさん使ったあとは、自分を充電し、メンテナンスする時間も必要です。美味しいものを食べるとか、温泉に行くとか、新しい分野の勉強などインプットに努めるのもいいでしょう。次の目標を定めるのはそれからでも良いのです。

10. ボキャブラリーを増やして褒め上手になる

Q. 幹部研修で「褒めることが大切」と教わりましたが、なかなか褒めることができません。どうしたら褒めることができるでしょうか。

A. まずは褒めるボキャブラリーを増やしましょう。上の世代のスパルタ的な環境で過ごしてきた方は褒められた経験があまりないので、褒める言葉を知りません。ですから、いざ褒めたくても言葉が出てこないのです。普段から褒める言葉を手帳に書き留めておけば、自然と口に出てくるようになるでしょう。身近な人や芸能人などで褒め上手な人を参考にするのも良いですね。

参考:野本明日香著『たった5つでモチベがあがる技術』(日経BP社)

【2019年7・8月号】部下のやる気を高める!モチベーション・エンパワー Part1

人は何のために働くのか。と、改めて問われてすぐに答えられるだろうか。部下や従業員がどうもやる気が見られず、職場に活気がない場合、“何のために働くのか”という根源的な「モチベーション」を見つめ直すことが大切とJTBコミュニケーションデザインの野本明日香氏は指摘する。今、リーダーのスキルの一つとして注目されている「モチベーション・エンパワメント」についてうかがってきた。 
※本稿では「エンパワメント」を従業員の本来の力を引き出し、成果と従業員の充実感を生み出すという意味とする


 
人が行動を起こす前にある、モチベーション
 
「モチベーション」とは、人が行動を起こすときの原因、つまり動機づけのことですが、
ラテン語の「movere(動く)」が語源となっています。
私たちが行動を起こす前には、必ずモチベーションの存在があります。
食事をする、友人と会っておしゃべりをする、電車に乗って仕事に行く、
その全ての行動に必ずモチベーションがあるからそのように動くのです。
組織の活性化やチームをマネジメントするトップやリーダーにとって、「人は何で動くのか」、
すなわち「人のモチベーション」を知ることは必須条件といえます。
部下に素晴らしいパフォーマンスをしてもらうには、
トップやリーダーのモチベーションをマネジメントするスキルが欠かせません。
 
 
トップやリーダーは自分自身のモチベーションを見直す
 
「モチベーション・エンパワメント」は、まずはトップやリーダーが自分自身のモチベーションを見直さなければなりません。
例えば一流のアスリートたちはここぞという場面で高いパフォーマンスを出すために、
メンタルもフィジカルもコントロールするスキルを持っているもの。それと同じなのです。
しかもモチベーションは伝播します。モチベーションの高いリーダーの側にいれば、
部下のモチベーションも高まりやすくなります。
だからこそ自分のモチベーションをコントロールし、
常にいいモチベーションを維持することはトップやリーダーの大前提といえるでしょう。
大企業や有名企業といわれる組織の管理職者であっても、パフォーマンスをうまく発揮できていない人はよくいます。
保身に走ってしまったりするモチベーションの低さが要因の一つで、その人の部下にも悪影響を与えてしまいます。
 
 
モチベーションを高めるスキル その1
「身体の状態」を整えること
 
気分が塞ぎ込んだら筋トレを!?
 
自分でモチベーションをコントロールし、高める5つの要因とスキルについてお話しましょう。
まず、モチベーションは体の中で生まれますので「身体の状態」を整えることが大切です。
筋肉を動かすとモチベーションを高める物質がたくさん出るという研究結果があります。
例えば快感物質でもある「ドーパミン」はやる気を高めて集中力を上げます。
この物質は何かを達成したとき等にも出ますが、筋肉を動かしても出るのです。
ネガティブなときは失敗が続いたりします。
そのマイナスのサイクルを断ち切るためには、メンタル面で改善を図るよりもフィジカルな状態を整えるほうが手っ取り早いのです。
つまり、どん詰まりを感じたら筋トレをしてみましょう。
ウォーキング、ストレッチ、ヨガ、有酸素運動等もお勧めです。適度な運動はモチベーションを高める効果があります。

 
 
モチベーションを高めるスキル その2
「アウトカム」を持つこと
 
今日も一杯のビールのために!
 
モチベーションを高めるには「アウトカム」を持つのもポイントです。
「アウトカム」とはゴールや目標、欲しいモノのこと。
「私の理想の状態はこれだ」「これを手に入れたい」というイメージを明確に持つと、
そのイメージに向かって体の神経、細胞の一つひとつが動いていくといわれています。
「あの資格が取りたい」「ハワイに別荘を持ちたい」「今日一日しっかり働いて、
美味しいビールが飲みたい」というのもアウトカムなのです。
自分にとって魅力的なアウトカムがきちんと描けていると、そこに向かってモチベーションがどんどん上がっていきます。
そこでお勧めしたいのが、「どうなれば理想的だろうか」、「どういうのが素敵だろうか」
というアウトカムを語る場を持ってみることです。
例えばフラストレーションの溜まる会議について、どんな会議なら素敵なのか?活気のある有意義な会議とは?
明日の会議は楽しみで仕方がないと思える会議とは?を皆で話し合ってみます。
理想とする会議のアウトカムが見えてくれば、自然とそのアウトカムに向かって皆が取り組むようになるものです。
現状とアウトカムの間にはギャップ、つまり問題や課題があります。
そのギャップが何なのかを明確にすれば、それを解決するための行動も明確になるというわけです。
 
 
モチベーションを高めるスキル その3
「ミッション」を定めること
 
自分は人を笑顔にする花屋なんだ!?
 
私たちの働くモチベーションの最も核にあるのが「ミッション」です。
私たちの仕事は、誰かの幸せに繋がっており、誰かの役に立っているからこそ、その対価としてお金をもらっているといえます。
自分が提供したい価値は何なのか、自分は何者でありたいのか、それが「ミッション」となります。
例えば「自分は人を笑顔にする花屋でありたい」とか「自分は斬新な味で人を楽しませる料理人でありたい」とか。
どんな仕事を通じて人を幸せにする使命があるのか、
すなわち自身の命をつかって果たすべき役割が何なのかを考えてみましょう。
それは今の仕事に魅かれた理由にヒントがあるかもしれません。
従業員一人ひとりのミッションと会社のミッションが繋がっていると理想的です。
企業のミッションは、企業理念やビジョンに表れていることが多いでしょう。
自分たちの組織は何をする組織なのか。そして従業員は、何のために、誰のためにこの仕事をするのかがミッションになります。
自分は何者であり、何を実現したいのかが定まり、人生を賭して果たしたい役割が明確になると、行動に迷いがなくなります。
そして、何かの判断を迫られたとき、優先順位が明確になり、瞬時に判断できるようになります。
つまり、ミッションは全てのよりどころとなるわけです。

 
 
モチベーションを高めるスキル その4
「柔軟性」を身につける
 
クレームではない。チャンスなんだ!
 
モチベーションの高め方で「柔軟性」は身につけておきたいスキルです。
モチベーションが下がっているとき、今、起きている出来事が要因だと思いがちですが、下げているのは自分自身。
同じ出来事に対する反応は人それぞれです。その反応は自身が無意識に選択しているのです。
目の前の出来事にどういう意味づけをするのか、その事実をいかに生かすか、それが「柔軟性」です。
お得意様からクレームがあったとしましょう。
「もううんざりだ。この仕事は辞めよう」と思うか、「上司がフォローしてくれなかったからだ」と思うか、
それとも「このクレームには何か意味がある。何か学べるはずだ」と思うか。目の前の事実は変わりません。
どのように受け止めるかは自分次第です。
うまくいかないとき、モノの見方を変える「リフレーミング」が役立ちます。
私たちはモノごとを見て、一般常識や決まり事、特定の価値観や思い込みなどのフレーム(枠組み)で意味づけをしています。
リフレーミングはそのフレームを柔軟に付け替えてみることをいいます。
フレーミングの技をいくつか紹介しましょう。
人間関係がうまくいかないときなど、自分以外の誰かの目線で見る方法です。
意見が食い違うのならその相手の靴を履いて、相手の目玉を借りたら自分がどう見えるかを考えます。
目線の高さを変えるのもいい方法です。ロケットに乗ったつもりで物事を俯瞰してみます。
自分たちの仕事が何の役に立っているのか、顧客の先に誰がいるのか。地球レベルで物事を見るのもいいですね。
社内で部門同士が対立しているのなら、事業部全体、会社全体へと俯瞰してみましょう。
時間軸を変える方法も役立ちます。今の仕事は、半年後は、1年後は、そして10年後、30年後はどうなっているのか。
周囲の環境にしなやかに適応するリフレーミングを使った「柔軟性」を身につけ、起こる出来事は全てチャンスと捉えられれば、こんな素敵なことはありません。

 
 
モチベーションを高めるスキル その5
「刺激」でマンネリ化を防ぐ
 
人、場所、習慣を変えてみよう
 
人の脳は同じ景色ばかりを見ていたら、何も感じなくなったり、以前は刺激的だったモノでもやがて飽きてきて、
何も気づかなくなったりします。マンネリ化はエネルギーを削いでしまうもの。
そこで必要となるのが、変化による「刺激」です。
何か変化が起こるとそこに化学反応が生じますから、「刺激」はモチベーションを高めるのに重要な要素といえます。
変化をつけるには、例えば人との出会いがあります。
趣味の場や異業種交流会に出かけて、ふだんは会わない人との出会いは、いい刺激になってモチベーションを高めます。
また、仕事のメンバーを替えるのもいいでしょう。
別の事業部の人と仕事をすれば、異なる考え方や仕事の進め方が刺激となり、柔軟性を高めることにも繋がります。
「場所」を替えるのもお勧めです。許されるのなら、カフェや図書館で仕事をしたり、
席替えや模様替えを定期的にすれば座っているときの視界が変わるので刺激になります。
また、通勤の経路を変えたり、日常で使う文房具類を替えたり、日々の習慣を変えるのもいいでしょう。
さらに「刺激」を得る方法としては、エネルギーのあるモノに触れることです。
テンションが上がる音楽や映画、漫画に小説、食べ物やアートでもいいでしょう。
自分が元気になるモノ、演劇やコンサートなど、全力でエネルギーを放出されているモノに触れることは、
大きな刺激となるはずです。
このように、「身体の状態」「アウトカム」「ミッション」「柔軟性」「刺激」とモチベーションを高める5つの要素とスキルを紹介してきました。次回はこの5つの要素をさまざまなビジネス現場で生かす方法を見ていきましょう。
 
