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【2016年9月号】仕事のデキる人間は、 デキる理由から考える

ニュース

【マネジャー編】

仕事がデキる人とデキない人とでは、何が違うのでしょうか。
経営コンサルタントの大庭真一郎氏は「デキる人はデキる理由から考え、
デキない人はデキない理由から考えてしまうのです」と指摘します。
実際の3つのケースから解説していただきましょう。

 
 
デキる理由から考える人の発想「五段階思考法

ビジネスの現場では、やればデキるのに、「デキない理由」などないのに、なぜだか止まってしまっている人がいます。そんな人は「デキない理由」を並べ立てて前に進めない状況を作り上げているようです。
 逆に、デキる人はどのようにしてデキる理由を考えているのでしょうか。私はコンサルティングを通じていろんな人と出会い、仕事がデキる人は左のような「デキる理由から考える思考パターン」がえる思考パターン」があることに気付いたのです。
 
〈デキる理由から考える思考パターン〉
❶デキたときの姿、成功イメージを思い浮かべている

❷デキたときの姿に行き着く筋書を思い浮かべている

❸筋書を実現させるためのプロセスを考えている

❹考え付いたプロセスの実現性を検証している

❺実現性のあるプロセスをプラン化している
 
私はこれを「五段階思考法」と名付けました。前回は、この思考法で再チェンレジしてもらい、見事成功した企業を紹介しました。今回はビジネス現場の最前線に立つマネジャーで、うまくいかなかった仕事の結果に対して、この「五段階思考法」で好転した事例をご紹介しましょう。
 
 
事例テーマ❶ プレイング・マネジャーの役割を果たせるか?

 印刷会社の制作グループを率いるAグループ長。グループ長に昇進した際に社長から、「部下の育成と残業削減に取り組み、グループの生産性向上を実現してほしい」と命じられたのです。

〔デキない理由から考えてしまったAグループ長の思考〕
・管理職者になったからといって、自分自身の仕事が減ったわけではない。
・社長の指令を守るのであれば、それを行う時間は、ほとんどない。
・自分の仕事をやり終えた後で、できる範囲で取り組むしかない。
・それ以外のやり方は無理だ。
〔デキない理由で取り組んだその結果〕
・「部下の育成」と「残業削減」は共に実現せず、次の人事での降格対象となってしまった。

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〔五段階思考法で、デキる理由から考えて再チャレンジしたAグループ長の思考〕

❶デキたときの姿を思い浮かべてみる
・マネジメント業務をきっちりと行うためには何が必要なのかを考えてみた。
・先輩管理職者たちが部下に指示を与えながら指導している姿を、自分自身の姿にだぶらせてみた。
❷デキたときの姿に行き着く筋書を思い浮かべてみる
・そのような姿になるためには、自らの仕事の負担を軽くしなければならない。
❸筋書を実現させるためのプロセスを考えてみる
・そうするためには、部下に任せることができる仕事は任せ、引き続き自分が担う仕事については効率化を徹底することが必要だ。
❹考え付いたプロセスの実現性を検証してみる
・現在、自分が担当している仕事ごとに必要とされるスキルを洗い出して、該当スキルを持った部下の名前をピックアップ。任せたときに生じる影響を検証したうえで、任せても構わない作業を明確にしてみた。
❺実現性のあるプロセスをプラン化してみる
・グループ全体の改善目標を立てて、それに関して自分自身がやるべきことと部下に協力してもらうこととを明らかにした。そしてそれを部下に伝えて話し合った。
〔デキる理由から考えて再チャレンジしたその結果〕
・グループ全体に仕事の効率化を意識し徹底していこうという「みんなでやろう」的な空気が生まれた。
・Aグループ長が、マネジメントに必要な時間を確保することができた。
・「部下の育成」と「残業削減」は共に実現し、社長からの評価がさらに上がった。

◎解説
 「管理職になったからといって使える時間が増えるわけではないため、日常業務とマネジメント業務を両立させることがデキない理由を考えてしまうと、マネジメント業務が疎かになります。
 日常業務とマネジメント業務の両立に関してデキる理由から考えようという思考を持ち合わせたマネジャーは、自分自身が抱えている日常業務に対して工夫を加えることを考えます。そうすることで、自身のマネジメント能力に磨きがかかり、部下も業務の幅が広がることで職務遂行能力が向上するという相乗効果が生まれるのです」
 
 
事例テーマ❷ チームの目標を達成させられるか

OA機器販売会社で営業課を率いるB課長。会社から前年比10%UPの課の数値目標を達成するように命じられました。

〔デキない理由から考えてしまったB課長の思考〕

・自分の課が担当するエリアは競争が激しい。
・競争が激しいから新規顧客の獲得も容易ではない。
・部下たちも揃ってピリッとしない(全員が目標未達)。
・前年比10%なんて、できっこない。
・仕方がないから、全員に前年比10%UPの目標を設定させることで押し切ろう。

