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【2017年7・8月号】難癖をつけてくる社員に振り回されないための解雇トラブル防止マニュアル -後編-

ニュース

前号では問題のある社員を解雇する時(した時)に、その社員からさまざまな形で難癖をつけられる原因の把握と、そうなった時の企業の損害を社会保険労務士でもある経営コンサルタントの大庭真一郎氏に伺った。今回はそうしたトラブルを未然に防ぐための対策を聞いてみた。

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■トラブルを未然に防ぐための6つの対応
 
対応その1:危ない人物を入社させないこと
 
採用面接で「経歴も輝かしく映り、受け答えにもそつがない。入社後に社内に上手く溶け込んで活躍してくれるだろう」などといったような「何となく良さそうだ」という感覚だけで採用を決めてしまうのは危険です。
 
【危ない人物かどうかを見極めるための工夫】
 
①複数の階層の社員で面接を行う
 採用担当者や経営者による面接とは別に、若い社員による面接を行ってみましょう。採用担当者や経営者の前では自分を良く見せようと必死になりますが、採用決定権などあるはずのない若手社員の前では、地や本音をさらけ出す可能性が高いのです。
 
②面接時の雰囲気を変えてみる
 食事をしながらなどリラックスできる環境の中で応募者と話をしてみてはいかがでしょうか。社内での面接は互いに緊張するため、応募者も予め準備をしておいた姿しか出しませんが、リラックスできる環境があれば、応募者は地や本音を出すものです。
 
③過去の退職理由を正確に確認する
 退職に至った経緯の詳細を確認してみましょう。面と向かって聞くのは気が引ける場合は、退職証明書(資料1)を在籍していた会社や団体に提出してもらうという方法もあります。
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対応その2:危ない人物を本採用しないこと
 
 多くの会社が形式的に試用期間を設けています。試用期間を終えた人を本採用しないことも解雇に相当。曖昧な理由で本採用を断ると不当解雇だと難癖をつけられることになりかねません。
 
【本採用を断る時のトラブルを防止するために必要な3つの対応】
 
①本採用をするか、しないのかの判断基準を予め明確にしておく
 どのような要素の有無で本採用を決めるのか。それをどのような視点で判断するのか。そのために本人にどのような業務をどのようなやり方でやらせるのか。といったことを明確にしておきます。
 
②本採用をするか、しないのかの 判断基準を本人に伝える
 本人には明確にした前述の判断基準を伝えておきましょう。本人が、どのようなことを会社にアピールできれば本採用してもらえるかを理解した上で行動をするので、会社はその適性を正確に見極めることができるようになります。つまり、本採用への会社の判断に客観性が生まれるわけです。
 また、基準に基づいて適性を見極めるという共通目的によって良好なコミュニケーションが生まれ、本採用した後に早い段階で戦力化することが期待できるようにもなります。
 
③雇入れから14日が経過するまでの間に一度本採用の可否を判断すること
 雇入れから14日以内の解雇は解雇予告が不要(雇入れ日の翌日からカウント)です。短期間で明らかに適性がないと判断したことに関しては、難癖をつける余地は小さくなります。後でトラブっても会社の言い分が通る場合が多いのです。
 
 
 
対応その3:危ない人物を孤立させないこと
 
 解雇時のイチャモンは、何らかの理由で会社に対する不満を抱いていた人が、解雇という引導を渡されたことで、不満が憎しみに変化し、会社を攻撃する行動に出ることで生じます。
 会社が何のフォローもしてくれなかったと思うことが会社に対する不満につながっていきます。そうなった場合、本人が社内で孤立してしまっていることが多いようです。
 
【問題を抱えた社員を孤立させないために必要な2つの対応】
 
①問題が生じていることに会社がいち早く気づくこと
 トラブルに発展しそうな要素に対していち早く手を打ちましょう。定期的に社員と面談することをスケジュール化すると効果的です。
 
②本人の言い分に十分に耳を傾けること
 社員との面談を行う時などに、社員の言葉に対して真摯に耳を傾ける姿勢を持ちます。会社側が一方的に発言したまま面談を終えてしまうと、問題が生じていることに会社が気づけないだけでなく、問題を抱えている社員の会社に対する不満も膨らんでいくものです。
 
 
 
対応その4:正しい労働法の知識を身に付けること
 
 中小企業の経営者や管理職者は、労働法に疎い人が多く、一般の社員は、理論武装している人が多いようです。インターネットやSNSなどで労働者の権利保護に関する情報をつかんでいます。ですから、法を無視した対応を行うと、そもそも違法行為だということで突っ込まれてしまうわけです。(資料2)
 
【そもそも論から突っ込まれないために必要な2つの対応】
 
①最低限の知識を身に付ける
 マネジメントを行う人が知っておくべき最低限の労働法の知識を理解しましょう。トラブルの火種になりそうな事柄に対して、「もしかしたら当社の対応は危ないのではないだろうか?」と感じることができ、違法行為を未然に防ぐことができます。
 
②わからないことは即答しない
 雇用に関する見解や判断を求められた時は「感覚的に答えない」「知ったかぶりをしない」「自信がない、もしくはわからないのであれば、調べたうえで回答する」を心掛けてください。
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対応その5:きちんとした就業規則を作成すること
 
 きちんとした就業規則を作ることだけでトラブルを完全に防止することはできませんが、トラブル発生時のダメージを軽減することは可能です。
 それは、就業規則で規定した解雇理由が解雇を行うための根拠として主張できるからです。ただ、インターネット上の雛形や他社の就業規則をそのまま使うことは、実態に則さないことが多く、自らの首を絞めることにつながりかねません。
 
【きちんとした就業規則を作成するための2つのポイント】
 
①想定されるリスクとの整合性のある内容を規定する
 発生しそうなトラブルの内容やトラブル対応への会社の考え方を反映した規定を作成しましょう。会社ごとに社風や考え方が異なるため、対処の仕方も、会社によってさまざま。あなたの会社の理念や方針、社風を反映させたいものです。
 
②特定の解釈しか生まれない内容で規定すること
 どうにでも解釈できる曖昧な内容の規定は避けましょう。規定の内容がいかようにも解釈できるものである場合、イチャモンをつける側も独自に解釈を広げて反論してきます。(資料3)
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対応その6:指導記録を作ること
 
 就業規則に規定した解雇理由が解雇を行うための根拠になりますが、規定した解雇理由に該当するからといって問答無用に解雇できるというものではありません。「会社側も最善を尽くしたけれども、そのような対応をせざるを得なかった」という状況の下で行うことがベストです。イチャモン社員のバックに弁護士などの専門家がついた場合、まずその部分を追及してきます。
 
【そのようなリスクを避けるために必要な2つの対応】
 
①会社としてやれることを全てやること
 問題社員に対して何も手をつけずに放置した状態で、あるとき堪忍袋の緒が切れて解雇を行うのが、最も多い失敗のパターン。問題社員が存在する場合は、まずは徹底した指導を行います。
 能力不足な場合は、能力を習得し発揮させるための指導を行います。
 勤務態度が不良な場合は、そのことを咎めた上で、改心を促すための指導を行います。
 心身の状態が悪い場合は、仕事の内容や環境を変えるなどの工夫を行います。
 
②記録に残すこと
 言った言わないの展開になることを防ぐためにも指導の記録を残しましょう。トラブルが生じた時の証拠にもなります。(資料4)
 いずれも感情的にならず、冷静に、そして毅然とした態度で対応することが大切です。
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