 
参考:野本明日香著『たった5つでモチベがあがる技術』(日経BP社)

【2019年6月号】事例で見る 成長企業への展望 Part8

元気な企業は、こんなことをしている!中小企業ならではのニッチ戦略でヒット商品を生み出す。人気シリーズの西村晃氏のフィールドワーク・レポート。超高齢化時代のニーズを汲み取り、大企業にはできない中小企業ならではの商品提案力でヒットを飛ばす成功事例を紹介していただこう。


 
今日の消費動向を把握するには、年金支給日のスーパーを観察するのがいちばんだ。
隔月15日、スーパーにシニア層が押し寄せる。
店側もその日に合わせて販促を行っていることもあるが、開店早々レジには長蛇の列が続く。
いかにこの国の消費者が「主たる収入が年金」という人たちが多数派になりつつあることを実感する。
 
近年は一般消費財でヒット商品が出づらくなった。たまにSNSなどで評判になる商品が出ても極めて短命だ。
理由はいろいろあるだろうが、高齢消費者が増えて新規需要が発生しにくくなっていることが大きな要因だ。
メガヒットではなく中小企業ならではの時代のニーズに合わせた商品提案で確実に果実を得る営業戦略が求められる。
今回はそんな事例を紹介する。
 
 
感動営業こそ地方住宅メーカーの生きる道
 
愛知県豊田市で不動産・建設業 「ニッポー」を経営する近田知晃さんは42歳、
社長就任以来若い感性で次々に改革を進めている。
「地方都市の不動産、建設業は、ふつうは目立たない地味な存在です。
でもこれからは、地域を元気にする先兵となるべきだし、一生に一度の家を建てる感動を演出する必要があります」(近田さん)
ニッポーは、話題性のあるイベントを提供して集客をする。
最近人気なのが「VR(ヴァーチャル・リアリティ)で想像を超える土地体験!」というもので、家族連れなどで大いに賑わう。
「ゴーグルをつけると、CADで作成した3Dの家が更地の景色に現れ、リモコン操作で室内もヴァーチャル体験できます。
親子三世代がまるでテーマパークに遊びに行ったように喜んでくれます」(近田さん)
近田さんはこれまでも「起震装置による震度7体験」や「家庭で作れるお菓子教室」といったイベントを次々に企画、
それを地元のマスコミに取り上げてもらうようにリリース発表を繰り返してきた。
「最初は一人の新聞記者も知り合いはいませんでしたが、市役所の記者クラブを訪問してチラシを渡しては名刺交換、
その名刺を頼りにリリースを繰り返したところ、
イベントの度に地元紙やテレビ局が取材に来てくれるようになり知名度が上がりました」(近田さん)
ニッポーでは“感動営業”としてお客様との出会いから家の完成までの感動ムービーを製作し、
カギの引き渡し式や、一生で一番高い買い物をしたパパへの手紙など、家づくりを一生の思い出にする演出をイベント化している。
「人生の節目を演出することで、ほかのメーカーにはない付加価値を提案しています。
祖父母が何より喜んでくれる三世代の家づくりのトータルコーディネーターになるという手作り感こそ、
地方住宅メーカーの生きる道です」と近田さんは明るくこう結んだ。

 
 
地方のベンチャー企業が大手の特許技術で新商品開発
 
何が幸いするかわからない。毎朝始業前に社員で行う会社前の道路清掃が、新規ビジネスにつながった。
「当社の前を通勤する佐賀県地域産業支援センターの職員の方が、
お宅のような実直そうな会社に開発をお願いしたい、とお声がけをいただきました」
こう語るのは佐賀市にあるコンピューターソフトウエア開発の「アイティーインペル」、田中政史社長だ。
「病院や老人施設で徘徊するお年寄りを検知し、
ナースセンターに通報するシステムを開発できないかという依頼でした」(田中さん)
これまでの認知症アラームは、ベッドの上にセンサーマットを敷き、お年寄りの動きを感知するというものが一般的だが、寝返りを打っただけでも反応してしまうなど誤作動が多く、看護師、介護士の負担軽減にはつながらないという問題点があったという。

それに対してアイティーインペルでは、人感センサーを使いお年寄りの頭の部分を追従し、
さらに行動範囲をプログラミングしてベッドエリアから出る可能性を察知、ナースコールへ信号を送るシステムを開発した。
実はこの開発の裏には大企業の開発した特許を県を仲介にベンチャー企業が活用するという仕組みがあった。
「大企業が持つ特許を中小企業の開発支援に使う『知財ビジネスマッチング事業』として富士通と当社との間で特許ライセンス契約を締結しました。佐賀県が仲介する初めての事例です」(田中さん)
アイティーインペルは、富士通の「状態検知プログラムおよび状態検知方法」という特許を利用、
視覚的に行動を把握するシステムを作りあげた。

「大学病院での臨床試験を行い、この春から販売を開始しました。
このシステムで看護師や介護士の負担が大幅に軽減されることが期待されます」(田中さん)
『見守りあんしんくん+eye』と名付けた新商品は、今後はスマートフォンと連動させ在宅介護でも利用できるようにする予定だ。
地方の中小企業が偶然の出会いから大企業とつながり、高齢社会に挑む製品作りに挑戦している。
「一から製品開発するだけの投資は中小企業にはできません。
大企業の特許を利用させてもらい、大企業ではコストが見合わないニッチ市場の商品開発ができる可能性を感じます」(田中さん)
『見守りあんしんくん+eye』は発売前から引き合いが相次ぎ、生産に追われている。
田中さんはチャンス到来と意気込んでいる。

 
 
新しい「古物商ビジネス」を提案する
 
「古物商」という呼び名は見るからに古めかしい印象だ。
廃品回収業、あるいは古本屋業、質流れ品販売といったものはこのジャンルにくくられる。
全国に60店余りを展開する「ネオスタンダード」は、創業15年。
これまでは関東地方を中心に中古品を中心にブランド品や高級時計、宝石などを買い取るビジネスを行ってきた。
この企業をM&Aで買い取ったのが後藤光さんだ。
「これまでのビジネスモデルを更に進化させて、新しい時代に合った仕組みを構築しようと考えました」(後藤さん)
後藤さんが新しく考え出したビジネスは「遺産相続や、老人ホームなどへの転居の際の資産整理」である。
「高齢社会で注目が集まる生前整理・遺品整理の仕事です。
当社はこれまで買取専門店で培ってきた目利きを活かし、適正価格を算出して買い取りを行うことができます。
素人の方にとっては価値がないと思われるものでも、プロの鑑定眼で価格を割り出します。
一方で整理する品々にかかる廃棄費用を割り出し、買い取り商品の価格と相殺することになります」(後藤さん)

 
家財道具を整理して、廃棄費用が上回るか、あるいは買い取り費用が上回るか、プラスとマイナスを計算して提示する。
これまでのビジネスは買うだけ、あるいは廃棄物を有償で引き取るだけというものが多かったが、
両方の機能を提案するところにこの会社の強みと新しさがある。
このビジネスに注目したのが、リバースモーゲージを展開する金融機関や、資産運用を提案する証券会社だった。
リバースモーゲージとは、存命中に不動産を担保に金融機関から生活資金を借りて、
死亡後にその不動産を引き取ってもらうという資産設計だ。
死亡後、土地や家は金融機関の所有になるが、金融機関にしてみれば家財道具などを整理する必要があり、
ネオスタンダードのようなビジネスモデルが必要になってくる。
また遺産整理などをテーマにした富裕層向けの証券会社の講演会でも後藤さんはこのところ講師を務めることが増えた。
「各地で満員の盛況です。このテーマへの関心の高さが伺えます。
遺品整理業者の選び方など参考になった、人生に一回の事で備えあれば憂いなしだと思った、
といった感想をいただいています」(後藤さん)
高齢社会というトレンドをとらえてビジネスモデルを転換することで新しい成長のきっかけをつかむ。
閉塞市場というけれど、「すき間(ニッチ)」はたくさんある。「すき間」というのは掘ってみれば実は意外に広いものなのだ。
大企業ならともかく中小企業の今後はこの「すき間」を確実にものにしてゆく姿勢ではないだろうか。

【2019年5月号】昭和世代とは違う「ゆとり世代」を解明!イマドキ社員たちの 扱い方マニュアル Part2

「ゆとり世代」に代表されるイマドキ社員の扱い方、接し方が難しいと悩む、昭和生まれのトップやリーダーが多いと社会保険労務士でもある経営コンサルタントの大庭真一郎氏は語る。前号ではその背景を探ったが、今回はイマドキ社員たちの扱い方、対応の仕方をアドバイスしていただいた。


 
 
■イマドキ社員たちを定着させるために
 
これからお話する内容を耳にして、もしかしたら「なぜ自分たちが若い人たちにそこまでやらなければいけないのか?」と疑問に思われるトップやリーダーがおられるかもしれません。しかし、よく考えてみてください。昨今の人材獲得については売り手市場です。苦労して確保した若い人たちは将来の会社を担う人材なのに、大卒新入者が3年で3割も辞めてしまう現状があります。そんなイマドキ社員をなんとか定着させないといけません。それは全社を挙げて取り組むべきことといえます。今回の「扱い方、接し方」はそのヒントになればと思います。
 
