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【2018年1・2月号】リーダー行動学 部下との信頼関係の築き方

ニュース

部下とのコミュニケーションに悩むリーダーは多いだろう。
いかにしてプロジェクトや販売促進などの方針を伝えればいいのか?
いや、その前にまずは部下との信頼関係を築くことが先決だと述べる、リーダー教育で数多くの実績を持つ経営コンサルタントの吉田幸弘氏に話を伺った。

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コミュニケーションの基本は、「聞き上手」になること
 
 部下との信頼関係を築きたいと思うとき、まずはコミュニケーションを図ろうとするでしょう。そこで今回はコミュニケーションという観点から信頼関係の築き方をお話させていただきます。

 まず、リーダーは話し上手になる必要はありません。もちろん、簡潔にポイントをおさえて伝えることは、相手も理解しやすいでしょう。でも、部下はそれぞれ経験も、得意分野も違いますし、ましてや苦手な分野も各々あるはずです。そうしたことで大切になってくるのが「聞く力」です。
 「聞く力」が身につけば、部下にリーダーの意図することが伝わるようになり、よりスムーズなコミュニケーションができるようになるでしょう。
 そんな「聞く力」が身につくと、次のようないいメリットが生まれてきます。

◆部下が今、どのくらいの知識があり、何を知らないかがわかること
 部下が持つ知識と技術がわかってくるので、どの部分を重点的に指導すればいいのか、任せればできるのか、また、補足すればいいのかが明確になります。

◆部下が質問しやすくなること
 説明を受けた後など、リーダーにはなかなか質問しづらいものです。「さっき言ったじゃないか」とか、「何を聞いていたんだ」と叱られると思うからです。ですから、リーダーが聞き上手なら、部下も質問しやすくなるので、より正確に理解できることにつながります。

◆部下が主体的になること
 「聞く力」で部下が考えていることや感じていることをうまく引き出し、理解してやれば、部下のほうから主体的に行動するようになります。「やらされる」よりも部下も「自分でやりたい」と思っているものなのです。
 
 
 
 
すべての部下と「平等」に接すること
 
 上司と部下という関係は、どんな企業でも職種でも、部下は上司に対してプレッシャーを感じているものです。個人面談や会議などで時間をとって話し合っているから大丈夫というのはリーダーの勘違い。公式の場では感情部分の本音はなかなか出てきません。だからこそリーダーのほうから意識してコミュニケーションを図るようにしたいものです。
 そのコミュニケーションの図り方ですが、すべての部下と「平等」に接することが大切です。実はこれがなかなか難しいのです。つい、話しやすい部下、よく報告や相談をしてくる部下とばかり話していませんか? 特定の部下ばかりとランチや飲みに行っていませんか?
 これについては私にも苦い経験があります。部下の大量離脱です。
 A君は売上トップで後輩の面倒もよくみてくれるチームではエース級の存在でした。そのチームは営業に不慣れな若手が多く、私は彼らにつきっきりで、A君とはほとんどコミュニケーションをとっていませんで
した。
 できる部下だから大丈夫だと思っていたA君でしたが、実は悩みやストレスを抱えており、それに気付かずにいた結果、辞めてしまったのです。
 するとA君を慕っていた部下たちが次々と後を追うように辞め、結果、大量離脱となってしまいました。後で人づてに聞いた話だと「自分の話も聞いてほしかった」と言うのでした。

 
 
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部下への声かけは内容よりも「回数」がポイント
 
 「平等」に接するということは、「内容=質」のことではなく物理的な「回数=量」のことなのです。いわば、何回話したかと言ったほうがわかりやすいかもしれません。
 行動心理学で「ザイオンス効果」というのがあります。これは「同じ人や物に接する回数が増えるほど、その対象に対して好印象を持つようになる効果」のこと。例えば、最初は興味のなかった音楽を何度も聴いていると、いつの間にか好きになって口ずさんでいたという経験は、よくあるかと思います。あれです。
 つまり、人は一度に2時間話すより、30分ずつ4回話した相手に親しみを持つのです。ですから、部下にはどんどん話しかけてみましょう。仕事以外のことでもいいのです。雑談も大いに結構です。「おはよう」「ご苦労さん」「お疲れさま」といった挨拶程度でも構いません。
 ただし、「おい」はNGです。部下といっても、年上の場合もありますし、年上、年下関係なく「おい」呼ばわりするリーダーは信頼できないでしょう。部下が年上なら敬意を持って「○○さん、お疲れさまでした」と敬語で声をかけるのが常識的です。
 また、声をかける部下が偏ってはいけません。「平等に」です。誰しも話しやすい相手とそうでない相手がいます。それを補うためにも例えば部下の一覧表を作成し、声をかけた回数を書き込んでみましょう。少ない部下には意識して声をかける。そこまでしなければならないほど、偏りはよくありません。
 声かけをカウントしながらどんどん増やしていく。そんなコミュニケーション方法もあるのです。
 
