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【2018年10月号】感情をコントロールすれば、経営もうまくいく

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「経営コンサルタントに、指導してもらう」。つまり、コンサルティングを受けるとは実際どのようなものなのだろうか。経営コンサルティングも戦略、IT、人事など種類はたくさんあるが、社長、幹部の感情に特化し、仕事だけでなく、家庭も含め人間力を支援する組織開発コンサルタントの鳥澤謙一郎氏に、実際に1年間「感情コントロール」をテーマに指導を受けてきた方にもご登場いただき話をうかがった。


 
雑談を通して「違和感」を抱いていた
 
私が1年間、経営コンサルティングの一環として「個別支援エモーションサービス」を行った多々納さんとは、あるセミナーを介して知り合い、分科会的に二人で勉強会を持つようになりました。その勉強会は、雑談で終わることもあれば、コンサル的にアドバイスすることもありますが、契約は結んでいないので無料です。
そんな多々納さんと会うたびに私は「違和感」というか、「何かが違う」と思うようになりました。なんというか、大言壮語というか、「本当はそうではないだろうな」と思い始めていたのです。
多々納氏「あるとき、何気ない私のひと言に鳥澤さんが『多々納さんは、本当はそうは思っていないのではないですか?』と指摘を受けたのです。図星だったのでビックリしました」
さらにもう一つ感じたことがありました。私は仕事柄、エリートと呼ばれるような人との付き合いも多く、多々納さんに同じ匂いを感じたのです。それで、率直にそのことも訊いてみました。
多々納氏「確かに高校は県下でもトップクラスの進学校で成績は良かったです。しかし、受験に失敗。その後もいろいろと挫折を味わってきましたので、エリートなんて思いもしません。失敗をしてきたことをバネにここまでやってきたと思っていました」
「エリート臭い」というのではありません。頭脳明晰な人には特有の思考パターン、行動パターンがあります。例えば幼い頃から期待されてきているので、その期待に応えようとする責任感が強い。そのせいか、間違えてはいけないと問題を抱え込んでしまいがちなのです。だから、頭の中と想いが、ちぐはぐになってしまう。「無理しているな」というのを感じていたのです。
 
 
個別支援エモーションサービスを受けることを決意
 
多々納氏「鳥澤さんにお会いしたときは、会社を立ち上げて意気揚々と取り組んでいたのですが、なにか計画と現実がうまく噛み合っていないなと感じ始めていた頃でした。人材派遣業ですから、人材を育てることと、クライアントの意向に合う人材を派遣することが経営の柱なわけですが、その両方がうまくいってませんでした」
これまで何度も挫折を味わってきたというのに多々納さんの自信がどこからくるのかも不思議でした。もともと頭脳明晰であったことがわかり、本人は全く意識していなくても、エリート意識がどこかに潜在されていて、それが知らぬ間に言葉や態度に表れているのだと思いました。
多々納氏「鳥澤さんから『潜在するエリート意識が働き、いつの間にか上から目線で従業員を見ていませんか?』と指摘されて、そうかもしれないと思い、鳥澤さんから本格的に個別支援エモーションサービスを受けてみようと決意したのです」
 
 
最初のセッションは「イライラしてもいい」
 
二人だけの勉強会を始めて1年ほど経った2016年、多々納さんと正式に個別支援エモーションサービスの契約を結びました。
勉強会で多々納さんの日常を訊くと、イライラすることが多く、そのイライラをしてはいけないと思い込んでいることが課題だと思いました。そこで、個別支援エモーションサービスのテーマを「感情のコントロール」にしようと提案しました。
多々納氏「当時はいつもイライラしていて、なかなか冷静になれない自分がありました。そして、『こうあるべきだ』という“べき論”で考え、行動していたのです。頭の中では『この場ではこう言ってはいけない』と考えて何も言わない。でも心の中は言いたくて仕方がない想いが渦巻き、頭の中の思考と感情が一致していません。当然、沸き起こる感情をうまく対処できないのでイライラするわけです」
十人十色と言いますが、私は「一人十色」だと思っています。いろんな自分があるはずです。「良い点」だけでなく、「ネガティブな自分」も逃げずに認め、受け入れる必要があります。
そこで、最初のセッションでの行動目標を、「イライラしてもいい」としました。責任感の強い人はイライラしてはいけないと思い込んでいますが、イライラしても構いません。それが受け入れるということなのです。
多々納氏「鳥澤さんの指導で、『自分は今、イライラしているのだな』と、イライラしているという事実を認めるようにしました。すると楽になりましたね。『イライラしちゃいけない』は我慢することなのでストレスになります。事実を認めると客観性が出てきたのか、イライラしている自分をちょっと脇に置いておけるのです。そして、徐々に目の前の事案を冷静に見ることができるようになりました」

 
 