 
■イマドキ社員たちとのコミュニケーション方法
 
― その①イマドキ社員たちが望む方法で連絡する
まずは連絡方法です。今の若者たちは、物心がついたときから、メールやSNSでの連絡が当たり前の世代です。ビジネス現場で連絡に関して大事なことは「すぐに連絡すること」であり、手段は二の次といえます。電話より慣れているメールやSNSでの連絡を受け入れてみましょう。「電話で連絡すべきだ」というのは、メールやSNSが普及していなかった時代に育ってきた人の考え方に過ぎません。
例えば、明日の待ち合わせ時間が変更となりました。出先からそのことを連絡する場合、スマホのラインやメールで伝えてみるのです。また、お互いが社内にいても、簡単な連絡事項ならメールで送ってみます。普段は話しベタなのに、メールだと意外と饒舌になる人もいるのです。
上司や先輩社員たちがイマドキ社員たちの望む方法でコミュニケーションを取ることを受け入れることで、意思の疎通を図りやすくなることもあるようです。
 
― その②上司のほうから頻繁に声掛けをする
インターネットを通じた人間関係に馴染んできたイマドキ社員たちは、現実の世界では他人に対して遠慮しがち。自ら進んで上司に報告・連絡・相談を行うことに対してもためらいがちになります。
そんな彼らには、上司のほうから声掛けを行うことが効果的です。そこで提案したいのが具体的な仕組みを作ることです。例えば、上司や先輩による「相談タイム」を設けてみてはいかがでしょうか。入社後1カ月間は定時時刻前の15分間を新入社員のためにいろんな相談にのるといったようなことをしてみるのです。自分からはできなくても、相談の時間が設定されていれば、ためらわずに話しやすくなるのではないでしょうか。
 
 
■イマドキ社員たちへの伝え方
 
― その①分かるように指示を与える
“オンリーワンであることが大切”と言われて育ってきた今の若者たちには、納得しないと行動しないタイプが少なくありません。このようなイマドキ社員たちにきちんと仕事をしてもらうためには、「分かるように指示を与える」ことが重要です。
①具体的に伝える:このような理由で、何について、いつまでに、どのようにしてほしい、と誰が聞いても同じように受け取れる内容にまで落とし込んだ指示を行う。
②ゴールの形を具体的に伝える:指示したことをやり遂げた場合にどのような結果が生まれるのかを伝える。
③やり方だけではなく仕事の仕組みを教える:業務全体の流れと担当する業務の位置づけを教える。
 
― その②相手に伝わるまで説明する
自ら進んで上司に報告・連絡・相談を行うことをためらいがちなイマドキ社員たちは、指示されたことを飲み込めていなくても、その場で確認をせずに、誤った仕事の進め方をしてしまうことがあります。「はい。わかりました」と答えても理解できていない場合があるのです。
繰り返し伝え、相手が指示した内容を本当に理解しているのかを確認することも重要です。復唱してもらってもいいでしょうし、指示に対してどのような行動をとろうと考えているのかを、答えてもらうなどすれば理解度を確認できるでしょう。
 
― その③指示を与えた後も面倒を見る
前述したように、「詳しく説明したのだから、後は、きちんとやってくれるはずだ」と過信するのは禁物です。指示を与えた側の人間が、イマドキ社員たちの仕事ぶりに目を光らせ、仕事をやり遂げるまで積極的に面倒を見ることが必要でしょう。つまり、適時なアドバイスです。そうすれば、イマドキ社員たちとの意思の疎通を円滑にし、本人の能力の向上にもつながっていくはずです。
ただし、イマドキ社員たちはすぐに答えを求める傾向が強いため、1から10までアドバイスするのではなく、本人に考えさせるプロセスを設けましょう。
 
― その④残業は、残業の必要性を考えさせる
残業を指示する場合は、イマドキ社員たちは自分の時間を大切にしたいという意識が強く、残業を嫌う傾向にあります。一方的に残業を指示しても、本人は納得して動きません。そこで、「残業の必要性」を考えさせることが大切です。
「なぜ、残業をしてまでこのことをやらなければならないのか」、「今、残業してこのことをやることが今後にどう影響するのか」などについて考えさせ、本人が納得すれば、イマドキ社員たちは自発的に残業もするようになるでしょう。
 

 
 
■イマドキ社員たちへの接し方
 
― その①雑に扱わない
上司や先輩社員たちの中に、「新人は社内で一番下の人間である」、「新人は戦力にはならない」などといった意識があり、意図的に雑用のようなレベルの低い仕事ばかりを新人に与えがちです。
そのような扱い方をされると、理想やプライドの高いタイプが多いイマドキ社員たちは、ストレスを感じて、嫌気がさし、離職することを考えるようになってしまいます。
一人の戦力として認め、任せられる仕事は積極的に任せていきましょう。すると、イマドキ社員たちも自分が期待されていることを感じ取り、意思の疎通を積極的に図るようになるはずです。
 
― その②過剰に気を遣う必要はなし
先の雑に扱ってはいけないからとか、辞められてはたまらないからと恐れるあまり、腫れ物に触るような感覚で彼らに接するのは本末転倒です。
人を使う側は、イマドキ社員が何人いようと、組織の中での役割分担を決めて効率的に人を動かし、組織としての成果を追い求めるためのマネジメントを行わなければならないことに変わりはありません。なのに気を遣ってばかりでは、イマドキ社員たちは、いつまで経っても成長しませんし、会社や上司、先輩社員たちに対して距離感や不信感を抱くことで、離職への引き金にもなりかねません。
 
― その③過去の自分と比べない
「オレが新人のときは、このようなことは当たり前にやっていたのに、なぜできないのか(なぜやらないのか)」などと、過去の自分と比較しながら叱責するのは禁物です。なぜなら、過去の自分と比べた発言は、相手のことを全面的に評価しないことへとつながり、イマドキ社員たちは上司とのコミュニケーションをとるのに嫌気を感じてしまうでしょう。
過去の自分と比べるのではなく、イマドキ社員自身の過去と今とを比べて、「できていること」や「できるようになったこと」を認めてあげる姿勢が重要です。
 
― その④イマドキ社員のタイプに合わせた接し方
昨今の若者は、報酬や出世への欲望は薄れつつありますが、成長したいという欲求は、昔と変わらずにあるようです。
イマドキ社員のタイプを知り上手に導けば、自発的に行動し、成長していくものです。
【導き方の例】
▶協調性のあるタイプは、協調性があることを褒めた上で、今後の進むべき方向性を指し示す。
▶客観的に物事を判断するタイプは、現実的な対応ができていることに対して信頼していることを伝えた上で、今後の進むべき方向性を指し示す。
▶批判的な態度を取ることの多いタイプは、上司が部下の言うことにきちんと耳を傾けるという姿勢を示しながら、今後の進むべき方向性を指し示す。
▶自分を表に出さないタイプは、声掛けする回数を増やした上で、今後の進むべき方向性を指し示す。
このような形で導くことで、本人が仕事を通じて成長していることを実感することができれば、モチベーションの向上にもつながることでしょう。
 

 
 
■イマドキ社員たちのヤル気の引き出し方
 
― その①帰属意識を持たせる
イマドキ社員たちには、会社組織に馴染めないタイプが多いようです。「自分は組織の一員であり、組織から必要とされている人間なのだ」という帰属意識を持たせることが、彼らのヤル気を引き出し、成長させることに対して効果的です。
そのためにも、確たる根拠のない古い価値観や考え方を押し付けることは避けたいものです。
【イマドキ社員たちに対するNGワード】
▶世の中とはそういうものなのだ。
▶そういうのが社会人としての常識なのだ。
▶若いうちは下積みの仕事をするのが当たり前だ。
▶オレが若いときはもっと大変だった。
▶そんなことくらい自分で考えろ。
イマドキ社員たちには、一昔前の「サラリーマンとは、このようなものなのだ」的な感覚は通用しません。
 
― その②自己実現の欲求に火をつける
イマドキ社員たちのヤル気を高めるには、彼らは理想やプライドが高いので、「仕事を通じて自己実現をしたい」という欲求に火をつけることが効果的です。
【自己実現の欲求に火をつけるプロセス】
▶最初のうちは、「やらないと叱られるから」、すなわち仕方がないからやるという感覚で仕事をしている。
▶そこで、「自分の背負った役割は果たさなければならない」という使命感や責任感を植え付ける。
▶使命感や責任感が芽生えたならば、きちんと行動できていることを認めることで、認められることに対する喜びを感じさせる。
▶そこまでくると、「仕事を通じて自己実現をしたい」という欲求が生まれてきて、彼らの中でヤル気が高まり、理想に向かって自発的かつ積極的に行動するようになる。
 
― その③働きに応じた公平な評価をする
イマドキ社員たちには納得しないと行動しないタイプが少なくないので、働きに応じた公平な評価をすることが重要です。
それには、本人の能力や環境に応じた無理のない適正な目標を設定し、それに対する達成度に応じた評価を行うのです。
一昔前のように、上から一方的にノルマを課し、それに対して杓子定規的な評価を行うやり方には、イマドキ社員たちは納得しません。そのようなことを続けていると、会社に対する不満や不信が募り、ヤル気を失ってしまうでしょう。
 
― 最後に
イマドキ社員たちが別に特殊な人間だというわけではありません。彼らの価値観というものがあり、それが一昔前のものとは異なるというだけの話なのです。イマドキ社員たちを使う側の人間が、いかに彼らのヤル気を引き出し、能力を高め、組織の一員として機能させるかというマネジメントに起因する問題です。能力とヤル気を高めることができれば大きな戦力となりうることに変わりはありません。
つまり、身の回りにいる彼らがどのようなタイプの人間なのかを知ろうと、上司自らの行動を変えていくことが求められるのです。

