エスカイヤクラブ
会員様専用ページ

ビジネスアイ

Member deals

【2016年10月号】一流の秘書だからわかる一流のリーダーの条件

ニュース

 10年間にわたり主に外資系企業でトップエグゼクティブたちを補佐するエグゼクティブ・アシスタント(社長・重役秘書)を勤めた能町光香氏。
 日本の秘書のイメージとは違い、ビジネス・パートナーとして扱われてきた能町氏は、「一流」と呼ばれるリーダーたちには共通の考え方や行動、人間性があるという。
 日本人では数少ない上級米国秘書検定の合格者でもある能町氏にうかがった。

 
 
厳しいミッションを成し遂げるエグゼクティブたちを見てきた
 
 
 「秘書」というとどんなイメージをお持ちでしょうか。スケジュール管理、来客の接遇、書類整理、そしてお茶汲み、と思われているかもしれませんが、それはほんの一面。実際は上司がいかに業績を上げるかをサポートする強力なアシスタントといえます。

 私の上司はどなたも日本が初めてという方ばかりでした。しかもわずか3年で成果を上げて帰国しなければなりません。そんな厳しいミッションを背負うということは、帰国後は本社でトップマネジメントに携わるような優秀なエグゼクティブである証拠です。国際的なビジネスの最前線で活躍してきた彼らの交渉術やプレゼンテーション術、チームのオペレーション術、プランニング力、そして人間性などを間近で見ることができたのはとても幸運でした。どれをとっても「一流」と呼ぶにふさわしい方ばかりだったからです。

 また、私はエグゼクティブ・アシスタントとして上司のメールを見ることができるアクセス権を与えられていました。でないと、上司の不在時に取引先から問い合わせがあっても、咄嗟の判断なんてできません。時には上司に経営上の意見も求められます。経営企画室という部署はありますが、違うファンクション(機能)として、彼らの右腕となって動くことができる環境がありました。
 
 
「鷹の目より鋭い」と言われた秘書の目
 
 
 言語の違う国で、わずか3年で成果を上げなければならないことは厳しい条件ですが、できなければ、自分の未来はないことを彼らは知っています。いわば命がけで日本にやって来ているので、そばにいる秘書の私をビジネス・パートナーとして見なさなければやっていけません。私自身もそんな彼らと共に仕事をすることで成長できたと思います。

 ある時、「秘書の目は、鷹の目よりも鋭いね」と言われたことがあります。一流のビジネスマンの考え方や哲学、行動に直に触れていますから、物事を見る目も養われていくはずです。そういう秘書の目に、上司は自分のことがどのように映っているのかは、私が寄稿しているWebコラム※の反響でも感じることですが、とても気になるところでしょう。
 そこで、今回は、私が「一流」と感じる上司、リーダーたちにはどんな共通項があるのかをお伝えしたいと思います。

※ダイヤモンド社が提供するビジネス情報サイト[diamond on line] の
「秘書だけが知っている仕事ができる人、できない人 能町光香」は何度もアクセスランキング1位となっている人気コラム
201610photo01
一流のリーダーの条件 その1
飛行機やホテルの予約を自分でしないこと
 
 
 「一流のリーダー」とは、行動や思考が洗練されていて、部下が成長できるように導き、確実に結果を出す人。いわゆる「仕事ができる人」は、新しく赴任して来てもすぐにわかるもの。視野が広いというか、森を見ているような感じです。森の上から全体を見渡して、自分はどのように行動すればいいのかを常に考えています。

 ですから、あまり細かい事ばかりを言っている人は一流とはいえません。細かい人というのは、例えば飛行機のチケットやホテルの予約を自分でしてしまうような人。数万人の社員の頂点に立つような人の中にもいるのです。部下は「なんて優しいリーダーなのだろう」と思うでしょうか? 「もっと部下を信頼してほしい」「細かい仕事まで抱え込まずに、部下に任せてほしい」と常識的な感覚を持っている部下ならそう思うはず。一流のリーダーは、そんなことをする時間があるのなら、大事な意志決定の時間にあてたいと思うものです。

