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【2016年4月号】 女性が活躍できる企業になるための条件

ニュース

4月より「女性活躍推進法」が施行される。この法律により、国・地方公共団体および従業員300人以上の企業は、女性を活用するための行動計画書や情報の公表等を行わなければならない。女性の活用は、日本経済の復興だけでなく、少子・高齢化による社会問題等の解決策にもつながるという。その背景や現状を知ることはこれからの企業経営にも大切だと話す、ワーク・ライフバランスコンサルタントの二瓶美紀子氏に伺った。

 

日本の潜在能力は「女性」!女性が働くと子どもが増える!?

少子・高齢化による労働力不足への対応は、日本社会にとっても企業にとっても緊急課題となっています。このため、女性の活躍に期待が高まり、成立したのが、女性活躍推進法です。
少子化による人口減少で労働力不足を解決するためには、出生率を向上させることが真っ先に思い浮かぶと思います。古くから日本社会には、女性が社会進出をしたから出生率が低下したという誤解があり、政府は配偶者控除など、性的役割分業を助長する政策を進めてきました。
ところが、実際はその逆だったのです。グラフ①「女性(25~34歳)の労働力率と出生率の国際比較」を見ても、女性の労働力率が上がるほど出生率も上がっています。フランスや北欧で出生率が近年上がっているのは、女性の就業率が高いからだということはよく知られています。
今の日本では、30代男性一人の収入では子ども1.3人分の養育費しか賄えないというデータがあり、女性の就業率が低いと、経済的理由で2人目の出産をひかえてしまう現状があります。夫一人が働いて家族を養う「片働きモデル」は経済的に成り立たなくなってきています。
このため、日本政府は女性活用と少子化対策を両輪で進めようとしており、今こそ日本の潜在能力である女性を活かさなければ、日本はこのままどんどん疲弊していってしまいかねません。

 

女性が活躍すれば、日本はGDP16%もアップする!
さらに興味深い統計資料があります。グラフ②をご覧ください。HDI(Human Development Index)というのは人間開発指数※1 を表し、日本は他の先進国と同じレベルにあることがわかります。そしてHDIが高ければ、女性の社会進出の度合いを示すGEM(Gender Empowerment Measure:ジェンダー・エンパワーメント指数)も通常は相関的に高いはずが、日本だけがとても低いのです。
これは日本の女性は高い教育を受けているのに社会に参画していない、活かされていないことを表しています。仕事か育児かの二者択一を迫られてきたのですが、別の視点から見ると、高い能力を持ったグラフ②の赤丸の中の女性こそが、今日本が活用すべき潜在労働力なのです。
ヒラリー・クリントン氏は、日本は女性の労働力率を男性と同程度に引き上げればGDPが16%も上がるという試算を紹介しており、これが、安倍政権が「女性活躍推進」を進める後押しになったともいわれています。
企業にしても、労働力人口が縮小していく中で、これまでのように男性を中心に採用していては優秀な人材が確保できなくなっています。女性の採用を積極的に実施すれば、より優秀な人材が確保できる確率は倍になるのです。
※1 保健、教育、所得という人間開発の3つの側面に関して、その国における平均達成度を測るための指標

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子どもが増えるヨーロッパに見る働き方

経済を「人口」という側面から見ると、いろいろわかってくることがあります。
社会を支える働き手である生産年齢の人口が多く、高齢者が少ない状態を「人口ボーナス期」と言いますが、この人口ボーナス期には社会保障費の負担が少ないため経済成長するのがあたりまえです。ただし、人口ボーナス期は1つの国に1度しか訪れません。社会が豊かになると親は子供の教育に投資するようになり、人件費が上昇し、より人件費の安い他国に仕事が流れていくからです。日本は90年代半ばで終わっており、中国はまもなく終了し、インドは2040年まで続くと試算されています。
逆に働く人よりも支えられる人が多くなる状況は「人口オーナス期」と言い、社会保障費の負担が急増し、経済成長は停滞します。日本は世界でもっとも早くオーナス期に突入してしまいました。それは少子化対策の失敗が要因です。長時間労働を是正できず、待機児童対策に真剣に取り組まなかったからです。
ヨーロッパでは、フランスの週35時間労働や勤務間インターバル規制※2 など、労働時間を規制することで、共働きでも夫婦で子育てできる時間ができます。しかも女性が働くことで経済的なゆとりが生まれて家計は安定。ヨーロッパではこうしたことが功を奏して出生率が上がっているのです。
※2 前日の終業から翌日の始業まで一定の休息時間を設ける規制で、例えば、EUでは原則11時間のインターバル規制がある。