【2019年4月号】昭和世代とは違う「ゆとり世代」を解明!イマドキ社員たちの 扱い方マニュアル Part1

「ゆとり世代」に代表されるイマドキ社員の扱い方、接し方に苦慮しているという昭和生まれのトップやリーダーが多いと社会保険労務士でもある経営コンサルタントの大庭真一郎氏は語る。そこで今回はイマドキ社員たちの不可解な言動となっているその背景を探ってみた。


 
 
■イマドキ社員とは?その特徴と傾向
 
“イマドキ”と呼ばれる人たちの年齢層は「ゆとり世代」をイコールと考えてもいいでしょう。「ゆとり世代」とは主に2002年度から2010年度まで実施された「ゆとり教育」を受けた人たちをさします。年齢的には1987年度から2004年度の間に生まれた31歳から14歳までのあたり。どんな特徴や傾向があるのか、後ほど公的データでご紹介しますが、簡単に挙げてみましょう。
 
◉ストレス耐性が低くて打たれ弱い
◉指示されるまで動かない(指示されたことしかやらない)
◉すぐに結果を求め、答えを知りたがる
◉仕事よりプライベートを優先する
◉遅刻や欠勤、欠席などの連絡をメールやラインで送ってくる
◉お客様や上司にタメ口をきく
◉コピペした報告書を上げてくる
◉周りが忙しそうにしていても、定 時が来たら一言もなくさっさと帰ってしまう
◉職場の飲み会に参加したがらない
◉人が話をしているときにスマホを いじる
◉注意すると逆切れする
◉きつく言うと会社を辞めてしまう
 
こんなイマドキ社員たちの言動に頭を悩ます昭和世代のトップやリーダーたちが私の周りで増えています。考え方や価値観が異なるので、まともにぶつかってもかみ合うはずがありません。
この問題を解決するためには、まずイマドキ社員たちの本質を知る必要があり、今回は、彼らが育ってきた背景を見てみましょう。
 
 
■イマドキ社員たちが育ってきた生活環境
 
― その①「インターネット」
イマドキ社員たちの言動にもっとも影響を与えている生活環境要因として、子どものころからインターネットが普及している環境で育ってきたことを挙げることができます。
1990年代に爆発的に普及したインターネットは、まさにゆとり世代の人にとって、もっとも身近な存在。「ネットなし」なんて想像すらできないでしょう。
面識のない相手とインターネットを通じて簡単にやり取りを行ってきましたし、年齢や地位の異なる相手に対してもインターネットを通じてフラットな接し方をしてきました。さらには、無料で簡単に情報を入手できます。こうして彼らはインターネットを通じたバーチャルな世界に自分の居場所を見つけているのです。
 
― その②「競争の経験が少ない」
イマドキ社員たちの時代は、少子化がどんどん進んでいきました。1973年に約209万人もあった出生数は、ゆとり教育が始まる1987年には134万人、1997年119万人、ゆとり教育が終わる2004年は110万人となります。ちなみに2016年には100万人を割り、昨年2018年の出生数は1899年の統計開始以来最少の92万人だったとか。 
学校教育では、競争を促すスタイルから、個を尊重し伸ばすスタイルへと変化していきました。そのことが、他人と競争して打ち勝つ経験をイマドキ社員たちから奪い、ナンバーワンよりも「オンリーワン」を重視する意識を持つことへとつながっていきました。
つまり、「他人との競争にさらされた経験が少ないイマドキ社員」を作り出したというわけです。“草食系”と呼ばれる、大人しくてガツガツしないタイプの若者にも、こうした背景があるのでしょう。
 
― その③「叱られたことが少ない」
イマドキ社員たちが育った環境に「親や学校の先生などから厳しく叱られた経験が少ない」ということも挙げられるでしょう。
これは実は親にもいえることなのです。というのは、イマドキ社員たちの親世代といえば、40歳〜50歳ぐらいが多いでしょうか。実はこの層の人たちも「新人類」などと呼ばれた世代。平等や公平を好み、打たれ弱く、仕事よりもプライベートを重視する傾向があり、結構甘やかされて育てられたりしたのです。ですから、当然自分の子にも甘いので、叱ることが少ないといえるわけです。
学校教育の場にしても、厳しくすると、やりすぎだとか叱責されます。いわゆるモスンター・ペアレントの餌食になるのを避けるためにも、生徒を叱れないのです。
そうしたことが、イマドキ社員たちを打たれ弱い人間へと育て上げ、会社で上司や先輩に叱られるとすぐに辞めてしまう│。あるいは、仕事に対して注意をしたときに、「自分的には満足しています!」と逆切れするなどといったケースもあるようです。
 

 
 
■データで見るイマドキ社員たちの言動
 
さらにイマドキ社員たちを知るために、今度は公的なアンケート調査でのデータを見てみましょう。公益財団法人日本生産性本部が、毎年春に実施している「新入社員意識調査」を吟味すると、前述した特徴が見えてきます。すると、厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況」の数字もうなずけてしまうのです。その特徴をまとめると……。

 
― 特徴Ⅰ:理想とプライドが高い
個を重んじオンリーワンを重視する環境で育ってきたため、理想やプライドの高いタイプの人間が多いようです。
取り組む仕事の内容や仕事の進め方にも、理想やプライドが高いがゆえにこだわりを持ち、主張もします。それは、Aの調査結果①④⑧に表れています。一見、「なんだ、我々と変わらないじゃないか」と思われそうですが、⑧の仕事を通じてかなえたい「夢」はあるかの「夢」が少し昭和世代と違うのです。
昭和世代の仕事を通じての「夢」といえば、バリバリ頑張っていい給料をもらい、家を建て、昇進し、安定した生活を求めるという感じでしょう。ところがイマドキ社員たちの「夢」は、出世することよりも、目の前の仕事を自分の理想とする形でこなすこと。いわゆるネット用語にある「リア充(リアじゅう:今の生活がとても充実していること)」的なことを目指しているのです。
ですから、そこへ先輩や上司が会社の理念とか、従来の仕事のやり方を押し付けようとすると「自分はそんなつもりではやらないです!」と反発し、「ここはダメだ」と辞めることになるわけです。
 
― 特徴Ⅱ:安定志向である
他人との競争にさらされた経験の少ない環境で育ってきたため、安定志向の強いタイプが多いようです。これも「我々と同じじゃないか」と思われるかもしれませんが、中身が違います。安定した暮らしを実現するためにガムシャラに働くのではなく、イマドキ社員たちは競争のない、もしくは競争がおきないという意味での平穏な安定した環境を求めているのです。
そのため、ライバルを押しのけながらのし上がっていく、というようなことに対してエネルギーを使いたがりません。そのような特徴が、Aの調査結果⑤に表れていて、出世することに価値があるとは考えていないのです。
 

 
 
― 特徴Ⅲ:根気に欠ける
周囲の大人たちから厳しくされる機会が少なく自由な環境で育ってきたため、やはり根気に欠けるタイプが多いようです。そのため、自ら創意工夫を凝らすことなく、簡単に答えを求めようとします。そのような特徴が、Aの調査結果②に表れています。
また、このような傾向が、仕事において下積みを体験するようなことを嫌うことへとつながっています。最初は雑用的なことから携わって徐々に本筋の仕事を経験させていくのが昭和世代の一般的なセオリーです。しかし「新人の仕事は雑務から」「サービス残業をしてでも目で見て覚えろ」といった感覚は、イマドキ社員たちには通用しません。
雑用を与えようものなら、「なぜ、きちんと仕事をさせてもらえないのですか?」「そういうのはパワハラです」などと主張し、サービス残業云々を言えば、「正当な権利として残業代を要求します!」と主張するのです。そして、早々に会社に見切りをつけて転職を考える│。そのような特徴が、Aの調査結果⑥⑨に表れています。
 
― 特徴Ⅳ:会社組織に馴染めない
インターネットというバーチャルな世界におけるフラットな人間関係に馴染んできたため、現実の世界での序列が存在する人間関係に馴染むことのできないタイプが多いようです。そのため、職場の人とも常に一定の距離を保ち、自分の世界を大事にしたがります。そのような特徴が、Aの調査結果③⑩に表れているといえます。
特に⑩の回答で「雰囲気・社風」が第2位になっているのは、「自分にとってしんどくない人間関係があること」を求めているからでしょう。例えば社内での飲み会だとか、社員旅行だとかを嫌います。オフタイムの付き合いは敬遠したいのです。だからなのか、チームプレーを苦手とするタイプも多いようです。そうした特徴がAの調査結果⑦に表れているといえます。
 
今回はゆとり世代に多いイマドキ社員たちの言動の背景を見てきましたが、次回はそんな彼らへの対策、扱い方を考えてみましょう。

【2019年3月号】リーダーの資質を身につける あなたは 一流のリーダーか? Part2

どんな仕事や立場にも、いわゆる一流といわれている人はいる。ならば二流や三流もいることになる。それぞれどんな特徴があって、行動をとるのだろうか。今回はコミュニケーションをテーマに、リーダー教育で数多くの実績を持つ経営コンサルタントの吉田幸弘氏にうかがってきた。


 
 
★一流のリーダーの自分の上司への振る舞いは?
 
