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【2017年4月号】とかく管理職者はつらい?! リーダーのためのメンタルケア・ポイント!

ニュース

うつ病などの精神疾患にかかる年齢層は、30代から増えはじめ、50代でピークとなるとか。まさに、マネジャーをはじめとする管理職に就くリーダーたちの世代だ。さまざまなプレッシャーにさらされるリーダーは日々どんな心掛けが必要なのだろうか。ビジネスマン向けメンタルヘルスのコンサルティングで多くの実績を持つ田村綾子氏に聞いた。

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活躍するリーダーは、上司と部下からの板挟みは当たり前!
 
 とかくリーダーは、「上からの命令と下からの突き上げの板挟みになってつらい」というイメージがあるようです。でも、リーダーならば、板挟みの危険性がない人は存在しないのではないでしょうか。
 ひと昔前は、上司の要望だけを聞き、あとは部下に丸投げをするという中間管理職がいました。または反対に、部下を守るために、やたらと上司にかみつくという気概のあるリーダーも珍しくなかったと思います。
 しかし、今の時代、どちらのタイプも出世はしづらいかもしれません。現代で管理職に就ける人は、会社の方針や上司の意見をくみ取ることができ、さらに部下の教育や心身の状況も把握できる人です。上司か部下、どちらか一方を気にしていればいいという人はそもそもリーダーにはなれないのではないでしょうか。
 つまり、すでに管理職の方や、これから管理職になる方は、板挟みの危険性は避けては通れないといえるでしょう。
 
 
女性が部長にもなると板挟みも乗り越えている?!
 
 男性と女性のリーダーを比べると、女性のほうが板挟みの率は多いでしょう。男性よりも女性は「リーダーだからこれをしなければいけない」と思い込む傾向が強いように思えますので、その分、上司や部下に気を遣ってストレスを感じます。実際、マネジャー・クラスで男性と比べると、女性のほうがメンタル負担についての相談をよく受けます。
 そんな女性が、部長にもなると一転。板挟み状況なんてありません。いえ、板挟みがないというか、乗り越えているようなんですね。まさに「ストレスは人生のスパイス」(※)だと肯定的に向き合ってきた人といえますね。というのは「女性管理職」の中でも、部長職はお飾りではできませんから、真の実力があってのポストです。男性が部長になるよりもかなりハードルは高いので、部長に就くほどの女性は、根回し、周囲への配慮はもちろん、実務能力に優れ、自身の精神コントロールにも長けているのではないでしょうか。
 派遣業界などでは男女問わず、「マネジャーを経験していない人は市場価値が下がる」とまで言われています。しんどいポストにありますが、それだけ価値ある存在でもあるのです。
 ※日常生活に「ストレス」の概念を見いだしたカナダの生理学者ハンス・セリエ の言葉。ストレスには「良いストレス」もあると唱えた。
 
 
ストレスの症状、「不眠」
 
 板挟みにあるリーダーに就いた当初は、無理難題を押し付けてくる上司や、自分勝手な部下に対しては、腹が立つ人もいるかもしれません。しかし、ストレスが溜まってくると、やがてその矛先は必ず自分自身に向かいます。
 「上司の役に立てない俺」「部下を育てられない私」。そんな自分自身を責め、精神的にも肉体的にも疲れが蓄積されます。ストレスが大きくなってやっかいなのは、自分を嫌いになってしまうことです。他人の悪口や愚痴を言っているあいだはまだいいのです。自分のことを嫌いになってきたら危険信号と思ってください。
 やがて、溜まったストレスにより、身体的に現れる症状は、「不眠」です。なかなか寝付けない、夜中に目が覚めると後が眠れないといった症状ですね。ただ、眠れない日が続いても、何日目かでぐっすりと眠って清算できることはあるようですが、それでも不眠そのものは病気です。専門医に診てもらうことをお勧めします。
 
 
ストレスは、IQを下げる
 
 不眠の他に、ストレスを過度に感じたり、身体の疲れが重なると、人はIQが下がります。普段ならできることができなくなるのです。リーダーなのに、お手本になるべき人なのにできなくなる。どんなに優秀な人でも、強いストレスを感じている状況下では、仕事の質もスピードも下がってしまいます。生産的な行動がとれなくなるのです。
 さらに、周囲の人に相談しようという発想も出てこないので、どんどん独りよがりに陥ってしまい、孤独感も積もってきます。そのような状態では、上司からのあたりはさらに強くなり、部下の不満も増えるでしょう。まさに悪循環です。
 
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予防法&対処法①
「自分自身はどうしたいのか?」を考えること