 ちなみに自分で予約するのは「マイレージを貯めたいから」という理由があるようですが、日本人はそのことを秘書に言うのは恥ずかしいようですね。外国人はそういう点はなんとも思いません。「ありがとう。君がマイレージを貯めていてくれたおかげで家族旅行ができ、とても楽しかったよ」と、上司をはじめ、奥様やお子さんからもお礼のお手紙とお土産をいただいたこともありました。細かい事は気にしない、部下にどんどん任せる度量こそ、一流のリーダーの条件です。
      
一流のリーダーの条件 その2
誰よりも早く出勤し退社し、背中を見せること
 
 
 そもそも仕事のできる人は、遅刻はしません。30秒でも遅刻をしたらビジネスを失うと思っています。待ち合わせなら早目に行って近くで待機することが多いです。
 毎日の出勤でも誰よりも最初に出勤。だいたい9時から会議があるので、7時半か8時には出勤して準備しています。そして一番早く帰ります。すると部下たちはリーダーの背中を見送ることになります。エグゼクティブ・プログラムなどの研修で「リーダーは行動で示すもの」と教わっているのでしょう。言葉より行動が雄弁に語るのは日本でもよく聞きます。部下は行動するリーダーの背中を見て、その背中に憧れるもの。ですから、定時の5時になれば、いの一番に颯爽と帰っていきます。

 部下も夕方5時を過ぎたら決済をもらう上司はいませんから、5時までに必至で仕事を済ませるようになり、全員が朝型になりました。つまり残業はなし。
 アフター5で飲みに行くというのも、あまりありません。あったとしても、翌日の仕事に差し支えがないように21時半頃には切り上げます。気持ち良く酌み交わしますが、それでも、泥酔したような姿をこれまでの上司で一人も見たことはありません。
 
      
一流のリーダーの条件 その3
誰もが対等、肩書きに左右されないこと
 
 
 エグゼクティブの人たちはどんな人に対しても対等に接します。トイレ掃除している方にも、きちんと挨拶をします。日本人でもそういう素敵な方はいますよね。共通しています。

 つまり、肩書きに左右されません。態度は常に一貫しており、人の肩書きや立場によって態度を変えることはないのです。

 しかも、自分の上司にあたる上層部だけを見て仕事をするということはありません。なにしろ、短期間で業績を上げるには一人では絶対に無理です。自分自身に能力があることは分かっていても、周りのサポートがないと達成できないということを彼らは十分知っているのです。

 ですから、チームや部署の一員として仕事をするパートや派遣社員の存在も決してないがしろにはしません。とはいえ話をする機会はなかなかとれない。そこである上司は、
クリスマスカードを用意するよう秘書の私に伝え、一人ひとりに今年貢献してくれた感謝の言葉を書いて渡しました。もちろん、私が翻訳して書きます。「あなたが居てくれたおかげで、チームが調和し、目標を達成することができました。ありがとう!」と。自分のことが書かれたカードですから、皆さんとても喜ばれます。

 大きなプロジェクトが成功した時は、ケータリングサービスをつかい、社内でパーティーを開くこともあります。その時は自分はホスト役になり、普段時間がなくあまり話せない部下たちへ話をしに行きます。
部下と対等になれる機会を自ら作るのです。皆さんのおかげで自分が居るということを一流のリーダーたちはきちんと認識しているからできる行動といえます。
201610photo02
一流のリーダーの条件 その4
部下を信頼して仕事はどんどん任せること
 
 
 リーダーの一番の役割は業績を上げることですが、それには部下の適性や強みを見つけることが大切になってきます。一人ひとりの社員の強みを見つけてあげるのも、リーダーの大事な仕事のひとつです。

 英語でstretch goal(ストレッチ・ゴール)という言葉があります。達成できるレベルより少し高めの目標、あともう少し無理してでも手を伸ばせば、さらに大きな成果に届くゴールのことです。そのstretch goalを見つけ出して提示することがリーダーの役目です。「どうすれば部下が成長できるのか」を考える際、大切なのは、部下を「コントロールする」のではなく「マネジメントする」こと。部下をコントロールするリーダーは、すべてが自分の思うどおりに進まないと気が済まず、小さなことばかり気にします。そのため、部下を信頼できずに自分で仕事を抱え込んでしまい、どんどん忙しくなっていきます。
その結果、自分の忙しさを部下にも強要するようになり、コミュニケーションも減り、不信感が募っていくという悪循環に陥るのです。