 
■新しい案件を与えられた場合
常務直々に「K社への提案書を作成してほしい」と言われました。提案書はつい先週も作成したばかりです。
 
― 三流のリーダー
(なんでウチが?)と反発的に「先週も私のチームでしたよ。今、忙しいので他のチームにお願いできませんか」と断ってしまいます。もし逆の立場で部下に同じように断られたらどのように思いますか? 「こんな部下にはもう仕事は頼まない!」と思いますよね。評価は確実に下がりますので、テロリストのような行動と言わざるを得ません。
 
― 二流のリーダー
「わかりました。別件もあるので調整してみます」と言うリーダーもいるでしょう。自分やチームの状態を分析し、できるかどうかを慎重に考える。いわばアナリストです。常務は有無を言わずにやってほしいはずですが……。
 
― 一流のリーダー
「やります」と即答して引き受けるのが一流です。アナリストのように「自分にできるだろうか」とは考えず、「私を指名したということは、私を信頼しているからだ。その思いに応えたい」と一流のリーダーは、ナルシスト的に捉える傾向があるようです。まず「やる」と決めたら、どのようにして時間を作って新しい案件を進めていくかを考えるのです。これだと上司からは高く評価され、他にも大切な仕事を任されるようになり、出世していくことでしょう。
 
 
■上司に相談したいことがある場合
「部下が得意先とトラブルを起こした」「部下が入院して補充要員が必要」「ライバル社との相見積りのため条件の見直しが必要」等々、リーダーが自分で対応できないことも起きます。
 
― 三流のリーダー
「報告・連絡・相談は迅速に」というビジネスの鉄則に従って、すぐに上司へ相談するのは実はあまりよくありません。上司も忙しいのです。これから商談に行こうとしていたかもしれません。突然の相談には対応できないかもしれないのです。
 
― 二流のリーダー
まずは社内の共有スケジュールを見て、相談のタイミングを判断します。でもそう簡単にはいかないもの。役職が上になればなるほど予定表に明記されていない、非公開の予定は意外と多くあるものです。
 
― 一流のリーダー
事前に相談のアポイントをとるのが一流のリーダーの行動です。まずメールで「相談したい時間」「相談内容」「困っている点について」を送ります。それから在席していればメールした旨を直接伝え、離席していれば目立つところにメモを貼っておきます。これなら上司もきちんと対応するでしょうし、相談時に解決策を用意しておいてくれるかもしれません。
 

 
 
★一流のリーダーの部下とのコミュニケーション術とは?
 
 
■部下との接し方
「部下に嫌われてなんぼ」と思っている人がいます。嫌われ役だからとわざと厳しくするのです。さて、一流のリーダーは嫌われようとするでしょうか、逆に好かれようとするでしょうか。それとも……。
 
― 三流のリーダー
「嫌われ役でいい」としても、人は嫌いな人についていこうとは思わないものです。でも、嫌われる勇気が必要だと言う方もいますが、それは「嫌われる」を誤解しています。間違っていたことを注意する、あるいは叱る、部下が作成した提案書を改善してもらうこと等。これらは嫌われることではなく、リーダーとしての当然の行動です。
 
― 二流のリーダー
では逆に部下に好かれようとすればいいのか。好かれようとすると、嫌われないようにしようという気持ちが働いて「叱りたいけれど、部下の気分を害するかもしれないので黙っていよう」となります。これでは本末転倒。ほめ言葉も、おだてになって部下のモチベーションは上がりません。
 
― 一流のリーダー
「嫌われよう」「好かれよう」という考えは「自分がどのように思われているか」という視点に他なりません。部下を育てよう、チームを伸ばそうという視点に立つのが一流のリーダーです。部下を適切な行動に改善させるためには、言いにくいことも言えばいいのです。ただし、感情的にならずに、改善案をいくつか与え、部下に選択させる。そんなスタンスが一流といえるでしょう。
 
 
■仕事の頼み方
例えば部門会議でのレジュメを部下に作成してもらう場合。当然、部下もいくつかの仕事を掛け持ちでやっているはず。そこへ頼むとなると……。
 
― 三流のリーダー
「なるはやで頼むよ」。私もよく使った言葉でした。「なるべく早く」という意味ですが、これはとても危険です。人によって「なるべく早く」は今日中と捉えたり、3日後ぐらいまでならいいやと自分の都合がいいように解釈する人もいるからです。
 
― 二流のリーダー
捉え方や解釈の食い違いを防止するためにも、いつまでに仕上げてほしいのか、期限は明確に伝えましょう。その際、「今週末」とか「来週の頭あたり」、「来週の月曜日」という言い方はよくありません。リーダーは月曜の午前中にはもらえるだろうと思っていても、部下は夕方でもいいだろうと解釈しているかもしれません。「月曜日の10時」と言いましょう。
 
― 一流のリーダー
期限を設定するだけではまだ二流です。一流は、部下の仕事の総量を調整し、オーバーフローにならないようにします。つまり、「やらなくてもいい仕事」「後回しにしていい仕事」という、優先順位の逆となる「劣後順位」を明確にします。さらに、期限を「月曜日の15時からの会議だから、できれば朝の10時にほしいんだ。でもしんどかったら12時まで待つけど」と二者択一を提案し、期限を部下に決めさせるとよりいいでしょう。
 
 
■雑談について
私語厳禁という職場があります。リーダーが静かに仕事をしたいタイプであったり、能率を上げようとそうするのです。果たして私語厳禁は能率をアップさせるのでしょうか。
 
― 三流のリーダー
公式な会話しかない上下関係では本音で話し合うことは難しいでしょう。部下との距離も縮まらず、信頼関係も構築しづらくなります。しかも、静かな職場は、相談がしにくいもの。他の人に聞こえてしまうからです。それが嫌で相談するのが遅くなってしまえば、事態はさらに悪化するかもしれません。また、メンバー同士の協力や情報交換も希薄になるものです。
 
― 二流のリーダー
コミュニケーションの潤滑油としても雑談は大切です。新聞やネットニュースなどの時事ネタをストックしておけばいいでしょう。ビジネス関連のニュースをはじめ、スポーツの試合結果、芸能ニュース、音楽ランキング、天気の話、話題のグルメ店等々。
 
― 一流のリーダー
単なる雑談も一流のリーダーは部下のことを知るために使います。「夕べ、サッカーのアジアカップ予選の試合、見た?」という話題から「僕は学生のころサッカー部でね。君は何かスポーツをやるの?」と、部下が話しやすいように自己開示してから質問をするといいでしょう。
雑談を通じて部下の情報を知り、どんな考えを持っているのかを把握する。そして元気がないときなど「最近、ドライブしてる?」という質問から雑談を始め、その答え方によってどれだけストレスを抱えているかを探る。そこまでやるのが一流のリーダーなのです。
 

 
 
★一流のリーダーの社外交流は?
 
 
■仕事以外での交流
毎日のように部下たちを誘って飲みに行くリーダーがいます。社内での交流は大切ですが、それだけでいいのでしょうか。
 
― 三流のリーダー
仕事に関係のない人と交流するのは「時間がもったいない」と言う人がいます。それでは情報が入ってきません。仕事のヒントは他業種にもあるもの。違う業界ならではの知識やノウハウ、異なる視点は参考になりますし、いい刺激にもなります。
 
― 二流のリーダー
社外交流のひとつで「朝活(あさかつ)」へ出勤前に参加する人もいるでしょう。朝食をとりながら議論や読書会をしたり、また講演会があったりします。有意義な時間活用法にも思えるのですが、「朝の1時間は深夜の3時間に匹敵する」とも言われ、頭は冴えているもの。仕事を処理するのに最適の朝に、別のことをするのはもったいないように思えるのですが。
 
― 一流のリーダー
社外のセミナーや交流会、食事会は、朝よりも夜に参加するほうがいいでしょう。社外の人と会う場合、遅れると恥ずかしいので、締め切り効果が出てその日の仕事は効率よくこなすもの。また、頭がよく働く朝は、外国語を勉強したり、ビジネス書を読んだり、インプットの時間にあてるのが一流のリーダーの朝の使い方です。
 
 
★一流のリーダーの問題解決法は?
 
 
■メンバー間の対立にどのように対処するか
チーム内の雰囲気が悪くなっています。原因は2人の中心メンバーが対立。このままではチームの運営に大きな支障をきたします。
 
― 三流のリーダー
当該の2人を別々に呼び出して注意するのはNGです。また、立場の弱いほうにつくのもNGです。違う態度で対応すれば、いつしか「人によって態度が違う」という噂が立ってしまいます。リーダーは公平な視点と態度が大切なので、別々に呼ぶのは避けましょう。
 
― 二流のリーダー
2人一緒に会議室に呼び出しましょう。例えば次のように言ってみます。「Aくんはいつもお得意さんの面倒をよくみてもらって助かるよ」
「Bくんは積極的に新規開拓してくれるから次年度の計画も立てやすくて助かるよ」
これらはリーダーの「私(I)」を主語にした自分の気持ちや感じたことを伝える「Iメッセージ」を使ったほめ言葉です。さらにこの後「今、チームはいい感じだから、さらに2人の力が合わされば、この事業部では抜きん出た強力なチームになれると思うんだ。だから、力を貸してほしい」
呼び出して和解させても一時的なもので時間が立てばまた対立するものです。
 
― 一流のリーダー
先の二流のリーダーの行動で十分ですが、一流はもうワン・アクションがあります。リーダーを含めた3人でミーティングするようにしたり、プロジェクトをつくったり、対立する2人を組ませて仕事をさせるのです。対立の原因は、コミュニケーション不足が多いので、会話する場を設け、2人がお互いを知る機会をたくさんつくれば、対立はたいていの場合、解消するものです。これこそ、一流と呼ばれるにふさわしいリーダーの問題解決法といえます。
 
 
※参考:吉田幸弘著『リーダーの一流、二流、三流』(明日香出版社)

【2019年1・2月号】リーダーの資質を身につける あなたは 一流のリーダーか? Part1

どんな仕事や立場にも、いわゆる一流といわれている人はいる。ならば二流や三流もいることになる。それぞれどんな特徴があって、行動をとるのだろうか。リーダー教育で数多くの実績を持つ経営コンサルタントの吉田幸弘氏に、一流、二流、三流のリーダーについてうかがってきた。


 
★一流のリーダーの「スタンス」は?
 