 
 
 
世間話でいい雑談力を養う
 
 さて、その声かけですが、コミュニケーションを促すようにするにはどのようなことを聞けばいいでしょうか。
 「最近、どう?」「何か困っていることはある?」と聞けばいいかと思う人がいます。しかし、親切そうに思えるこの声かけは、実はあまりいい聞き方ではありません。もしあなた自身がそう聞かれたら、何て答えますか? すぐには答えられず、考える時
間がほしくなるでしょう。これは、とても答えづらい声かけの代表例なのです。
 ではどのような声かけがいいのか。それは、あまり考えなくてもいい内容、つまり、世間話などの雑談を心がければいいのです。
 ただ、その雑談が一往復ぐらいしか続かないという部下もいるでしょう。ですから、ある程度は部下の情報を知り、普段から話しやすい関係を意識してつくっておくことなのです。
 また、うまく雑談する際のポイントとして、「目の前に見えているものの話をする」ことです。
 例えば手に缶コーヒーを持っていたとします。
「この缶コーヒー、知っている?」
「いえ、知りません」
「結構、いけるよ。君は普段、何を飲んでいるの?」
「僕はA社の缶コーヒーをよく飲みますね」
「ああ、あの芸人が出てるコマーシャルのか」
という具合です。
 このほかに、
「休みの日は何をしているの?」
「何線に乗っているの?」
「昨日のサッカー、観た?」
 この他、時事ネタも用意しておいたほうがいいでしょう。こうした雑談を通して部下のことを知ることもできます。好きなスポーツが同じで話が盛り上がれば、それだけ距離が縮まり、人間関係も強化されることでしょう。しかも、雑談をするうちにビジネスチャンスや、いいアイデアが浮かんだりして思わぬ収穫があるかもしれません。
 また、何気ない声かけや雑談の中にも「ねぎらいの言葉」を使うと好感を持ってくれます。単に「お疲れさまでした」よりも「寒い中お疲れさまでした」と言ってもらえるほうがうれしいものです。
 
 
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部下の働く理由を知ること
 
 コミュニケーションを図り、信頼関係を築いたその先の狙いは、成果につながるような動きを部下にしてもらうことです。
 では、部下が積極的に動いてくれるようなコミュニケーションは、どのようにすればいいでしょうか。ひとつ有効なのは部下の将来の考えに応じたコミュニケーションです。そしてそれには「部下の働く理由」を知る必要があります。
「今の仕事を選んだきっかけは?」
「仕事を通して得たことは何か?」
「将来はどのようなことをしたいのか?」
 といったことです。部下がどんな価値観や動機で今働いているのか。それを把握できれば、その部下にマッチした指導ができます。例えば、
・現在は営業だけれど、将来は新商品の開発をしたいと思っているのなら、顧客のニーズに合う新しい商品を考えるように指示します。
・家族との時間を大切にしたいと思っているのなら、定時には帰れるように一つひとつの業務時間を短縮する工夫を促します。
 部下の仕事をする動機となっているものがわかっていると、仕事も頼みやすくなり、モチベーションもアップすることでしょう。

 でも、中には動機も将来像もはっきりしない部下もいるはずです。そういう場合はリーダーがうまく誘導し、引き出してあげればいいのです。次のような問いかけを普段から意識して、部下に接します。
【価値観を見つける問いかけ例】
◆子どもの頃に時間のたつのも忘れて打ち込んだことは何かある?
【将来像を見つける問いかけ例】
◆あのような人になりたいと思う憧れの先輩はいる?
【やりたいことを見つける問いかけ例】
◆周りの人が苦労しているのに、自分は簡単にできたことはある?
◆(逆にやりたくないことも把握するため)やっていてストレスを感じることは何?

 このようにして、部下のビジョンや価値観、動機を共に探し出し、そこを刺激するような仕事をさせていくことがポイントです。
※参考:吉田幸弘著『部下がきちんと動く リーダーの伝え方』(明日香出版社)