エスカイヤクラブ
会員様専用ページ

ビジネスアイ

Member deals

【2018年7-8月号】接客をレベルアップさせる10の心理学テクニック

ニュース

あらゆるビジネスの共通項、それはクライアントが「人」であるということだ。となると、買う、買わないは心の動きに他ならないわけで、心理を巧みにつかめば、売上はアップするはず。そこで今回は、「ビジネス心理学講師」として全国で年間100以上の講演をこなす経営コンサルタントの酒井とし夫氏にビジネス現場ですぐに役立つ心理テクニックについてうかがった。


 
Technique 1
◆小さな依頼を承諾してもらうと、次も承諾されやすい
 
初歩的なセールステクニック「foot in the door」をご存じでしょうか。これは「最初から大きな依頼をするよりも、小さな依頼の承諾を得れば、次は最初よりも大きな依頼であっても承諾されやすい」という心理をうまく使ったものです。
「foot in the door」は文字通り、「足先」をドアに入れること。訪問した際、少しでもドアを開けてくれたなら、サッとその隙間に足先を入れる。いわゆる足掛かりを得たということです。
お店の店頭に割引商品や特価商品など、安価な小物が並べられているのもこれです。安い商品で惹き付けて、店内の奥の高額商品のコーナーまで誘導することになります。
逆に言えば、予め小さな承諾を得られそうな商品やサービスを用意し、段階的に提案していく。つまり、小→中→大と勧めていくテクニックです。
 
 
Technique 2
◆簡単な要求を承諾すると、次の要求は断りにくくなる
 
前述のテクニックと似ている「low‒ball technique」という承諾を得やすくする説得法も紹介しましょう。これは、最初に相手が受け入れやすい条件で承諾を得れば、その後はネガティブな条件でも受け入れやすいというもの。社会心理学者のロバート・B・チャルディーニの有名な実験で、「朝7時から心理学の実験に協力してください」と大学生に伝えると、承諾したのは31%でした。次に「心理学の実験に協力してください」と伝えて承諾してもらった後、「実験は朝7時からスタートします」とお願いしても、早朝なのに56%の学生が承諾したのです。
例えばこれをPOP広告に生かすなら、
A「デジタルカメラ50%オフ! ただし、展示品につ  きキズあり」
B「キズありデジタルカメラ50%オフ!」
であれば、Aのほうが注目されるでしょう。
人の心理を考慮すると最初に投げるのは好条件なロー・ボールのほうが効果的なのです。
 
 
Technique 3
◆選択肢を3つにすると人は真ん中を選ぶ
 
次は簡単な客単価アップ法です。例えばランチメニュー。
A…日替わり 680円
B…日替わり+コーヒー+デザート 1000円
とあれば、比較が簡単なのでAを「安い」と感じて選ぶ人が多いでしょう。お店としてはBを選んでほしい。そんな場合は、もう一つ選択肢を増やせばいいのです。
A…日替わり 680円
B…日替わり+コーヒー+デザート 1000円
C…日替わり+サラダ+コーヒー+デザート
1300円
こうすれば、Bの1000円が相対的に安く感じ、三者択一にすると真ん中が選ばれがちになるのでBをオーダーする人も出てくるでしょう。
また、人は基準価格より2割以上の高低があると「高い」「安い」と感じるものです。そこでBの1000円で売りたいなら、Aを850円ぐらいにして、割安なことによるお得感を感じさせない価格にするというテクニックもあります。
 
 
Technique 4
◆買うと決めた瞬間こそ、財布のヒモが緩むとき
 
次も客単価アップ法の一つです。特急電車に乗ったときです。私はコーヒーが飲みたくなり、ワゴン販売の女性に声をかけると、「ありがとうございます。ホットコーヒーですね」とその女性は笑顔で答え、「お得な大きいサイズと普通のサイズがございますが、どちらがよろしいですか?」と目の前に2つのカップを出してきました。
私は「お得な」というトークに惹かれて「大きいサイズ」を注文しました。このように、求めていたものより上位のものを勧めるテクニックを「up‒sell」といい、客単価を上げる方法の一つです。
そして、支払いをしようとしたとき、「ご一緒に出来立てのおいしいパウンドケーキはいかがですか?」と絶妙のタイミングで勧めるのです。私はそのパウンドケーキも買いました。
人は買い物を決めるまでは、財布のヒモは固いものですが、買うと決めた瞬間こそ、財布のヒモが緩むのです。つまり、客単価を上げる最も効果的なタイミングは、購入するまさにその瞬間だといえます。
私がコーヒーを買ったその瞬間にパウンドケーキを勧めましたが、関連するものを組み合わせて勧めることを「cross‒sell」といいます。次に提案する商品やサービスを準備しておきましょう。
 
 
Technique 5
◆相手に望むことを告げると、そのことを意識した行動をとる
 
「君って、細かいことを気にしすぎだね」と言われると、その人は自分のことを神経質な人間だと感じるようになります。これを心理学では「labeling(ラベリング)」といい、ラベルを貼られると人は、そのラベルのとおりに行動をとるようになります。
これをビジネスの現場でも生かせばいいのです。例えば「御社のような人材育成に真剣な会社は初めてです」と。すると相手はそれらしく振る舞いをしなくてはいけないかも、と思います。そこへ、社員教育をサポートするような商品やサービスの提案を行うと交渉もスムーズに運ぶというわけです。
「お客様はお目が高い!」と定員に言われて、その商品を選んだ自分に自信をもつようになるのもラベリングです。相手に気持ちよく動いてもらう心理テクニックといえます。