 
■部下に対する考え方
 
― 三流のリーダー
ほとんど褒めずに、叱ってばかりいるリーダーがいます。そんなリーダーの部下は「提案や意見を言っても、どうせ受け入れてもらえない」と考え、言われたことしかしない人になってしまい、部下は育ちません。
 
― 二流のリーダー
部下が仕事を楽しめるように仕向ける人はリーダーとしてのいい資質を持っているでしょう。仕事が楽しくなればどんどん自発的になります。優れたリーダーは、部下に成功体験を味わってもらったり、仕事のアイデアを出し合う会議を開いたりといった工夫を考えるのです。
 
― 一流のリーダー
先の二流でも素晴らしいリーダーなのですが、一流はもっと先のことを考えます。「部下の成長を重視する」ことです。部下の力が80だとすると、130の仕事は辛いので110ぐらいの少し負荷をかけた仕事を与え、挑戦意欲をかき立てるのです。部下に少し上の仕事をさせるのが一流のリーダーといえます。
 
 
■理想のリーダー像とは?
 
― 三流のリーダー
威厳があるのが理想のリーダーだと思っている人です。部下になめられてはいけないと、威圧感を出してもリーダーとしての力不足は部下にすぐに見破られてしまいます。
 
― 二流のリーダー
指示をどんどん出して、「俺についてこい」という統率力のあるリーダー。威張らなければ、それはそれでいいでしょう。でも、部下は自ら考えて能動的に動くことが大切なので、このリーダーのもとでは部下は、リーダーの力量以上の力を出すことはできないでしょう。
 
― 一流のリーダー
共感を呼ぶリーダーは一流です。例えば落ち込んだ部下には「大変だったよな」と部下の気持ちに寄り添い、時には自分の失敗談を話します。人は成功談よりも失敗談のほうに共感するものです。そんなリーダーなら相談もしやすいはず。そして「つべこべ言わずにやれ」などと理不尽な言い方はせず、その仕事をする理由を明確に説明できるリーダーは一流です。
 
 
 
★一流のリーダーの「仕事の進め方」は?
 
 
■苦手な仕事や新しい仕事の場合
 
― 三流のリーダー
苦手な仕事を我慢して取り組むようなリーダーではいけません。我慢し続けるとただ苦痛になるだけですから。
 
― 二流のリーダー
できるリーダーは、得意な仕事と組み合わせながら進めていきます。例えば、30分苦手な事務処理をしたら、お得意様に電話してみたり、メールをチェックしてみたりという具合に苦手と得意を組み合わせます。また、新しい仕事を一つの「かたまり」と思いがちなので、仕事を細かい作業に分割してみると、気持ちが楽になることもあります。
 
― 一流のリーダー
一流のリーダーは楽をする人です。どういうことかと言いますと、上司や先輩をはじめ、時には部下が持つ知識や情報を借りて利用します。つまり「集合知」を上手に使うのです。例えば経営会議に提出する報告書なら、上司にどのように作っているのかを見せてもらいます。いちいちフォーマットを作成する時間はもったいなく、それは単なる作業。生産性はありません。作業に時間をかけず、価値を生むことに注力するのが一流のリーダーです。
 
 
■「目標設定」の立て方
 
― 三流のリーダー
「わが事業部の今期の目標は前年1割アップの1億円! 必ず達成しよう!」と数字の目標だけを掲げ、結果のみ、経過を見ないリーダーがいます。これでは部下もやる気は出てきませんし、やみくもに売上を追いかけても結果は出ないでしょう。
 
― 二流のリーダー
達成するための「途中経過」はとても大切です。できるリーダーは各プロセスの目標を設定します。四半期2500万円を達成するために既存客からは1000万円ずつ増やし、新規を5件獲得する、というような設定です。ただ、もし途中の目標が達成できなかったとき、その要因を分析して解決策を指示できないのならまだ二流と言わざるをえません。
 
― 一流のリーダー
一流のリーダーなら、達成できない要因を分析し、次は達成できるように行動も細かく設定します。「見込み客を100件ピックアップして電話でアポイントを申し込む」「既存客300件に新商品を案内するDMを送る」「企画書を30件書く」とか。電話や書くことはきちんと取り組めば確実にできることです。そうした細かな設定は、たとえ小さなことでもやり遂げれば、部下は成功体験を味わうことができます。
また、プロセスを分解してみましょう。どこがいけなかったのか。何につまずいたのか。アポイントが取れて面談できても見積りが出せないとか。見積りが出せても契約に至らないとか。それならクロージングを強めるためにベテランと二人で訪問させるといった対策が立てられます。そしてたまたま新規が獲得できた。達成できた。というのもそのままにしておくのではなく、貴重な成功体験としてその要因や経過は分析しておきます。
 
 
 
★一流のリーダーの「部下育成」は?
 
 
■部下の仕事に対しては?
 
― 三流のリーダー
知識も経験もない別部門に配属された新リーダーを想定してみましょう。よくあるのが今さら最初から仕事を学ぶより、これまでの管理経験を活かして効率的にやっていこうという方法です。その場合、自分より知識がある部下に仕事の内容を聞こうとしない、部下がどんな仕事をしているのか知ろうとしない人がよくいます。それでは部下との信頼関係は築けませんし、新しいチームで成果を上げる仕組みも作ることはできません。
 
― 二流のリーダー
新しい部門で、積極的に部下に質問し、部下の仕事内容を理解することはリーダーとしては当然です。中には知識もスキルも部下に負けないように頑張るリーダーがいますが、それはリーダーのすることではありません。競い合えば、リーダーはプレイヤーになってしまい、本来の仕事であるマネジメントができなくなるからです。
 
― 一流のリーダー
リーダーの仕事は、部下に負けないように頑張るのではなく、サポートにまわって部下ができることはどんどん任せてしまうことです。そうすれば部下へのリスペクトにもなり、信頼関係も築きやすくなります。そして、部下が担当する仕事はどこにつながるのか、誰の役に立つのかをきちんと把握し、部下よりも一歩高い視点で俯瞰的に業務の全体像をつかむ。これが一流のリーダーの仕事です。
 
 
■部下の戦力化について
 
― 三流のリーダー
部下が早く戦力となるよう、ひっきりなしに指示を出す人がいます。いつの間にか雑用まで与えてしまい、自分の手足のように使ってしまっています。これでは部下のモチベーションは上がりません。
 
― 二流のリーダー
部下はアシスタントではありません。フラットな関係の「パートナー」と位置付ければ、モチベーションも上がり、部下は建設的な意見を出しやすくなって、積極的に行動をとるはずです。そうなれば結果も出せて業績も上がることでしょう。しかし、これでもリーダーの役割を果たしているとはまだ言えないのです。
 
― 一流のリーダー
リーダーは部下を成長させなければなりません。それは上から指導する教育と少し違って、サポート役にまわるのがリーダーであり、主役は部下なのです。何が得意で何が苦手かを知り、強みを見つけて活かせるようにサポートする。つまり、一流のリーダーは、部下を「タレント」と考え、自分は「プロデューサー」になるような人だといえます。
 

 
★一流のリーダーの「チームづくり」とは?
 
 
■権限移譲はこうする
 
― 三流のリーダー
「部下が指示待ち人間になって困る」と悩むリーダーは多いようです。でもこれはリーダーの責任ともいえ、指示を細かく出しすぎなのかもしれません。「メールを送る前に下書きを見せて」「12時前には送るように」「15時になってもメールの返信がなければ電話して」など。とどめは、指示以外のことをやった場合、「指示したことだけをやりなさい」と言う。これは完全にアウト。部下は言われたことだけしかやらなくなります。
 
― 二流のリーダー
「この部分は君がやって」と自由にできる余地を与えましょう。ただ、自由だからと適当にやる部下もいます。さて、一流のリーダーならどうするでしょうか。
 
― 一流のリーダー
自由とともに「責任」も与えます。ただし全ての責任を負わせるのではありません。責任には、「遂行責任」「報告責任」「結果責任」の3つがあります。部下には「遂行責任」と「報告責任」を与えるのです。これなら途中で投げ出すことも少なく、やり切ることでしょう。「結果責任」はリーダーが負います。そうすれば部下は、きちんと報告し、最後まで遂行すれば、たとえうまくいかなくてもリーダーが責任をとってくれるから安心して取り組めるというものです。
 
 
■チームでの仕事の配分について
 
― 三流のリーダー
仕事ができる部下には、いくつもの仕事が集中し、忙しくなります。そんな部下は、誰よりも早く出社し、夜も遅くまで頑張っているものです。リーダーも少し気にしつつも、よくできるのでついまた仕事を任せてしまう。すると、ある日突然、辞表を出してきた……。私の苦い経験のひとつです。
 
― 二流のリーダー
自分はこんなに頑張っているのに給料は上がらないし、他の人と同じなんておかしい。当然、そう思うでしょう。やはり、仕事の配分は平等にすべきなのです。
 
― 一流のリーダー
平等にしても、例えばよくできる営業マンなら、顧客を増やし、業績も上げるので、事務処理などの仕事も増えて忙しくなるもの。そんな場合、仕事を減らしたり、やめることを検討しましょう。例えば「記入項目がやたらと多い日報」「定期的に作成しているがほとんど誰も見ないデータ」等です。また急ぎの依頼の中にもそんなに急がないでいいものもあるはず。そこで一流のリーダーなら次のように考えます。
・この仕事をやらない場合の不利益は何か
・頻度を減らすことはできないだろうか
・既存の何かでカバーできないだろうか
・アウトソーシングできないだろうか
仕事を減らし、もっと楽で効果のある仕組みをつくる人こそ一流と呼ばれるにふさわしいリーダーなのです。
 
 
※参考:吉田幸弘著『リーダーの一流、二流、三流』(明日香出版社)

【2018年12月号】ドラッカーの「生態的ニッチ」を活かせ!「こだわり」で 小さな企業でも 独占市場をつくる!