〔デキない理由で取り組んだその結果〕

・無理な目標を押し付けたことで、部下の営業効率が悪くなり、前年度の実績を下回る部下が続出した。
・課の成績も散々なものとなり、会社から責任を追及された。

〔五段階思考法で、デキる理由から考えて再チャレンジしたB課長の思考〕

❶デキたときの姿を思い浮かべてみる
・過去に受講した営業マンセミナーも参考にして、課全体で営業成績の底上げを図っていく姿をイメージしてみよう。

❷デキたときの姿に行き着く筋書を思い浮かべてみる
・セミナーで得たヒントを部下と共有し全員で営業の行動を変えていけば、目標をクリアすることができるのではないだろうか。

❸筋書を実現させるためのプロセスを考えてみる
・セミナーで得たヒントの中から、簡単に取り組むことができて確実に営業成績の向上につながるものを選び出し、自分自身が部下の営業活動を日々サポートすることが効果的ではないだろうか。

❹考え付いたプロセスの実現性を検証してみる
・課の中で定期的に勉強会を開くことで、セミナーで得たヒントの共有化が実現できるのではないだろうか。
・部下の力量や顧客の特性、市場環境を考慮したうえで目標数値を適正に割り振れば足並みを揃えることができるのではないだろうか。

❺実現性のあるプロセスをプラン化してみる
・シミュレーションを行ったうえで目標数値の割り振りを決定し、サポートの内容や具体的にどのように営業の行動を変えていけばよいのかを、部下に伝えて理解してもらうための計画を立ててみよう。

〔デキる理由から考えて再チャレンジしたその結果〕

・課全体の営業効率が向上し、B課長率いる課だけが、課としての目標を達成した。
・B課長自身、課の目標をもっと高く命じられてもクリアできるイメージを持てるようになった。

◎解説
 「上意下達で組織の目標を決められた場合、マネジャーが割り切れない思いを抱きながらデキない理由を並べ立てれば、高い確率で組織としての目標を達成できない結果が生じてしまいます。
 一方、与えられた目標を達成デキる理由から考えようという思考を持つマネジャーは、過去のルールややり方にとらわれずに、生み出したい結果を作るための体制を新たに整えるでしょう。そうすることで、組織の中に良い意味での新陳代謝が生じ、部下も成長していくのです」

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事例テーマ❸ 部下からの提案を生かすことができるか

IT会社のWEB制作部門の責任者であるC部長。部下から、どの競合他社も取り入れていない新サービスを市場に導入する内容の提案をされました。

〔デキない理由を思い浮かべたC部長の思考〕

・競合他社に押されている状況を何とかしなければならないが、下手な動きをして、今よりも状況を悪くすることも避けたい。
・一からの挑戦なので専属の人間が必要になるが、部内に手の空いている人間などいない。
・仮に人がいたとしても、売るためのノウハウがない。
・既存のサービスよりも価格が高くなるため、ユーザーからそっぽを向かれるのではないだろうか。
・これだけのリスクが想定できるのだから、やらないという判断を下すのが妥当である。

〔デキない理由で何もしなかったその結果〕

・提案をした部下の一部が退職してしまった。
・残った部下たちの間で、提案を握りつぶしたC部長に対する失望感が広がっていった。

 
〔五段階思考法で、デキる理由から考えて再チャレンジしたC部長の思考〕

❶デキたときの姿を思い浮かべてみる
・新サービスが市場から受け入れられ、売上も伸び、市場シェアが回復する成功イメージを持ってみよう。

❷デキたときの姿に行き着く筋書を思い浮かべてみる
・プロジェクトチームを立ち上げ、事業計画を立てて役員会の承認を得たうえで、市場へのプロモーションを展開し、既存顧客に対する働きかけを行っていけばよいのではないだろうか。

❸筋書を実現させるためのプロセスを考えてみる
・プロジェクトチームは、提案者を含めて自部門の人間で結成しよう。
・マーケティング活動に関しては、他部門にも協力してもらおう。
・販売ノウハウに関しては、テストマーケティングの実施で習得でき、専門家への相談でもカバーできる。

❹考え付いたプロセスの実現性を検証してみる
・業務効率を高めることで、自部門の人間が兼業という形でプロジェクトに参加することは可能だ。
・他部門からの協力に関しては、自部門の顧客に対して他部門の商材やサービスを売り込むことと引き換えに得ることが可能だ。
・今回の内容はスピードが要求され予算も限られているので、公的機関が行っている専門相談を活用することで販売ノウハウをカバーするやり方が最適だ。

❺実現性のあるプロセスをプラン化してみる
・役員会の承認を得てプロジェクトを展開するまでの行動計画を立ててみよう。

〔デキる理由から考えて再チャレンジしたその結果〕

・取引先の数が増えた。
・部門内での結束力が高まった。
・C部長自身、部門を統率することへの自信が高まった。