 
 
Technique 6
◆魔法の言葉1「あなただけは特別です」
 
ある男性が3人の女性にデートを申し込むという心理学の実験があります。
A子さん「OK、いいわよ」
B子さん「予定があるの。でも、あなたとのデートなら何とかするわ」
C子さん「予定があるからダメです」
被験者が最も好感を抱いたのはB子さんです。最初は断られて男性はデートしたい欲求を抑えなくてはなりません。ところが次の瞬間に「OK」が出たことで溜まった欲求が一挙に放出。この瞬間に人は快感を覚えるのです。
この心理をビジネスに生かすと、
客「今週中に納品できないだろうか?」
私「それは厳しいですね。でも、山下さんの頼みとなれば、なんとかしましょう」
客「もう少し安くならない?」
私「これ以上、下げるのはしんどいですね。でも、吉田さんのお願いだから頑張ってみます」
このように、お客様からリクエストがあってもすぐに「はい」と言わずに一旦断ってから、一呼吸間を取りましょう。そして「あなただけは特別です」と承諾するのです。お客様はあなたに感謝の念さえ抱くかもしれません。
 
 
Technique 7
◆魔法の言葉2「あなたの自由です」
 
街なかで見知らぬ人への実験で「バスに乗る小銭を貸してくれませんか?」と言われたら、約10%の人が小銭を貸してくれたそうです。これにある言葉を加えたら、小銭を貸してくれた人の割合が47%に増えました。
「……貸してくれませんか? もちろん、あなたの自由です」
この「あなたの自由です」と付け足すだけで貸してくれた人は増え、しかも、金額自体も増えるという不思議なことが起こりました。
人は強制されたことには抵抗しようとしますが、自分で決めた事柄には積極的に関与しようとします。「あなたの自由です」=「自分で決めた事」なのです。これを営業トークに入れて「どちらがいいか、ご自由にお選びください」と。相手に自分の選択に積極的に関与してほしいという場面で試してみてください。
 
 
Technique 8
◆権威者の言葉を使うと、商品やサービスの説得力が増す
 
次の文章を読んでみてください。
 
決してうつむいてはいけない。
頭はいつも上げていなさい。
目でしっかりとまっすぐ世界を見るのです。

 
なかなかいい文章です。では、もう一度。
 
決してうつむいてはいけない。
頭はいつも上げていなさい。
目でしっかりとまっすぐ世界を見るのです。

 
ヘレン・ケラー
 
全く同じ文章なのに「ヘレン・ケラー」という文字が入っただけで印象は大きく変わってきます。人や事物の権威の後ろ盾を借りることを「権威効果」といいます。
提案する商品やサービスに、誰もが知る著名な人や組織の推薦、使用実績等を付加できれば、説得力は増します。他に、受賞歴、資格等がないかも考えて、POPやカタログ等の広報物に記載すればより効果的です。
 
 
Technique 9
◆人はナンバーワンや第1位に、惹かれる
 
Technique7と通ずる「限定条件下の事実」も紹介しておきましょう。
私は名刺に「出版書籍はアマゾン書店のマーケティング部門第1位を獲得」と書いています。それを見た人に「第1位ですか! 凄いですね」とよく言われます。第1位という言葉のもつインパクトは大きいものです。
これは、ある限られた条件のもとにおいてのみ当てはまる事実「限定条件下の事実」という考え方を応用した例です。
実はアマゾン第1位は私の1冊目のことなのですが、総合ランキングではなく、「マーケティングカテゴリー」という小分類での第1位。つまり「限定条件下の事実」になるわけです。
誇大広告や誇張はいけませんが、条件を限定すれば、あなたの会社やお店にも第1位はあるはず。日本一、県下一でなくても、創業年数、社員数、品揃え、平均年齢、入賞数等、条件や地域、期間を限定すれば必ず1位が見つかると思います。それを名刺や提案書類、webサイトに載せるのです。
 
 
Technique 10
◆BGMで購入額が変わる
 
昔、私が開催していたパソコン教室で、BGMを流すと受講生たちは大きな声で話し、BGMを止めると声が小さくなることに気付きました。そこで、講演では持参したiPodで会場に小さな音でBGMを流すようにすると、会場内の雰囲気が和むようになりました。
米国ロヨラ大学のロナルド・ミリマン教授の実験です。スーパーマーケットでアップテンポとスローテンポのBGMで来店客の購買行動がどのように変わるかを調べました。
するとアップテンポなら滞留時間は短くなり、購入額も低いものでした。一方、スローテンポだと滞留時間は長くなり、ゆっくり買い物をし、購入額も増えたのです。
これを応用して、飲食店ならランチタイムではアップテンポなBGMを流して回転率を上げ、ディナータイムではスローテンポなBGMを流してゆっくりと食事を楽しんでもらい、滞在時間を増やして売り上げ増を狙ってみるのです。
このように、自分の店にはどんなBGMがマッチするのかをいろいろ試してみて、来店客の行動変化を観察してみるのもいいでしょう。
参考:酒井とし夫著『心理マーケティング100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)