ドラッカー理論を活かし、「生態的ニッチ」にこだわっていけば、小さな企業、小さな事業部門でも、独占市場がつくれると、経営コンサルタントの藤屋伸二氏は話す。どのように“こだわり”をもって取り組んでいけばいいのだろうか、うかがってきた。


 
「いろんな人に買ってほしい」ではダメ
 
私は、ドラッカー理論を駆使して「ニッチ戦略」をコンセプトにコンサルティングをしていますが、そもそも「ニッチ」とは「隙間」と思っておられる方が多いと思います。実はこれは生物学用語であり、「巣」という意味があります。ある生物種が生息している特別な環境。安心で安全、独占できる空間のことをニッチというのです。つまり、独占できる環境をつくることがニッチ戦略といえます。
だから、中小企業は、「みんなに買ってほしい」と思ってはいけません。
情報の単位をゼタバイト(ZB)と言い、2の70乗だそうです。世界中の砂浜にある砂の数が1ZB。
今発信される情報量は、世界中の砂浜にある砂の数倍という途方もない量になっています。自社のホームページをつくって発信しても、それは一粒の砂ですから、ターゲットとなる消費者にはほとんど届きません。ですから、いろんな人に買ってほしいのではなく、どんな人に買ってほしいのか明確にしないと、対象となるお客様には辿り着かないのです。こうしたことを前提に、小さな企業でも独占市場をつくりだす「こだわり」のニッチ戦略(ペルソナイズ戦略)を考えていきましょう。
 
 
①事業目的にこだわる
 
ネットで検索した場合、92%の人が検索結果の1ページ目で終了してしまうそうです。2ページ目以降はほとんど見てもらえない。つまり、検索キーワードを絞り込まなければなりません。
例えば「ラーメン」だけではまず1ページ目には載りません。事業目的をもっと絞り込んで明確にするのです。ラーメン、とんこつ、渋谷ぐらいまで必要でしょう。これならライバルもぐっと少なくなるはず。これが「生態的ニッチ」なのです。しかも、「辛い」とか「大盛り」もキーワードにすればさらに絞り込まれます。それで、1日に300人も来ればOKでしょう。そうなれば、“大盛りのとんこつラーメンを食べられる店”として渋谷で「独占市場」をつくることも可能なわけです。チェーン店の場合は「渋谷」を変えればいいのです。
1つのホームページで全てのニーズにヒットするなんてあり得ません。ですから、事業目的にこだわって、絞り込むことです。
 
 
②戦略目標の達成にこだわる
 
事業目的を明確にしたのなら、次はゴールを明確にしましょう。
例えば来年の8月中旬にみんなで富士山山頂に登るので、それまでに資金を蓄え、体力をつけておくように。これだと目標が明確ですよね。5合目なら行ける人とか、来年あたり登りましょうとか、それではチームの足並みは揃いません。それには戦略目標にこだわった明確さが必要です。
よくあるのがスローガンを目標にする場合で、これだと精神論で終わってしまい、絵に描いた餅になってしまいます。工程まで、ロードマップにまで落とし込みましょう。
 
 
③自社の強みにこだわる
 
自社の強みこそが、実はお客様満足につながります。精密につくるとか、早くつくるとか。ただ、自社の強みってなかなか分からないものです。
例えば私が主催する「藤屋式ニッチ戦略塾」で、ある建築士の塾生は、6種類のCADを使いこなせました。6種類も使えるのでさまざまなオーダーに柔軟に対応できるのです。彼はそのことは当たり前のことで強みだとは思っていませんでした。
当たり前のことが強みであることはよくありますが、自分では気付いていない。だから、「お客様に聞け」とはよく言いますよね。強みをベースにしないと事業というのは成り立ちません。
 
 
④市場の独占にこだわる
 
ライバルがいると、必ず価格競争となるので、価格競争は避けなければいけません。それには特定の市場をつくることにこだわることです。木村秋則氏の「奇跡のリンゴ」は、4年待ちといいます。苦労して、奥さんのために育てたというストーリー。消費者はリンゴが食べたいというのではなく、「木村さんのリンゴ」が食べたいのです。独占市場になっています。そこには価格競争はなく、4年待っても食べてもらえるのです。大企業でなくても、独占市場はつくれるといえます。
 
 
⑤顧客のファン化・信者化にこだわる
 
独占市場をつくるには、ファンクラブをつくるような顧客のファン化・信者化を目指します。それには次のようなことにこだわってみましょう。
 
◎商品の品質にこだわる
先の木村氏の場合、奥さんが農薬で病気になってしまったので、無農薬でつくることにこだわりました。つまり、無農薬栽培という品質にこだわったのです。
一方で、品質を変えていくのも、ニッチ戦略です。例えば会計ソフトの分野。いろんな企業が、安くて簡単で便利なソフトを売り出してしのぎを削っています。これまで「使いやすさ」でしたが、そこへ「業績を上げる会計ソフト」となると全く違う展開が見られます。つまり、この業界のこの分野ではこの会計ソフトという絞り込みです。そうなると競争相手もガラッと変わってきます。もしかしたら特定の分野なら独占できるかもしれません。
 
◎提供方法にこだわる
数量限定とか、期間限定、会員様限定といった、提供方法にこだわるのもファンをつくることになります。特製ラーメン限定20杯! とか。会員様だけの特別サービス、特別価格とか。好例だなと思ったのはサントリーのハイボールのコマーシャルです。「ウイスキーと炭酸を1:3で割って」と作り方をコマーシャルで流すのも、提供方法の一つ。自社だけの提供の仕方を考えてみましょう。
 
◎ストーリーにこだわる
提供するのに、ストーリー性があるとよりいいでしょう。何年も寝かせたウイスキーというのもストーリーがあります。「奇跡のリンゴ」なんて、映画にもなった感動ストーリーがありました。
 
◎流通経路にこだわる
流通経路にもこだわってみるのも、魅力度アップとなります。あそこのお店しか手に入らないとか。どこそこの地域でしか売っていないとか。また、オリジナル商品はこのお店だけとか。PB(プライベートブランド)なんてまさしくそうです。
 

 
 
⑥ブランディングにこだわる
 
次はブランディングです。今大人気のインスタもブランディングの一つです。見た目の良さというブランディングといえます。究極は、「○○と言えば、★★」です。例えば、「テレビゲームと言えば、任天堂」とか、「コーヒーを飲むならスタバ(スターバックスコーヒー)」など。
また、あなたの会社や事業、商品に「お、ねだん以上。ニトリ」のようなキャッチコピーはありますか? キャッチコピーがあれば次の⑦の情報提供も取り組みやすくなります。
 
 
⑦情報発信にこだわる
 
以前はいいモノをつくれば売れたのですが、今は情報が溢れ、知ってもらわないと売れないのでどんどん情報発信する必要があります。それについては今最高の方法は、YouTubeです。
YouTubeを利用して情報を発信している企業はまだ少ないようです。音楽やスポーツを見るだけだと思われているかもしれません。私もYouTubeで動画をどんどんアップしています。これはSEO対策※にもなっており、YouTubeで「ニッチ戦略」で検索すると1番目から4番目ぐらいまで私の動画が独占しています。また、そのSEO対策セミナーのサイトはごまんとある中で、私とWEB戦略で提携している高橋真樹氏のサイトはトップで表示されるのも彼がYouTubeで発信しているからです。
 
※SEO(Search Engine Optimization)対策:検索エンジン最適化という意味で、検索結果で自社サイトが上位表示されるようにする対策のこと。
 
チャンネル登録数が500を超えると問い合わせが増えてきて仕事にも好影響が出てくると言われており、高橋氏は4700を超えているので、街中でも「YouTubeで見た高橋さんですか?」と声を掛けられるそうです。みんなのスターになる必要はありません。特定のスターになればいいのです。
また、情報発信の大原則といいますか、ルールがあります。それは「技術自慢」「商品自慢」「自社自慢」はNGです。お客様の「満足」「成功」「幸せ」にした状況を発信しましょう。自社の商品やサービスを使っていただいて幸せになりますと伝える。するとお客様は自分も幸せになりたいと思って購入するのです。「奇跡のリンゴ」で幸せになった奥さんのストーリーに感動と共感を抱き、それでオーダーするわけです。自社自慢に対しては感動も共感もありません。
情報発信には共感を呼ぶものでないと。そのためにはストーリーが必要です。そのストーリーも、「こんなに努力をしました」ではなく、「このように使って幸せになりました」という内容がポイントになります。
 
こうして①から⑦のこだわりを、ところどころ取り組んでいる企業はありますが、点と点で、線になっていません。例えば③が抜けるとそこで途絶えてしまいます。④が弱いとか、⑥は少し自信がないという項目があっても構いません。一つの流れとして①から⑦まで全てを取り組めば、ニッチ戦略の独占市場をつくるというゴールが見えてくるはずです。
 

【2018年11月号】社員のコミュニケーションを良くすれば 品質も改善される

「経営コンサルタントに、指導してもらう」。つまり、コンサルティングを受けるとは実際どのようなものなのだろうか。今回は「組織の活性化」に取り組んだ事例を、人間力を支援する組織開発コンサルタントの鳥澤謙一郎氏と当該のチームリーダーだったK氏に話をうかがった。


 
ワークショップはファシリテーターの人柄で決まる
 
― 鳥澤氏
私とKさんの会社との最初のお付き合いは、10年ほど前でした。「社員を元気にしよう」というプロジェクトに参加していた知人の紹介で、一人のファシリテーター※1としてお手伝いをさせていただきました。私が行ったワークショップでは5人1組で真ん中にリーダーを置き、他の4人は目を閉じて手をつないで囲みます。8mほど離れたゴールまでリーダーの指示だけでたどり着くのです。
これはチームとして動くことの難しさ、コミュニケーションの難しさを知るもので、「目隠しUFO」と呼んでいます。これがメンバーの素の行動特性が出て、分かり、とても楽しかったようで、その中にKさんの上司がおられて、私のことをずっと覚えていてくださいました。
 