 部下を信頼してどんどん成長の機会を与えること。これがマネジメントの基本です。
 
 
一流のリーダーの条件 その5
リフレッシュするために休暇は必ず取ること
 
 
 日本の会社では休暇を取るのを躊躇してしまい、有給休暇もほとんど使ったことがない、という話をいまだによく聞きます。ある程度の期間、バケーションを取ることはリーダーでなくとも全従業員に必要なことです。

 以前の私の職場では3週間まとめて休暇を取るのが一般的でした。休み明けの上司は、休暇で新たな着想を得たのか、はつらつとした顔で出社してきます。開口一番、あれを集めて欲しい、これをこうして欲しい、すぐにみんなと話したい、とパワー全開。対応する私たちが大変です(笑)。ですから、部下が「休みます」と言ってきたら「どうぞ、どうぞ」という感じです。リフレッシュすることがいかに大事なのか、リーダー本人が一番分かっていますからね。

 一度リーダーに尋ねたことがあるのですが、3週間の内、仕事のことは休暇の終わる最後の2日間の間に考えるのだそうです。それまでは頭の中を空っぽにして、家族との時間を思う存分楽しみます。体力、気力、思考力をすべてリフレッシュさせるためには3週間という時間が必要なのでしょう。そんなリーダーたちを見てきたので、休暇って本当に大切だと感じました。より高いレベルで仕事をするためにも、休暇はしっかりと取ることです。
 
      
一流のリーダーの条件 その6
オフィスは考える場ではなく、指示をする場であること
 
 
 彼らは、重要な案件についてオフィスでは考えません。移動中や家に居る時に考えています。というのは、出社すると実践部隊が待っており、すぐに指示を出さなければならないからです。

 オフィスでの彼らを見ていると、考えてきた頭の中にあるプランを、一気に部下に伝え、反応を見ます。そして、実行にうつるのです。部屋に閉じこもっていたり、「○○くんを呼んで」と言って部屋で待ったりするようなことはあまりありません。実践部隊がいる場へ自ら出向いて「○○さん、ちょっと」と声をかけ部屋に呼び、そこで詳しく指示をすることも多くあります。フットワークが軽いんですね。

 会議は、原則として30分以内に済ませます。外国人上司は、「なんて会議が多いんだ」と日本の会議事情に驚きます。連絡事項はメールで十分。会議は「報告の場」でなく、「意思決定の場」なのです。
 
      
一流のリーダーの条件 その7
部下の都合と予定を優先すること
 
 
 時間の使い方ですが、彼らは、決して自分の時間を優先しません。意外なことに思われるかもしれませんね。実は、部下の都合や予定を優先しながら日々仕事をしています。

 なぜなら、チームのメンバーのサポートがなければ、自分ひとりでは目標は達成できないと知っているからです。部下の都合や予定を優先させれば、部下は気持ちよく仕事を引き受けてくれて協力してくれます。部下のモチベーションも高まります。すると仕事がスムーズに運び、仕事の生産性が高まることを彼らは知っているのです。

 つまり、一流のリーダーは、「いかに自分のために部下が時間を使ってくれるか」をよく考えているのです。その時間が多ければ多いほど、その人数が多ければ多いほど、達成する確率は高くなります。そのためには、部下に気持ちよく働いてもらう。部下の予定を優先させる姿勢を持つことが大切です。

 究極の言い方をすれば、一流のリーダーは仕事をしません。部下が仕事をしてくれるからです。リーダーは「部下を喜ばすにはどうしたらいい?」 「部下に成長してもらうにはどうすればいい?」と考えているので、部下もリーダーのために頑張るわけです。このように一流のリーダーと部下には常にいい関係があります。ぜひ参考にしてみてください。