毎朝、奥さんに挨拶するという「行動目標」
 
エモーションサービスのセッションは月に1度。1〜2時間ぐらい。喫茶店で行う場合もあります。場所は問いません。
この1カ月間にどのような行動をし、心の動きがあったか等を聞き出し、次月まで取り組む行動目標を考えます。そして次月は、その行動目標の結果を中心に分析し、次に取り組むべき行動目標を考えていきます。
多々納氏「最初はセッションのために課題を考えていました。鳥澤さんのために課題を考える、勉強のために勉強する、そんな感じでした。次第に行動目標を意識しながら日常業務をこなしてきた結果に答えや課題があるのだとわかってきました。鳥澤さんはよく図解で分析・指示してくれたので、問題を俯瞰できて取り組みやすかったです。
それでも、戸惑った行動目標の一つが、 “毎朝、妻に挨拶をする”ことでした。今なら全てのビジネスマンにおすすめしたい素晴らしい目標だと思います(笑)」
私が行う個別支援エモーションサービスとは、言わば「人間力」をアップさせるコンサルティングです。人間力とは◆知識・スキル(縦軸)◆人との関わりの数(横軸)◆謙虚力(奥行き軸)の3つで構成されるものと考えています。それでいくと、多々納さんが自身の感情をコントロールしていくのは、プライベートも巻き込んだほうがよりスムーズにいくパターンだと判断したのです。それで、いろいろ訊けば奥さんへの挨拶はほとんどしていないとのこと。それで、奥さんへの「挨拶」を提案しました。コミュニケーションを図る根本的な部分としてこれができれば、仕事にも必ずいい影響を及ぼすはずです。
多々納氏「実際、家族に対しても頭で先に考えて決め付ける態度だったので、ギスギスしていました。仕事:家庭の比率は、9:1ぐらいでした」
家庭がうまくいってないのに、仕事はうまくいくとは思えません。仕事も家庭も同じです。
多々納氏「たかが挨拶ですが、いかに大切なのか、自分でやってみてわかりました。新たな気付きも増えました。その日の妻の調子がなんとなくわかるのです。以来、夫婦間は良好。今は仕事:家庭は5:5。すると仕事もうまくいくのですね」
成功者は必ずと言っていいほど奥さんを大切にされています。
 
 
ある喫茶店での衝撃の出来事
 
多々納氏「新宿のある喫茶店でセッションを行ったときのことです。その日はいつもより混んでいて、ウエイトレスはかなりテンパっていました。そこへ、鳥澤さんがあるひと言を投げ掛けたら、そのウエイトレスはとたんに笑顔になり、キビキビと働き出しました。その変貌ぶりは私にとっては衝撃的でしたね」
その喫茶店は普段からよく利用していて、ウエイトレスの彼女のことも以前から知っていました。というのはいつもキリッとして、真面目に、プライドを持って仕事をしているのがよくわかり感心していたのです。
ところがその日は、かなり忙しそうで、イライラしているようで、いつもの彼女ではないと思いました。そんなとき、コーチングでは“承認のスキル”というテクニックがあります。私は『随分と混んでいるようだけど、今日も頑張っているね』と声を掛けました。“承認のスキル”とは褒めるのでなく、その人の存在に気づいて、言語化して伝えること。そうすると、承認された人はやる気や自発性がさらに促進されます。 
多々納氏「鳥澤さんは自然にサラッと言っている感じでした。心で思っていることを鳥澤さんのように言えたらと思いました。まさにお手本を示してもらったようでした」
 
 
良好なコミュニケーションをめざして
 
個別支援エモーションサービスを本格的に開始してから半年過ぎると、多々納さんはどんどん素直になってきて、さまざまなことを受け入れ、積極的に課題に取り組んでいかれました。そうなれば定期的にフォローすれば大丈夫なので個別支援エモーションサービスは1年で終了。随分と成長されました。
多々納氏「今では冷静に部下の話を聞けるようになりました。大袈裟かもしれませんが“拝聴する”みたいな姿勢です。頭の中で『どうせ君はこうなんだろう』と決め付けないで、心から『ああ、そうなんだ』と思える自分がいます。ですから、部下の本音もようやく聞き出せるようになり、適材適所のオペレーションも好転し始めました。以前は、部下の話を聞きながら頭の中で用意した答えになるように誘導していました。それでは部下が納得できる結果は得られません。それは良好なコミュニケーションとはいえませんからね」感情をコントロールすると、良好なコミュニケーションも生まれます。コーチングでは、質の高いコミュニケーションを生み出すステップとして「共通体験→共通言語→共通認識→共通理解」があります。日々仕事という共通の体験を重ね、その共通の体験があるからこそ共通の言語で話ができるようになります。そして同じ目的や視点で共通の認識をするようになり、互いの理解が深められていく。そうなれば、理想的な職場、業績アップにつながるコミュニケーションを創り出していけるのです。