― K氏
一方で私は2013年ごろ、たまたま知人に誘われて鳥澤さんのDC(Diversity Communication〔ダイバーシティー・コミュニケーション〕)塾というセミナーに参加したことがありました。鳥澤さんが弊社でワークショップを行ったことは知りませんでした。先の目隠しUFOのようなコミュニケーション支援を図る内容で、これを会社でやったら面白いだろうなと思っていました。
でも何よりも鳥澤さんの人柄が良かった。いろいろなワークショップがありますが、組織課題にマッチしたキャラクターを持つファシリテーターを選ばないと、そのワークショップが生きてきません。私自身もワークショップを開催しますので、一緒にワークショップのコンテンツを考えたことは、とても勉強になったのを覚えています。
 
※1 ファシリテーター/グループ活動が円滑に行われるようにする支援者のこと。
 
 
品質改善には社員間のコミュニケーションも必要
 
― 鳥澤氏
DC塾の後、再びお会いしたのは2年ほどしてから。2016年4月に連絡をいただきました。
 
― K氏
上司から「組織をなんとかしたい」と相談を受けました。私も同感でした。というのは当時、品質の問題で顧客クレームが頻繁にありました。その要因を探っていくとスキルの問題などいろいろある中で、考え方の行き違いなど「社員間のコミュニケーション不足」が要因の1つとして浮き彫りになりました。
私が主導して取り組んでも良かったのですが、外部の人のほうがいいのではということで、上司が挙げたコンサルティング候補の中に鳥澤さんの名前が入っていたのです。驚くとともに鳥澤さんのキャラクターが必要だと感じて、即、鳥澤さんにお願いしようと進言しました。
 
― 鳥澤氏
Kさんとの打ち合わせでは、あくまでも最終目標は「品質改善」であり、その対策の1つとして縦割り組織の中でいかに横のつながりをスムーズにしていくかでした。
 
― K氏
私たちの仕事は、役割を分担してしまうと、あとは社内の人とコミュニケーションをとる必要がそんなにありません。パソコンを相手にすることが多く、隣の人と会話することも少ない。確かになんとかしないといけない課題といえました。
 
 
▶セッション第1回目
問題の要因を明らかにし、ゲームを通して「気付き」を促す
 
― K氏
第1回目のセッションは2016年6月。まずはコミュニケーション不足の現状を知ってもらうために例の「目隠しUFO」を行いました。このときは新聞を広げて真ん中をくり抜き、そこにリーダーが入り、メンバーは新聞の4隅を持ちます。リーダーがゴールに向かって右、左と言って指示するのは同じです。
リーダーが「右」と言っても、新聞を持つ人はそれぞれ違う方向なので、自分のことだけでなく他のメンバーの位置も考えなくてはいけません。単純なゲームですが、相手の立場になって考える必要がありますから、なかなか難しいのです。
 
― 鳥澤氏
制限は5分以内で。破れたらやり直しです。限られた時間内で破らずにゴールという結果を出さなければならない。まさに仕事と同じです。納期というゴールに向かって、チーム一体となってコミュニケーションをとらないと達成できません。
 
― K氏
ゲームを行う前に、「品質改善」のための課題や、何がクレームの要因になっているのかということを付箋に書いて白板に貼り、改善点を明らかにしておきました。その改善点の1つにコミュニケーション不足がある。だからこの目隠しUFOで、「相手の気持ちになって行動することが大切だ」と、それぞれが気付く。というストーリーは、事前に鳥澤さんとそうなるように考えていました。
 
 
▶セッション第2回目
自己開示で、本来の自分の気持ちに気付く
 
― K氏
セッションの終わりに全員に行動目標を書いてもらいます。次回に向けての自分への宿題です。1回目はまだ最終テーマの「品質改善」にフォーカスしたセッションだったので、“お客様の期待に応えるための行動目標は?”という仕事寄りの設問でした。「お客様の期待を上回る提案をすること」「お客様の話をよく聞くこと」といった内容を書いている参加者がいました。
 
― 鳥澤氏
1回目の目隠しUFOを通じてコミュニケーションの大切さに気付いた人もいました。それで、2回目はコミュニケーションに大切な「自己開示」を行いました。
言いたいことが言える関係性を育むことを目標に、良いときもあれば、悪いときもあったという自分史を語ります。いわゆる「人生曲線」です。
 
― K氏
いきなり“語れ”と言われても無理です。これもゲーム性があったほうが取り組みやすいので数字や風景が描かれたカードをめくって、出た絵柄に合わせて自分史を話していくのです。
 
― 鳥澤氏
とはいえ、自分のことを語るのは苦手な人もいて、このワークショップに参加するのが辛いと話される方も。もちろん無理強いはしません。辛いことがわかる。それもまた自分を知ることになりますから。
 
― K氏
2回目の行動目標の設問は「自分が仕事で大切にしたい行動は?」で、1回目より、より内面にフォーカスした問いにしました。参加者は「お客様の期待に応えるために“早さ”を大切にしたい」「お客様に感謝を持って接すること」などと書いています。なぜ「感謝」という言葉が出てきたのかという理由も書いてあって、「これまで“感謝”という気持ちを持っていなかったから」とのことでした。
 
― 鳥澤氏
2回目ともなると日本人らしいというか、「感謝」という言葉が出てきましたね。本当はそういう思いを持っていたのに、自分でも気付かなかったのかもしれません。
 
 
▶セッション第3回目
自己開示をさらに深め、感情で思いの背景を知る
 
― K氏
セッションは3カ月ごとに行われたので3回目は12月でした。1年間の喜怒哀楽を「振り返りシート」に書いてもらいました。2回目の自己開示をさらに深めた形で、その年、一番心に響いた出来事についての自己開示です。
 
― 鳥澤氏
単に出来事を思い起こすだけでなく、そのときにどう思ったのか、どのように感じたのか。感情面をフォーカスして自己開示していきます。これを4〜5人のグループで行い、「あのときはこのように感じた」と話すだけでなく、それを聞いた人たちもどう思ったのか。そういう対話も行いました。
 
― K氏
話しづらい人もいますので、話しやすい状態を作るためにもアイスブレイク※2なんかが必要ですね。ただ、ワークショップそのものは明るく陽気に行いますので3回目ともなると、自分を出すことに慣れてきます。1回につき3時間ほどですが、あっという間に過ぎます。
 
― 鳥澤氏
このセッションは「感情を表す」ことですが、エンジニアたちは普段、感情を表すようなことはあまりないことでしょう。でもコミュニケーションを図る上で、感情は相手の思いの背景を知ることができます。何故怒っているのか、喜んでいるのか、感情を通してわかってきます。
 
― K氏
振り返りシートには、仕事のことばかり書く人もいれば、プライベートを大切にしたいという思いを書く人もいます。どちらが良い悪いではなく、その思いが素直に出せるかどうかなんでしょうね。このときの行動目標は「自分の仕事で大切にしたい喜怒哀楽とは?」でした。書いてきたことは「楽しく仕事をしたい」「日々笑う」が印象的でした。
 
※2 アイスブレイク/ワークショップなどで、初対面同士の緊張をときほぐすための手法(簡単なゲームや自己紹介などを行う)。
 
 
▶セッション第4回目
組織の目標と自分の目標
 
― K氏
4回目は2017年の5月。毎年、部長が新年度の組織運営や事業目標といった部の方針を説明します。それをきちんと理解しているのかどうか、本来の目標であった「品質改善」に向けてストレートに投げかけてみました。
 
― 鳥澤氏
アイスブレイクとして方針内容の虫食いテストを行いましたが、残念ながら皆さん、聞いていないことがわかりましたね(笑)。聞いていなかった自分に気付く。それでいいかと思います。部長に報告すると「ちゃんと言いましたよ。伝わってなかったのかな?」と(笑)。
 
― K氏
4回目の本題は、部長の方針説明で印象に残っていること、組織でチャレンジしていくこと、その中で自分が大切にしていきたい価値観は何? ということでした。つまり、組織の目標はこうだけれど、それに対する自分の目標は何? ということを書いてもらいました。
 
― 鳥澤氏
組織の目標を達成するには、自分の目標と価値観がわかっていることが大切です。
 
― K氏
毎年各自の年度目標は立ててきましたが、自己開示を経て内面を掘り下げてきたので、2017年度は少し変化がありました。人ごとではなく、自分と会社の関係性で見る視点が芽生えていました。

 
 
関係性が進むと助け合いが始まって、品質改善にもつながる
 
― 鳥澤氏
他の変化として、クレーム件数も減ったんですよね。
 
― K氏
そうです。そして大きな変化として「助け合い」が始まりました。「大丈夫? 何か手伝おうか?」と声を掛け合うようになりました。その逆で「ちょっと大変なんだけど」と言うのも自己開示の影響かもしれません。
 
― 鳥澤氏
自己開示がないと他者理解も難しいものです。何よりもヘルプが言えるのはいいですよね。問題を抱え込まない。そして助け合ってみんなで品質を上げていく。それがゴールでもありました。
 
― K氏
コミュニケーションも進むと、気付きが広がっていきます。「ここ、危ないんじゃないの?」と気付いてすぐに言い合えるようになりました。
 
― 鳥澤氏
コミュニケーションがいいとミスがあってもすぐに報告し、素早く対応できるので品質は上がります。ミスがあったときにそれぞれが当事者意識で捉え、協力し合えるチームは理想的です。
 
― K氏
ミスがあっても「それは俺じゃないし」「じゃお先に」なんて、そんな職場って、辛いですよ(笑)。
 
― 鳥澤氏
関係性が低いと感情、本心を隠すのでゴールを目指しても組織として機能しません。
 
― K氏
ワークショップでそんなに変わるかなという懐疑的な声もありましたが、回が進むにつれ、クレーム件数は減っていきました。あれから人員も入れ替わりましたが、あのワークショップを受けた社員たちはそれぞれ自己開示をしながら、今も関係性を築いています。