 
 不眠に対しては専門医に相談して睡眠導入剤を服用したりして、体調を整えましょう。
 一方、精神的には普段からの心掛けとしては、常に「自分自身はどうしたいのか?」を考えることです。「トップの方針だから従え」では、実務を担う部下や現場の人たちはたまったものではありません。もちろん、そうせざるを得ない場合もあるでしょうが、まずはその方針を自分はどう思うのか。「おかしいな」と思う部分があるのなら、可能な限り上司へ掛け合うことです。
 「そんなことしたら、上司の機嫌を損なうだけだ!」という人がたまにいますが、本当にそうでしょうか? よく「うちの会社はイエスマンが出世する」という声を聞きます。それはその会社にイエスマン以上に優秀な人がいないからなのではないでしょうか。
 トップの周りに、自分自身の考えや意見を丁寧に伝えてくれる部下がいないなら、せめて自分の考えに従ってくれるイエスマンを優先するのはトップにすれば当然の行為だといえます。もちろん、意見を言えばいいというものではありません。上司の立場も尊重しながら、建設的な意見を言ってくれる部下は頼りになります。そういう人が周りにいれば、イエスマンより優先されるはずです。
 大切なのは、「自分自身はどうしたいのか?」という考えを持ち、同時に相手を動かすための伝え方、つまりコミュニケーション力を身に付けることです。部下も、「トップに言われたからこうして」という上司にはしらけてしまいますが、「私はこうしたいんだ!」という強い信念がある人にはついて行きたくなるものです。
 
 
予防法&対処法②
他人からの評価を気にし過ぎないこと

 
 板挟みのストレスを和らげるために、もう一つ心掛けてほしいのは「他人からの評価を気にし過ぎない」ことです。
 「こんな風に言ったら生意気に聞こえるかな?」「相手は傷つかないかな?」なんていうことを過度に気にしないことです。
 もちろん、伝え方には一定の配慮が必要ですが、相手がどう受け取るかは相手の問題であり、踏み入ることができません。最近話題になっているA・アドラーの『嫌われる勇気』でも言っている、〈課題の分離〉です。あなたが言ったことを聞いて上司や部下がどう感じるかは〈相手の課題〉であってどうすることもできません。
 どうにもできない〈相手の課題〉のことを考えるより、誠意ある対応で「できることを精一杯する」という論理性を持つことは、余計なストレスを抱えないためにとても大切なことです。このことに付随して「他人の悩みを自分の悩みにしないこと」もお伝えしておきます。
 
 
予防法&対処法③
背筋を伸ばして笑顔をつくる!

 
 先ほど少し触れましたが「ストレスは人生のスパイス」と肯定的に捉えてみましょう。そうして、“背筋を伸ばし、笑顔になること”です。実はこれは最も手軽で人気のあるストレス軽減法。「自分にはストレスがたくさんある!」という人は、例外なく姿勢が悪く、表情が暗いか怖いかのどちらかです。
 「大変な仕事をしているのだから当然だ!」という意見もあるかもしれませんが、逆もまた然り。心身相関といって、心と体はつながっています。背筋を伸ばし、頬を緩ますことで、心のストレスも必ず軽減されます。
 ですから、鏡を見て、笑顔をつくってみましょう。常に暗い顔や怖い顔をしている上司の元で働く部下と、和やかな表情をしている上司の元で働く部下とでは、どちらのパフォーマンスが高くなるかは想像に難くないと思います。
 
 
予防法&対処法④
今この場に集中する!

 
 “今この場に集中する”ということも、ストレス対処法として有効です。よく、「家に帰っても仕事のことが頭から離れない」という人がいます。難しい仕事をしているのですから当然です。ただし、いつも気になるという方は、集中力の問題かもしれません。
 家に帰っても仕事が気になって家族との会話に集中できないという方は、案外、仕事中に「家の車の車検、来週あたり出しておこうか」と考えていたりするものです。
 当たり前のことですが、職場で集中しなければいけないことは目の前の仕事です。家の車のことや、子どもの進学について心配をする時間ではありません。家庭でも同じです。経営の戦略や次の企画、部下のミスのフォローについて考えるのは、せめて帰宅するまでの電車や車の中で終わらせたいものです。そういう意識を持つだけでも、心身に良い変化が起こります。
 エスカイヤニュースの読者の方には、ゴルフをなさる方も多いかと思います。パットの時に、ドライバーでミスしたことを思い出したりはしませんよね? 仮に大きく叩いてしまったホールがあっても、次のホールに着く前までに気持ちを切り替える努力をすると思います。余計なストレスを引き起こさないために、“今この場に集中する”を常に意識することをお勧めいたします。