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今の学生は、仕事と生活が両立できる企業を望んでいる

女性活躍を推進することは、今、企業にとっても大きなメリットがあります。
日本では、2008年のリーマンショックが団塊世代の一斉退職と重なり、多くの企業が新卒の採用を抑えることで社員を減らしてきました。ところが、業績が回復し優秀な若い人材を確保したいと計画しても、今や新卒は売り手市場。中小企業では募集しても応募がない場合もあります。しかも学生は、終身雇用が常識だった頃の就職観とは違い、1つの会社で一生働くとは考えておらず、仕事だけでなく生活も充実させられる企業に人気が集中しています。今、学生が企業を選ぶ視点で6年連続1位になっているのは「仕事と生活を両立できる企業かどうか」なのです。
「女性活躍推進法」に先駆けること10年前に「次世代育成支援対策推進法」が制定されています。この法律により、仕事と子育ての両立を図る職場環境があると認められた企業は厚生労働省から「くるみんマーク」がもらえます。就活する学生たちは、今、このくるみんマークのある企業にかなり注視しており、今後、優秀な人材を確保したければ、「女性活躍推進法」で認定マークを持っていることが、必須事項になることは間違いないでしょう。
つまり、女性が働きやすく、女性が活躍できる「ワーク・ライフ・バランス」が整っていない企業は、男性も含め優秀な人材を確保できない状況になっていることを企業のトップは知っておかなければなりません。

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女性が活躍できない職場とは?

①長時間労働
長時間残業が恒常化すると何が起きるかというと、例えば重要な会議が夜8時から開かれたりします。すると子育てをする女性社員は参加できずに、重要な意思決定に参画できなくなります。
他にも、出張、転勤、残業が出世の条件となって、それを断る女性は評価されないということが女性活躍の障害になっているケースがあります。長時間残業を前提とする働き方そのものが是正されなければ、女性の活用は難しいのです。
「マネージメントの意識」とは、どのように人を評価するかということです。これまでは、短い時間内に効率よく生産性を上げている人よりも、だらだらと働いて遅くまで残業して成果を出している人を評価してしまうことがよくあったと思われます。
成果主義にしても、期間あたりの仕事を質と量の掛け合わせで評価していると、残業をたくさんしている人が評価されて、時短の女性は評価されませんでした。一定時間内にどれだけ生産性の高い仕事をしたかが評価されれば、時短勤務の女性もモチベーションを高くして働き続けることができます。
マネージメントの意識を変えるには、まずは評価制度の見直しです。本来の成果主義である「時間当たりの生産性」を評価すること。遅くまで働いたことを「がんばったね」と評価するのではなく、仕事そのもの、時間当たりの成果を評価すれば、女性も働きやすくなります。

②ロールモデルの不在
さらに、女性が活躍できない職場の特徴を挙げると、それはロールモデル(模範・手本)の不在です。例えば入社10年の女性先輩社員というと、出産後も残ってはいるもののあまり評価されずに割り切って働いている女性と、結婚も子どもも諦めてなんとか頑張っている管理職の女性、という女性像をイメージしてしまいがちです。
きちんと家庭を持ちながら仕事でも活躍しているロールモデルがいれば、仕事の壁にぶつかったときでも、成長した後の将来像を心に描いて頑張れるもの。
政府は2020年までに女性管理職を30%にする目標がありますが、企業もこのロールモデルが育つように、女性社員の育成を意識して、若いうちから長期的キャリアを考えられるような支援することが重要です。

 

 

女性が活躍できるよう、企業として取り組みたいこと

消費者の嗜好はますます多様化していて、消費行動の中心には女性がいます。果たして商品やサービスを提供する側が男性ばかりで本当に大丈夫なのでしょうか。
ここで重要なのは、女性が社内にいるだけではダメで、意思決定層に複数の女性がいることです。男性が居並ぶ会議に一人だけ女性を加えても、本当の意味での経営参画には至りません。
女性の活躍がめざましい企業では、管理職に昇格する女性が複数になった時点で一気に彼女たちを幹部に登用し、経営会議に参加してもらうなどの工夫をしています。女性の活躍は経営戦略の一環だと考える企業は、今、とても伸びています。
これをダイバーシティ&インクルージョン(Diversity&Inclusion)と言います。ダイバーシティだけではただ多様な人たちがいるだけです。その多様な人たちそれぞれが自分の持ち味を発揮し、きちんと組織に貢献し成果を出せる戦略がダイバーシティ&インクルージョンです。
最後に、経営戦略として女性活躍を推進していく企業のトップとして、今、取り組まなければならないことをまとめます。
■長時間労働の是正/短時間で生産性を上げる仕組みづくり、時間当たりの生産性を正当に評価する仕組みづくりをすること。
■女子学生に選ばれるブランディング/くるみんマーク、女性活躍推進法の認定を受けること。
■社内ロールモデルの構築/複数の女性を幹部に登用してみること。若い女性が「あの人を目指して頑張ってみよう」と思える先輩女性社員を育てること。
女性活躍推進法の施行を一つのきっかけとして、本当に女性が活躍できる組織作りにぜひ取り組んでいただきたいです。